コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、望月もちぎさんがX(旧Twitter)上に投稿した漫画「あたいと焦げない女たち」だ。8月22日時点で9000以上のいいねがつく反響が集まり、話題となっている。今回は作者の もちぎさんに制作の背景を伺った。
作者は、ゲイとして生まれた もちぎさん。SNSでも人気の作家さんで、今までさまざまなコミックエッセイを発売されている。
今作はそんなもちぎさんが描いた新刊で、ゲイの周りにいる女性達にスポットが当てられている作品だ。
男友達にゲイであることをカミングアウトされた女性の話、元婚約者がゲイだった女性の話、ゲイの息子を持つ女性の話など、もちぎさんが関わった さまざまな視点の女性達のストーリーが描かれている。
さらには、もちぎさんの母親や姉とのエピソードも収録されている。もちぎさんと母親だけの話ではなく、母親の生い立ちなど深い部分まで描かれており、もちぎさんをより知ることができる。
それぞれのドラマのような話を読んで、さまざまなことを感じる人も多いだろう。
実際に漫画を読んだ人達からは「もちぎさんは本当にすごい人だ」「壮絶」「共感する部分がかなりあった」「千回リツイートしたい」「色々と考えさせられる…」「なんか泣いてしまった」「涙出た」「これは名作である」と、いった声があがっている。
今回は、作者・望月もちぎさんに『あたいと焦げない女たち』の制作について話を伺った。
――『あたいと焦げない女たち』を創作したきっかけや理由
があればお教えください。
昨今LGBT当事者にスポットライトが当たる話は多いですが、その周縁の人で「非LGBT当事者の人間」に注目されることはまだまだ少ないな〜と感じていました。描かれても「LGBTと違って普通の人」みたいなシンプルすぎて逆に雑みたいなものもありますしね。
ぜんぜんみんないわゆる普通じゃなかったり、あるいはところどころ普通だったりするもんで、「何もかも普通」なんてあり得ないんですけどね。
また、LGBT当事者の周りの人間は「理解者の味方」か「理解のない敵」で描かれることが多く、理解と不理解の間の経緯もあまり深掘りして描かれてないな、と思っていたので、現実にあるさまざまな葛藤やバランスをいつかこういう形で書いて発表したい、と考えていました。特にゲイの周りの女性は「サポート役や献身役」みたいな登場が多いけれど、現実はそうでもないよな、という発信は必要だと思ってました。
――『あたいと焦げない女たち』を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?
先ほどの繰り返しになりますが、現実のゲイと女性との関係は人それぞれで、複雑であったり単純であったりするところです。肩透かしな表現になってしまいますが、要するに普通の人間関係です。
相手を知っていくと、なにかしらの「理解と支援する必要」は発生するけれど、それは互いに与え合うものであって、女性からゲイに対してだけある「女性的な献身」みたいなものだったり、あるいはゲイが女性に対して「色恋が発生しない純粋な男女の友情」みたいなものだったり、そういう都合のいい「便利アイテム的な存在」じゃないってことを描いたつもりです。
――今作『あたいと焦げない女たち』に登場する人物の中で望月さんが特に印象深い人やセリフなどがありましたらお教えください。
全部です、と言うと「こいつ自分の作品に自信ありすぎだろ」と思われるだろうけれど、実際に自信がありすぎるので全部ですと言いたいです。あんまり作者が注目ポイント語るの好きじゃないというかズルいと思っちゃうので、みんなそれぞれ好きに印象に残るところを作ってください。どうぞ。
――普段漫画を描く際に意識している点や、こだわっている点はありますか?
絵が下手なのであまりこだわらずに書いてます。登場人物は実際の人間を元にしたデザインにしたり、まったく違う感じにしたりしてますが、これは本人に相談して決めているわけじゃなく、あたいがテキトーに「この人はあたいにはこんなふうに見えている」と決めて書いています。
――もちぎさんの今後の展望や目標をお教えください。
ゲイやLGBTの話はあたい自身が当事者であり、命題みたいなもんなのでこれからも考え続けますが、それ以外のこともたくさん書きたいなと思ってます。あたいはゲイではありますが、「ゲイだけ」ではないので。
――最後に もちぎさんの作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
本は買ってもいいし、借りてもいいし、古本で手に入れてもいいし、気力がなくて読めなくてもいいよ。読んだら売ってもいいよ。本は日常や生活の一部だから、読む以外の部分でもそれが読者の生活の一助になってれば、それでいいと思ってます。
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