山下幸輝が主演する映画「マンガ家、堀マモル」が8月30日(金)に全国公開。その劇場公開を記念したイベント「映画『マンガ家、堀マモル』劇場公開記念!生配信スペシャル」(8月17日[土]までLeminoにてアーカイブ配信中)が都内で行われ、主演の山下をはじめ、桃果、原作者のsetaらが出席した。WEBザテレビジョンでは、イベントを終えた山下、桃果、setaの3人にインタビューを行い、役作りについてや作品の魅力などを語ってもらった。
同作は、新人賞を受賞して以来、スランプに陥った漫画家・堀マモルが、自分自身や過去と向き合うことで大切なことに気付いていく再生の物語。堀マモルを山下、マモルの幼なじみである佐倉春を桃果が演じている。
――「映画『マンガ家、堀マモル』劇場公開記念!生配信スペシャル」の配信を終え、今の率直な感想をお願いします。
seta:このような経験は初めてだったので、背筋を伸ばして座ってるのが一番緊張しました(笑)。普段1人で作業するので、こうしてみんなで集まる場所に自分も参加させてもらうことってなかなかないんですよ。作品に携わった人たちと再会して、同窓会みたいな気持ちで楽しく挑めました。
山下:映画「マンガ家、堀マモル」がいよいよ公開するんだな、と。撮影は終えましたけど、これからマモルや映画の魅力を伝えていく場面が増えるので、わくわくしながら今日は参加しましたが、すごく楽しかったですね。皆さんには映画を早く見てほしいです。
桃果:話すのが苦手なので緊張するかなと思っていたのですが、本当に温かいチームで安心して参加できたので、思ったことも言えたし良かったです。
――setaさんは「(途中から)山下さんが堀マモルにしか見えなくなるんです」とLeminoで配信中の特別映像でも話されていましたが、特にどういった部分でそう思われましたか?
seta:最初はコミカルになるかなと勝手に想像していたんですけど、山下さんの演じる堀マモルを見ていると、こっちのほうが見た人たちに愛されるなって。やっぱり不器用なところもちゃんと表現してくれているのでうそがない感じがして、そうやって肉付けされていくうちに愛されるキャラになったからだと思います。あと、山下さんと話していて“不思議な人だな”って。たぶん言われたことありますよね?
山下:言われます(笑)。
seta:間の取り方がすごく独特なんです。あと、目をすごく見て話すんですよ。私は学校で目立たない方でしたから、ガッて見られると目をそらしちゃうんですけど、強弱が不思議なところとかもすごく堀マモルっぽいなと思っていました。
山下:ありがとうございます。
――配信でも山下さんは堀マモルに似ていると言われていましたが、ご自身は堀マモルというキャラクターをどのように意識しながら演じられましたか?
山下:漫画家なので姿勢はちょっと意識したり…マモルはずっと姿勢が悪いんですよ。最初は椅子に座って机で描いているイメージだったんですけど、セットが低めの机で地べたに座って描くスタイルだったので、なんとなく背中を丸めていって。春と話している時もカバンを持つ姿勢が丸まっていたりとか。あと描く所作も現場で教えていただきながら撮影していました。
――役柄を通して、絵を描くことに関心は高まりましたか?
山下:描くのは好きなんですけど…結構悲惨な絵ですね。
seta:でも、描きたいって対談のときに言ってましたね。
山下:そうですね、対談のときにこの映画を経て描くのが楽しいなと思って。やってみたいので、いつか個展でも開いてみようかな(笑)。
――桃果さんは佐倉春を演じる上でどのようなことを意識されましたか?
桃果:春自身もいろんなことを抱えているんですけど、前に進めないマモルを後ろから押していくっていう役割というか。春もいろいろ考えることはあるしマモルだからこそ出せる素もあるんですけど、でも“マモルを支えていきたい”っていう母親のような感覚で見守っていて。自然と現場でそういうふうに演じていましたね。
――setaさんはお二人の演技をご覧になっていかがでしたか?
seta:爽やかだなって思いました。さっきも桃果さんが言ってましたけど、春は母親みたいでマモルはそれに甘えるところもありつつ…普通だったらこんな美しい2人が映像で映っていたら恋愛的な感じが出るのかなって思ったら、理想の男女の友情じゃないけれど、友情も超えているような、いやらしい気持ちに一切ならない爽やかさに驚きました。私も原作を描いていて、恋愛っぽく見られたら嫌だなと意識したところが結構あったんですけど、2人とも爽やかなままでいやらしさがなくて驚きました。
山下:マモルがそういう感じじゃないからだと思います。彼は漫画が大好きで、春という人間が大好きなんですよ、女性じゃなくて人として。
seta:仲介人みたいな感じなのかなって描きながら思っていたんですけど、マモルは小さな世界で絵が大好きって気持ちで描いていて、でも外の世界とつなぐパイプ役が春の役割なのかなと思っていたんです。その感じが映画にはすごく出ていました。
桃果:私も最初に監督と2人の気持ちについて好きなのかどうか話したりしていて、マモルはないけど春は気持ちがあったのかなとかいろいろ考えていたんです。でも、考え過ぎずにやってみようと思ったら母親のような立ち位置で見守る気持ちになりました。
――描けなくなったマンガ家の前に3人の幽霊が現れるという物語ですが、皆さんは「スランプ」に陥ったときや追い込まれたとき、どのように脱出、気分転換をしますか?
seta:私は絵と音楽と文章をそれぞれ作っているので、例えば音楽が行き詰まったら絵や文章を書くみたいに、できるものからローテーションして回していますね。他のことをしていれば、行き詰まっていてもそのうち「こうしようかな」って頭に浮かんでくるので、全然曲が作れないときとかはそうしてます。
山下:僕は友達に話します。マモルと少し似ていて、スランプに陥ったときに自分で消化しようとしても結局できないことが分かっているので、「スランプなんだけど、どうしたらいい?」ってストレートに聞きますね。ただ、意外と悩みとは関係のない人に聞きます。例えば芝居でのスランプだったら、芝居をしてない人に聞くとか。そのほうが気持ちのケアをしてくれるのでいいんですよね。芝居をしている人に話すと、具体的な話で返ってきて逆に追い込まれてしまうので…。それよりも「いや、大丈夫でしょ。いけるよ!」くらいのほうが僕は気持ちが楽になって立て直せるんですよ。だから芝居だったら芝居をやってない人、ダンスだったらダンサーじゃない人に話しますね。
桃果:山下さんの話を聞いていてすごく分かるなって思いました。だから友達とかも業界とは関係ない人と会うことが多いんですけど…。私は物事には波があると思っているから、とことん下に落ちたら悟りを開いたみたいにどうでもよくなってしまう瞬間があって、意外とそれですっきりしていたりするんですよね。だからどうでもよくなるまで悩んで悩み尽くして、どうでもよくなったら切り替える。その切り替える期間も友達とあったり、どこかへドライブしたり、実家で愛犬に会ったりして、気付いたらもう一回やってみようって思えるようになったら、また挑戦してみる…の繰り返しだなって思いました。
――最後に代表して山下さん、読者の方に向けてメッセージをお願いします。
山下:共感できる部分がたくさんあっていろんな世代の方に伝わる作品だなと思いますし、すごく温かい物語なので、その温かさが皆さんの心にも伝わってくれたらうれしいですね。
◆取材・文・撮影=永田正雄
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