横浜流星、誰もが認めるストイックな役作りと芝居への情熱「MIMI」で体現した“俳優の内面”に感服

2024/08/19 13:00 配信

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横浜流星※2023年ザテレビジョン撮影

「MIRRORLIAR FILMS」とは


そんな横浜が出演する「MIRRORLIAR FILMS」プロジェクトは「だれでも映画を撮れる時代の幕が開く」を合言葉に、年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦するもの。2021~22年公開のSeason1~4では、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなどが監督した36本の短編映画が発表され、Season5は5月31日に6本立てで劇場公開され、7月5日からMLF秋田 地域特別制作作品「参画屋の仔羊たち」も加えた全7話がLeminoで順次配信された。

その中で横浜が主演を務める「MIMI」では、横浜演じる青年が臨床心理士の先生(阿部進之介)に、子どもの頃に飼っていた猫・ミミとの思い出を楽しそうに語るのだが、実はミミは青年が作り出した架空の存在であるという。つかみどころのない青年に、先生は立花リョウ(森永悠希)について尋ねると「自分は立花リョウの全てを知っている」と答える。青年が自身と立花リョウの関係について語りだすと、ある真実が浮かび上がってくる――という物語。元理学療法士という榊原有佑監督ならではの感覚と感性が存分に生かされた作品だ。

そして最先端テクノロジーからアートを生み出すクリエイティブファーム「THINK AND SENSE(T&S内)」が、撮影・編集にAI画像生成システム“NeRF(Neural Radiance Fields)”を使用した国内初の映画作品だという。“NeRF”を活用することにより、通常の撮影手法とは異なったカメラワークでの映像や、それに付随したミステリアスな雰囲気を演出。「MIRRORLIAR FILMS」プロデューサーの一人である山田孝之が発案した「俳優は鏡をも騙す」という意味のプロジェクト名「MIRRORLIAR」を探求し、「鏡の奥を探る」をテーマとした物語となっている。

横浜流星※2024年ザテレビジョン撮影

横浜の“声の魅力”にも注目


映画をどう捉えるかは人によっていろんな解釈があっていいと思うので、この作品を見たときにどんな印象を受けるかはそれぞれの感性に任せるが、個人的には序盤~途中まで見たときと最後まで見終えたときとではガラッと違う印象、いい意味でゾクゾクするものを感じて何度も見返してしまった。フィクションではあるし、横浜ら俳優たちの内面や“役作りを可視化”するとこういう感覚になるのかは知る由もないが、ちょっとだけそれが垣間見えたような気がして、とても興味深く、感服した。

さらに、“国宝級イケメン”とも称されるルックスや先述した通りアクションに注目が集まりがちだが、個人的に横浜の魅力の一つは「声」だとあらためて思った。ただ単純に“イケボ”ということではなく、甘さと渋さ、時々合間を縫って登場するはかなさのマリアージュが絶妙なのだ。歌手としても「今日もいい天気 feat. Rover (ベリーグッドマン)/未完成」でCDデビューしたり、GRe4N BOYZ(当時はGReeeeN名義)の楽曲「キセキ」が誕生するまでの物語を描いた映画「キセキ ーあの日のソビトー」(2017年)の共演者と“グリーンボーイズ”として劇中や音楽番組で歌声を響かせていたりもするので、それはそうだろうと思われるかもしれない。ただ、それだけではなく、舞台あいさつなどで話す普段のトーンの声が実に魅力的。彼の声には不思議な吸引力があり、話し出すと知らず知らずのうちに吸い込まれるように前のめりで聞き入ってしまう。あの声を聞くとホッとするぐらいまでには魅了されている。「MIMI」ではそんな横浜の声の魅力をしっかりと堪能できるシーンもあるので、美しい顔だけでなく声にも耳を傾けてみてほしい。

プライベートでも親交があり、これまでも多くの作品を一緒に作ってきた藤井道人監督と再びタッグを組んだ主演映画「正体」が11月29日(金)に公開されることも発表されたばかりだが、これからも横浜のストイックな役作りを経て体現されたキャラクターを見るのが楽しみだ。

◆文=森井夏月