コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、日常に潜むゾッとする“実話怪談”を収録した『水ムーちゃんねる 隣の晩怖談』2巻の第11談『歪な旅館』をピックアップ。作者である漫画家の水村友哉さんが、2024年8月11日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、6000件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事では水村さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
物語の舞台は2002年の秋。晴木健介(仮名・31歳)は、クルマの免許を取りたてだった弟の直也(仮名・28歳)の練習がてらドライブで箱根に来ていた。
宿が決まっていなかった2人は、通りがかった宿へ。「…せっかくだからもうちょっといいホテルに泊まんない?」と言って乗り気ではない直也をよそに、「すいませーん」「素泊まりで1泊したいんですが」と、旅館の中に向かって大声を出す。
すると中から旅館の従業員がやってきて、宿泊手続きをして部屋の鍵が手渡される。そして、お風呂の場所の説明を受ける2人。また、従業員たちは17時に帰って、翌日の朝にまた来るという体制をとっているらしい。
そして案内されたのは、階段の途中にある部屋。トイレは部屋には付いておらず、階段を上ってから、右奥の階段を降りた場所にあった。ある程度宿についての説明が終わると、17時を回っていたので従業員は帰って行く。
部屋から外を眺めると、天気が悪いせいかすっかり暗くなっていた。早めにお風呂に入って、ご飯を食べに行くことにした2人。
部屋から出ると廊下は暗く、不気味な雰囲気が漂う。他の部屋も同様に薄暗く、ある部屋のドアを開けてみるとそこには図書室のような部屋があった。また、応接間にはピアノや剥製などが置いてあり、少しカビ臭い。こうして2人が宿の中を探検していると、目の前を親子が通り過ぎ――。
この物語を最後まで読んだ人たちからは、「怖い怖い怖い…」「ちょっと行きたいこの宿」「こういうお宿ってご飯めちゃくちゃ美味しいんだよな」「ガクブルガクブル…」など反響の声が寄せられている。
――『水ムーちゃんねる 隣の晩怖談』第11談『歪な旅館』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
子供の頃からずっと怪談が好きで、アシスタント時代もよく先輩たちに怖い話がないか訊いていました。その中でもこの体験談がリアルで怖く、今も頭に残ってたので描くことにしたんです。それに、歴史のある古い旅館って絵としてもかっこいいじゃないですか。怖いだけじゃなく不思議さがあるのも、特に自分が気に入っているところです。
――本作では、臨場感溢れる描写が非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
この体験談を話してくれた先輩に改めて取材をすると、旅館のディテールまで細かく教えてくれました。そのイメージをできるだけ再現し、どうやったら怖くなるかを考えながら表現しています。部屋の物が勝手に移動していたり、障子越しに咳き込む影の不思議さは特に感じてほしいポイントですね。古い旅館は新しい旅館にはない魅力があります。体験者の先輩も、「怖い思いもしたけど、今では弟とのいい思い出です」と言っていたように、読者の方にもその臨場感を楽しんでいただきたいですね。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
凸凹の屋根とトイレのシーンは怖い雰囲気が出せたので気に入っています。また、奇妙な事が起こっているのに最後はケロッとしている弟さんの場面も、怖いながらも不思議な流れで個人的に好きなところです。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか。
『隣の晩怖談』という(わかる人にはわかる)タイトルは、身近に起きた怖い体験談という意味が込められています。なので、僕が直接見たり聞いたりした“実話怪談”を意識しながら描いています。具体的には、X(エックス)でのDMのやり取りや、僕自身があちこち取材にいき、その中でも特に印象に残った、漫画に向いたお話を選びながら描いています。
――作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか。
連載が始まる前から“日常の中のホラー漫画”を描きたい!と思っていました。一般的なホラー漫画は線を多くしたり重い雰囲気を出したり、常に“怖さ”を演出していますが、この作品は怖いシーン以外のパートでは、できるだけ普通の漫画っぽく描きたかったんです。笑えるところや日常部分などを省いたりせずに。ここ数年はYouTubeを中心に怪談ブームですが、怖い話の流れやオチがかぶることもあり、飽きもでてきています。その飽きをこさせず実話怪談を楽しんでもらえるように、ただ怖いだけじゃなく面白い漫画になるよう意識しています。
――今後の展望や目標をお教えください。
こんな怖い体験をした! 誰も信じてくれない! そうだ、水村先生に描いてもらおう! と言われる作家になりたいですね(笑)。『隣の晩怖談』は怖い“寄り”の話ですが世の中の不思議を世に残したいとも思っているので、できればずっと続けたい作品です。あとは、妖怪同士のバトル漫画を描くことも夢なので、今後も頑張って楽しく描いていきたいですね。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
子供の頃から妖怪や怪談が好きでした。そして今、実話怪談漫画を描かせていただいており、感謝しかありません。なのでこれからも世の中の不思議や恐怖という“非現実”を、エンタメを通して皆さんに共有できたらなと思っています。皆さんも是非、不思議かつ怖い体験談をお待ちでしたらX(エックス)にてご連絡ください。全力で描きに行きます!最新コミックス3巻も8月29日に発売となりました。これからも応援のほど、よろしくお願いいたします。
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