74枚目のシングル「なんだかセンチメンタルな時の歌/最KIYOU」をリリースしたモーニング娘。’24。昨年の11月、生田衣梨奈が10代目リーダーに就いてから新体制の1枚目になる。生田リーダーになってからのグループの変化、卒業する石田亜佑美の胸中とグループのこれからについて、生田、石田、櫻井梨央がロングインタビューで語る。
――「なんだかセンチメンタルな時の歌」はつんく♂さんの作詞作曲です。楽曲を聴いたときの印象はどのようなものでしたか?
生田:私は45枚目のシングル(2001年「まじですかスカ!」)から参加していますが、そこから振り返っても初めての楽曲だなと思ったのと同時に、これを今のモーニング娘。で歌うとどんな雰囲気で、どんな歌割りになるんだろうと思いました。ソロパートの繋がりでできている曲は珍しくて、今までのモーニング娘。の曲はソロパート、ユニゾンがありつつ、全員で1曲を歌うというのが基本。1人1人の声を繋げて1曲を完成させるというのは新鮮だと思いました。
石田:私は最初イヤホンで聴いたんですが、音が左右別々に聴こえてくる音源になっていて、それがすごく面白く感じました。歌詞を読み解いてみると、聴くタイミングと聴く年齢によって解釈の仕方がすごく変わりそうだと思いました。昔の自分の方がよかったな、とか、年を重ねた方が難しいことってあるよね、とか。実は私、こういう感情を2年前ぐらいに抱えていたんです。今はそれを超えて、「そう思っている人もいるよね、かわいらしい!」みたいに思えるようになった自分がいて。でも16歳、最年少の弓桁朱琴ちゃんはこの曲の気持ちが分からないって言うんです。だから歌うのが難しかったみたいで、そういう年齢層に幅のあるモーニング娘。が歌っているのも、私は面白い曲だなと思います。
――2年前、何かあったのですか?
石田:その頃はネガティブで、人に嫉妬ばっかりして、「もっとこうしたいなあ…」「こうだったらいいのになあ…」みたいな、“たられば”をよく言っていた気がします。でも、人を羨んでいても仕方ないと思えるようになって、そこからずいぶん変わりました。
――櫻井さんは、この曲への印象は?
櫻井:やっぱりびっくりしたというのが一番で、メンバーとはこのタイミングでこういう曲が来るとは思わなかったね、という話もして、聴いたときはこの新しい曲のオリジナルメンバーになれることがすごく嬉しかったです。私、こういうスローテンポの曲が大好きなんですよ。最近はアップテンポな曲が続いていましたけど、こういうシックで格好いい曲もすごく好きです。モーニング娘。がまだまだ何年も続いていって、そのときそのメンバーたちがこれをどう歌うのか。オリジナルの私たちとはどう違うのか。だいぶ気が早いですけど、そういうことも考えながら聴き込んでいました。
――石田さんが「年齢によって」と話されましたが、櫻井さんは今18歳。どんな気持ちになりましたか?
櫻井:理解できるのかできないのか、それが分からないっていう、狭間にいる感じです。理解できるところもあれば、そんなこともないなっていう部分もあるからこそ、大人になる狭間のような気持ち。すごく貴重な今だけの感情だと思ってパフォーマンスしています。
――「このタイミングでこの曲が来ると思わなかった」とのことですが、メンバー間ではどんな曲が予想されていましたか?
櫻井:つんく♂さんはそのときのメンバーに合わせて曲を書いてくださるイメージが強くて、それこそ「最KIYOU」のような、「新体制のモーニング娘。を見て!」という曲が来ると思っていたんです。でも全く逆をいく感じの曲調で、印象として、改めて今の体制を振り返る意味の曲なのかなと思いました。
――私の印象ですが、つんく♂さんは自分の作品を渡すというより、今必要な作品を渡すことが多い方だと思います。当て書きもあれば、この曲を乗り越えたらもう1つ上に上がれるというような曲を。
石田:ああ、それは分かります。慣れてきた頃に、“挑戦させる”みたいな難しい曲が来るときがありますね。これも引き出しを増やしてくれる曲だと思います。
――そうしたことで言うと、今回は歌詞を音符にハメるのが難しそうな曲です。サビまで6連符の台詞構成になっていて。
石田:リズム取りは難しかったですね。そのリズムも、追って歌ったらダメなんですよ。言葉が途切れてしまうと歌詞にならないので。けれど音符をたどらないと遅れてしまうし、かといって辿りすぎると早取ってしまって、そのコントロールが難しかったです。本当に、なんて難しい曲を…と思いました。
――レコーディングは大丈夫でしたか?
生田:私、良いのか悪いのか、なんか早く終わりました(笑)。モーニング娘。って、レコーディング前の説明であまり早口なのを気にしないでと言われることが多いんですよ。言葉が詰まっていることが多くて、カラオケだったらちょっと歌いにくいような曲がたくさんあるんですね。メンバーからは意識するとどんどん速くなってしまうというのをよく聞きますが、私はあまりそういうのを感じたことがなくて、むしろ言葉をしっかり言おうと思っています。だからなのか、今回の完成楽曲を聴いた野中美希が、「生田さんは母音と子音で、子音までちゃんと話している感じがして、私は生田さんの歌い方が好きです」と言ってくれて。なので、そういうところにもぜひ注目して聴いていただきたいというのと、自分的には意識していなかったところでもあるので、そこを褒めてもらえたのは嬉しかったですね。
――子音を付けて立ち上がりをつけるというのは、つんく♂さんから直接指導を受けたことで染みついたことかもしれませんね。
生田:ええ~、どうなんでしょう。今まで本当に意識したことがなかったです(笑)。
――石田さん、櫻井さんはどうですか?
石田:私は2番のAメロにあたるところを歌っていますが、ここは仮歌ではもう少しメロディーっぽく作られていたんです。レコーディングのときに、メロディーっぽく歌うのと、台詞みたいに歌うのとの中間ぐらいでやっていたら、全て録り終えたあとに、「もう1回録ろう。もっと台詞でいってみよう」とディレクションが入り、レコーディングの中でテンションが変わったんですよ。そこがちょうど私のパートとしていただけたというのもあって、工夫しながら曲を作っている感じが今回のレコーディングで楽しいところでした。
櫻井:私はこの曲のレコーディングはとても難しかったです。加入してすぐの頃に、曲に感情移入して歌うと声色も変わってくるというのを教えていただきましたが、最近この手の曲がなかったこともあって、感情移入にちょっと苦戦して。何より私って、超ポジティブ人間なんですよ。センチメンタルな気分になることが本当になくて。でもこれを機にそんな気分を理解することができましたし、1つ、歌い方の成長ができたなと思います。