【ホラー漫画】山へ入った人々がまさかの姿で発見され… ”呪われた町”の始まりのストーリーに「怖いけど続き気になって読んじゃうやつ」「鳥肌…」と話題に

2024/10/17 18:30 配信

芸能一般 インタビュー コミック

好きな人が目の前で殺された少年の後悔画像提供・新潮社

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、ピッコマにて連載中で、夜行列車さんが原作を、武者辰虎さんが漫画を手掛ける『首くくりの町 ~篠宮神社シリーズ~』。

この作品は、2024年8月17日にX(旧Twitter)に投稿されると、瞬く間に2000件以上のいいねを集めて話題になった。このポストには「これほんとに面白いんよ」「描写がきれいで怖さ倍増」「早く続編来てほしい」といったコメントが殺到。この記事では作者の夜行列車さん・武者辰虎さんに、作品のこだわりなどについてインタビューを行った。


呪われた町のはじまり…

首くくりの町 ~篠宮神社シリーズ~画像提供・新潮社

“目の前で皐月が殺された。僕は何もできなかった。”

皐月とので出会いは小学生の頃に遡る。
兄弟で地元のお祭りに来ていたケイタは、老婆から踊りを教わっていたところ、皐月と出会う。神々しくも幻想的な皐月の姿に、一瞬で魅了されたケイタだった。

それからというもの、ケイタたち兄弟は皐月の笑顔を見るため、踊りを教わるという名目で神社に通うようになった。

そんなある日、町で事件が起こる。山犬を駆除しに山へ入った6人が、一晩経っても戻ってこないのだという。山に慣れている人たちで、遭難の可能性は低い。山犬に襲われたのではないかと話していた矢先…。6人全員が山の中で死んでいるところを発見された。しかも全員首を吊って死んでいたのである。

しかしこれはまだ序章に過ぎなかった。ここから“首くくりの町”の呪いが始まり…。

原作者・夜行列車さん「みなさまのおかげで単なる怪談好きが作家になることができました」

首くくりの町 ~篠宮神社シリーズ~画像提供・新潮社


ーー『首くくりの町 ~篠宮神社シリーズ~』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

夜行列車:もともと稲川淳二氏が好きで、中学生の頃は稲川淳二氏のCDをラジカセに入れて旅先に持っていき、夜の旅館で部屋を真っ暗にして友人達と怪談を楽しむような遊び方をしていました。大人になるにつれ積極的に怪談系コンテンツを摂取することは無くなっていったのですが、洒落怖の盛り上がりとともにネット怪談にハマった時期がありました。様々なブログやまとめサイトで洒落怖を読んでいると、YouTubeのおすすめ動画で怪談朗読が流れるようになってきました。そこで出会ったのが136さんという怪談朗読ユーチューバーです。136さんの声で紡がれる怪談朗読にどハマりしてチャンネルの動画を全て聴き終えました。そうして「困った、聴くものがなくなっちゃったぞ」となり、スマホのメモ帳にポチポチと書き始めたのが『首くくりの町』です。書き上がったら誰かに読んでもらいたくなり、怖話というサイトに投稿しました。『山に入れなくなった話』まで投稿し終えたところ反響がかなり多く、台湾の読者さんから翻訳の申し出を受けました。あれよあれよという間に台湾での出版となり、深夜ラジオまで出版されました。怖話での反響に勇気づけられると、どうしてもこの話を136さんの声で聴きたくなり、DMでお願いをして朗読作品にして頂きました。それがおそらく新潮社さんからご連絡をいただくきっかけとなり現在の連載に至っています。

武者辰虎:もともとYouTubeの朗読で『首くくりの町』を聞いていて、この話めちゃくちゃ好き!ってなってるタイミングで本当にたまたま担当編集様から本作のコミカライズのお話を頂きました。勝手に運命だと思っています(笑)。

ーー今作を描くうえで「こだわった点」や、「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

夜行列車:「人間にだけ都合の良い神様はいない」という点を意識していました。また「神様も間違ったり、悔やんだりすることがある」というのはフィクションとして入れたいという思いもありました。その上で、「こんな状況になったら町の人々はこんな風に騒ぐだろうな」とか「こういう時ってこういう反応するだろうな」という状況をリアルに想定していくのにこだわりました。注目して欲しい点はいくつかあります。この作品では主人公を含む町の人々が怪異というチートな敵に脅かされ、多数の死者も出てしまう環境に置かれますが、その状況にじっと耐え団結して乗り越えていく強さが描かれています。怪異と違って人間は団結して成長できるからこそ、チートである怪異に勝つことができるんですね。作中でヒロインの皐月がとある決意をするシーンがあり、遅ればせながら主人公ケイタも覚悟をしていきます。決意と覚悟をしたからこそ周りを置き去りにする速度で成長していく皐月。「私がやります」と神様に申し出たからこそ神様に特別に目をかけられることになった皐月。過酷な展開ではありますが、あらかじめ運命づけられたものではなく皐月の意思に神様が応えてくれた結果、あのようなエンディングを迎えるに至りました。皐月の巫女舞のシーンが序盤と中盤に出てきますが、9話ではっきりと皐月の成長が感じられる武者先生の作画は感動モノです。あの作画を始めて見た時「子供は凄い、人間は凄いんだ」と改めて教えられた気がします。作品に込めたかったメッセージを武者先生が原作以上にブーストしてくれることに、原作担当として本当に感謝しています。

武者辰虎:こだわった点は絵柄です。このお話の雰囲気を壊さないように線の太さやタッチ、原稿全体のベタのバランス最大限注意を払いました。とにかく『原作者の夜行列車先生と原作ファンの方々にがっかりされないように』が自分の中の至上命令でした。

ーー今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

夜行列車:最終話の感動的なシーンももちろん気に入っていますが、作中最も気に入っているシーンは11話でケイタが涙を流して神様に文句を言うシーンです。正座して歯を食いしばり震えるほど握りしめた手の描写。言葉にならない思いが涙になって溢れ出る描写。黙って涙を流しながら神様に恨み言を呟かずにはいられないケイタの心情がとても胸に刺さる作画で、前後のページとあわせて私の中でのベストページです。原作ではさらっと「神様に対する怒りが湧いてきました」と書いてあるだけなのに、あそこまで胸に刺さるシーンにしてくれた武者先生は本当に凄いと思います。

武者辰虎:ネタバレになるので細かくは言えませんが、終盤のクライマックスは是非見ていただきたいですね。また、作品前半に小学校の教室のスピーカーから怨霊の声が聞こえるシーンがあるのですが、どうやって怨霊の声を表現するか凄く悩みました。結果的にとても納得いく形になり好きなシーンの一つです。

ーー普段作品を描く際に大切にしていることがあればお教えください。

夜行列車:オカルトということで多少のフィクションは要素として入るのですが、それを受けた人間のリアクションや社会のリアクションはなるべくリアルであることを大切にしています。「こういう事があったら本人はこう動くよな。町はこう反応するよな」という想定を積み重ねて書いていくのが私の書き方です。

武者辰虎:ホラー漫画は『怖い雰囲気』つまり空気を描く漫画だと思っているのでその部分を大切にしています。コマの間の取り方や、キャラクターの目線やその先の空間等セリフで表せない部分をいかに恐ろしく描くか日々研究しています。

ーーご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

夜行列車:「首くくりの町」から始まった篠宮神社シリーズは現在50万字を超えるシリーズになりました。原作段階でひとつの佳境を迎えており、シズ婆さんと皐月の献身から始まった奇跡が日本を脅かす怪異を鎮めるに至る物語へと成長しています。なぜか海外からの書籍化オファーがまだ届いており、現在4カ国ですがいつか10カ国くらいになったらいいなあと思っています。私自身の展望としては、ありがたいことに「首くくりの町」を読んだ読者さんから「俺の体験した怖い話を聞いてくれ」というDMが寄せられるようになりました。そうして寄せられた怪談を集めた実話怪談本があるのですが、そうした実話怪談の方面でも活動していけたらと思っています。ホラーコミックに関しても新しい発想のネタがあるので新潮社さんに提出してみたいと思っています。

武者辰虎:これからも夜行列車先生の原作を一ファンとして描かせて頂きたいです!

ーー最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

夜行列車:みなさまのおかげで単なる怪談好きが作家になることができました。本当にありがとうございます。原作の方はなかなか更新できず申し訳ないですが、そろそろ完結しますので楽しみにしていてください。

武者辰虎:この物語には、人間の犯した罪、怨念の深さ、そしてそれに立ち向かう人々の葛藤や努力が描かれています。人々が恐怖と戦いながらも、それに対抗する術を見つけようとする様子が、読者に強い印象を与えると思います。過去の出来事が現在にどのように影響を及ぼし、それが人々の生活や運命にどのような形で現れるのか色々と考えさせられる物語です。この重厚感のある世界へどっぷり浸かってみてほしいです。