江戸川乱歩の短編小説『人間椅子』が原作となる本作。その衝撃的すぎるテーマが話題になり、本作以外にもこれまで何度も映画化や舞台化されてきた。しかし本作では、変態的な思考にフォーカスした描写とともに、明智の推理や萬田の美しさが色濃く表現されている。とはいえ、人間椅子に潜む男性が、萬田が腰かけると恍惚な表情を浮かべてあれこれ妄想を駆け巡らせるシーンには、何とも言えない格段の気味の悪さを覚える。
また本作では、萬田の名演による佳子の“高嶺の花”ぶりにも注目したい。同シリーズにおいて、明智は美女から好意を寄せられアプローチをされることが多い。しかし本作では、最初の飛行機のシーンでまず明智から佳子に声をかけその後、佳子の結婚を知りショックを受けるような描写もある。一方、佳子はそこまで明智に興味のない様子。明智にさえ“高嶺の花”の佳子は、まして椅子の男にとっては“雲の上のような存在”であり、その2人の間の落差が物語にさらなる深みを与えている。
美人作家をめぐる連続殺人事件の顛末はもちろん、哀しい真実が明かされた時に“怒りの感情”を宿す明智の様子まで、見どころたっぷり。最初から最後まで見逃せない。
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