憧れは「推しの子」原作者・赤坂アカ、人気動画クリエイター・五分目悟が初エッセイ集について語る

2024/09/06 08:30 配信

芸能一般 インタビュー 独占

五分目悟さんのYouTubeに登場する個性的なキャラクターたち※提供写真

YouTubeでオリジナルのCGキャラクターたちによる群像劇を発信している動画クリエイター、五分目悟。シュールで独創的なストーリーに中毒者が急増し、チャンネル登録者数は49万人(2024年8月現在)を超える人気を誇っている。そんな五分目さんが感じる日常の違和感をオール書き下ろしで綴るエッセイ「真ん中のひじ掛けの妖精」が、8月6日に発売された。誰もが心に抱える思いを圧倒的な文章力と鋭い視点から表現し、多くの読者の共感を得ている彼に、初エッセイに込めた思いなどを聞いた。

――エッセイ出版のきっかけについて教えてください。

五分目:経緯はシンプルです。KADOKAWAの編集者さんから「本を出しませんか?」と声をかけていただいたからです。

――「上手く文章が書けるだろうか……」といった葛藤はありましたか?

五分目:それは全くなかったですね。動画制作の時も、毎回脚本を書いているので、そんなに文章を書くことに抵抗はありませんでした。中学時代には弁論大会で優勝したりもしていましたし、書くことに抵抗はなかったです。

――エッセイの題材はどのように見つけられたのでしょうか。

五分目悟:動画でもそうなのですが、日常生活の中であえて目を光らせて題材を探す、ということは、ほとんどしていません。その余裕がまるでないのです(笑)。街では、殺されないように、後ろから車が突っ込んでこないようにですとか、後ろからどんな人が来ているかなど、気をつけることが多すぎて、とてもネタを探している余裕はないです。エッセイの内容は、自分の思い出を文字として残しておきたいという気持ちもあったので、実話がほとんどです。同じエピソードが動画化されていたりするので、見比べていただくと、より楽しんでいただけると思います。

初著書「真ん中のひじ掛けの妖精」※提供写真

――エッセイ以外にも、小説などの執筆には興味はありますか?

五分目悟:僕は本当に飽きっぽい性格なので、一週間以上同じものを作っていると「次の新しい動画を作りたい!」とイライラしてくるんです。なので、今回のエッセイ出版を機に、担当編集さんが「五分目さんの書く小説も読んでみたいです」と言ってくださったのですが、無理だと思っています。一個のことをずっとやるというのが苦手なので……。

――動画クリエイターとして大活躍中の五分目さんですが、動画制作のきっかけは?

五分目:絵を描くことにはじまって、アニメーション制作や声優、作曲と、やりたいことがいっぱいあって、それをひとつのことで表現できたらな、というのがきっかけですね。脚本を書いて、声優として演技をして、音楽も作って、編集作業をしてと、好きなことを全部詰め込んだら、総合芸術としての動画というスタイルにたどり着いたという感じです。

――もともと創作活動がお好きだったのでしょうか。

五分目:そうですね。小さい頃から、なんでもすぐ分解して、オリジナルのものを作ったりしていました。機械とかおもちゃを分解して、新たなおもちゃを作ったり。ギターも、最初にコード三つ覚えたら作詞作曲を始めたりとか。既存のものを練習するよりは、作る方が好きですね。

――動画はどれくらいのペースで制作されていますか?

五分目:1週間から2週間に一本のペースで制作していますが、本来であればもっと時間がかかると思います。これが可能なのは、僕が食べることとか寝ること、ファッションなどに興味がないからだと思うんですよね。世の中の多くの方々は、仕事よりも、おいしいパンや新しい服買いたいな、といった方向に関心が向きがちだと思うのですが、僕はそういった物質的な物への欲求が薄いので、創作活動に集中しやすいのかなと思います。

――五分目さんの動画には、他では観ることのない個性的なビジュアルのキャラクターが多数登場しますね。

五分目:単純に僕の好みなんです。以前、実写ドラマの監督もさせていただいて、その際も好みのビジュアルの俳優さんをキャスティングしていただきましたが、皆さんどこか同じ系統の顔をしていらっしゃいました。代表的なキャラクターの大船よし子は、よく皆さんに「眉毛がない!」とご指摘を受けますが、僕は最初、そのことにまったく気付かなかったんです。彼女が登場する動画がTik Tokでバズった際のコメントが、眉毛についてばかり書かれていて、その時に初めて「確かに片方しか眉毛がない!」と気づいたくらいなんです。まあこれは、ファッションなどに興味がないことの弊害なのですが(笑)。


キャプ:動画内で随一の人気を誇る、大船よし子

――動画制作からはじまり、TVドラマの監督、そしてエッセイ出版と、活躍の場を広げていますが、今後の野望はなんですか?

五分目:やりたいことは本当にたくさんあります。アイドルをプロデュースして作詞をしてみたいですし、本業の声優さんに動画に参加していただいたり、絵本や童話集も出版してみたいです。「推しの子」の原作者・赤坂アカさんのように、動画制作は他のクリエイターさんにおまかせして、自分は脚本に徹するスタイルにも憧れますね。赤坂アカさんは、今、僕が最もなりたい存在です。

――五分目さんのような動画クリエイターを目指している方へのアドバイスをいただけますか。

五分目:とにかく健康が一番です。僕もYouTubeで収益化できるまでの1~2年は、睡眠時間1時間半の生活を続けていました。途中で体の調子がおかしくなって、動画制作のペースを落としてスポーツジムに通うようにしたのですが、重りを調節するレバーを動かせないほどに筋力が落ちていました。なので、とにかく体が資本です。健康なうちに体力をつけてから、やりたいことをやるのが大事です。

――最後にこれから「真ん中のひじ掛けの妖精」をお読みになる方々へメッセージをお願いします。

五分目:この本を読んだ人と読んでない人では、明らかに人生の深みが違うと思いますので、読んだ方は鼻高々に堂々と人生を歩み、また読んでない方は、何を間違ったのか反省しつつ、本を手にとっていただければ幸いです。……というのは冗談ですが(笑)、今までの、自分の創作物の中で、一番本気を出した作品だと思いますので、その点でもぜひ見ていただければなと思います。中学の弁論大会で優勝した人間の本気を、どうぞご覧ください!

取材・文=中村実香

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