【漫画】特撮は子どもの時に卒業するものでしょ…オタク新入社員の苦悩ドラマに「心の支え」「同僚やボスの机とか祭壇」の声

2024/09/26 18:00 配信

芸能一般 インタビュー コミック

「オタ新入社員の子のデスクが祭壇になってる話」(1/12)©Shinsha Sunahaki 2024

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、特撮のオタクで会社のデスクにまでカードやフィギュアを持ってくる橋田さんのオタクとしての苦悩を描いた物語が面白いと話題の「オタ新入社員の子のデスクが祭壇になってる話」をピックアップ。なお、本作品はカドコミに連載中の「オタ婚のススメ!」(著: 砂履シンシャ/ /出版:KADOKAWA)で連載中の作品が正式なタイトルで、本作品が収められている。本作は連載漫画の第6話に当たる。

作者の砂履シンシャさんが2024年8月12日にX(旧Twitter)に投稿したところ、5万4千件を超える「いいね」を獲得し、「ちょっと可哀想…心の支えみたいなもんだし」「アメリカの会社で良かった。同僚やボスの机とかまさに祭壇になってるし、同僚が机の上だけじゃなくて壁にポスター貼りたいって言ったら会社費用で額縁買ってもらえてた。『その方が業務が良くなるならそうする』」など多くの反響が寄せられた。本記事では、砂履さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

男性社員から特撮は「子供の時に卒業するもの」と言われショックを受ける橋田さん©Shinsha Sunahaki 2024

男性社員から特撮は「子供の時に卒業するもの」と言われショックを受ける橋田さん


物語は、オタク趣味を持つ新入社員の橋田さんのデスクが推しの特撮キャラクターのグッズで埋め尽くされ、まるで「祭壇」のようになっていることを発端とする。橋田さんは仕事中も推しへの愛を忘れていないが、上司からは奇異の目で見られる。先輩社員の東雲明美さんは、オタク精神に深く共感する。飲み会の場では特撮は「子供の時に卒業」するものだと言われるが、橋田さんは死ぬまでオタクを続けると言い、東雲さんも共感するのだが…。

会社に特撮グッズを持ち込み、上司から叱られる橋田さんと同じオタクの先輩社員である東雲明美さんが友情を深めるビジネス・コメディにX(旧Twitter)上では「オタクに理解出来ない人からしたら、確かに職場におもちゃ持ってこないでってなると思うよね。でも、オタクからしたら生産性下がってなければ別に良くね?ってなるんだよね。それこそ、髪色とか服装とかと同じでしょ?って思ってまう…」など、多数のコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。

「火が付いたように好きなものの話をしだすオタクっぽいかんじを表現しよう」作者・砂履さんが語る創作の裏側とこだわり


――「オタ新入社員の子のデスクが祭壇になってる話」のモチーフはどのようにして生まれたのでしょうか?

今作の「オタ婚のススメ!」はオタク性も重要なテーマの一つなので、オタクらしさの表現のひとつである非常に目を引く「祭壇」はこの作品の中でどこかで絶対に描写しよう!と決めておりました。

挨拶で出版社さんのオフィスに赴いたとき、社員さんたちが各々の机の上にフィギュアやアクリルスタンドを飾っているのをみて、「あ、いいな~こういうの」と思いました。

その経験をもとに、漫画らしくデフォルメしてもりもりの祭壇を組んで周りをビビらせている描写を描きました。

――本作で表現上、工夫された点は何でしょうか。

オタクらしさを象徴するアイテムの描写をいれることを意識しました。今回の話で言えば最たる部分は祭壇のシーンかとおもいます。

断りを入れておくと、自分の漫画は複数人のアシスタントさんと共に描いているので、祭壇を描きこんでくださったのはアシスタントさんです。

ここは絵として引きが強いシーンにしたいと思っていたので、意図を組んでくださって、物量の多いシーンをがっつりと引きのある絵面に仕上げていただいて本当に感謝してます。

他も、推しを上司に紹介するシーンにおいては、パワーポイントで作った資料らしい絵になるようアシスタントさんに伝えて、そのようなデザインで描いてくださってとても助かりました。

背景や小物の機微に関しては、自分の作品の意図を組んでくださって技術を発揮していただいているアシスタントさんのお仕事の頑張りなので、ぜひ見ていただればと思います。

――本作を描く上で砂履さんがこだわった点がございましたら、教えてください

普段一般企業に勤めているオタクは、それぞれの工夫で社会に溶け込んでいるかと思います。
ですが、ひょんなことからオタクを認識しあうと火が付いたように好きなものの話をしだすオタクっぽいかんじを表現しようとしました。

オタクらしさの特徴として、マシンガントークがあると自分は捉えているので、橋田さんの回想シーンでもマシンガントークをして新入社員の同期を引かせたり…と好きがあふれてしまうゆえの苦悩を描くところを意識しました。

――「オタ新入社員の子のデスクが祭壇になってる話」で砂履さんお気に入りのセリフやシーンなどがございましたら教えてください。

明美と橋田が昼食を食べつつオタクを明かしあうシーンです。「オタクは卒業するものじゃない
 オタクは持って生まれた業ーカルマーだよ……!」がこの話で一番お気に入りのセリフです。
ここの台詞は担当さんと相当悩んだうえで出てきたものだったのと、悩んだ末にいい台詞を選べたので思い出深いです。

――本エピソードで読者に注目してほしい点などがありましたら、お聞かせください。

基本的に、人間は環境で役割を演じ分けると考えています。
会社などはその最たる場所で、多くの人が一定の「求められる振舞い」を読み取って、仕事が円滑に進むよう努力をしている、と私は捉えています。

ですので、会社という環境は「ありのままの自分」というものを出すのは憚られる、もしくはしてはいけない…と感じやすい場所だと思います。

今回の話においては、オタク趣味がありのままの自分に該当するつもりで描きました。やりすぎなくらいの祭壇描写は、自己解放を伝わりよくするための絵のデフォルメです。

実際にやったら会社の環境によっては上司に呼び出されて指導が入り、それとなく怒られておしまいになるかもしれません。

でも、お話の筋書きが描けるフィクションだからこそ、こんなふうになったらいいなが描けます。

今はよく現代ものを描いておりますが、現実で少しずつ降り積もっていくちょっとした生きにくい部分がこんなふうになったら生きやすくなりそうだな~ という思いで描いております。

そういう部分を楽しんでいただけたら嬉しいです。


――最後に、KADOKAWAでも連載中の「オタ婚のススメ!」を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

「オタ婚のススメ!」は、タイトルに描いていきたいことを集約させています。オタクにしても結婚にしても、どちらもどこまでも楽しくもなるし、どこまでも悩むこともできるものだと捉えているからです。

主人公の涼太と明美は、ひょんなことから交際ゼロ日結婚しますが、面白おかしく、時には悩んでふたりなりのオタ婚を進展させていきます。

今後オタ婚をかいていく上で、二人の関係性の中で一時的に落ち込むような展開があったとしても、ご安心ください。それは進展への第一歩目です。

そういうわけで、二人なりの物語を描いていきますので、今後とも応援よろしくお願いいたします!