コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、コミックエッセイ『あなたが私を変えたから』(KADOKAWA)に収録されている『友達とおそろいのマスコットを無くしてしまった女の子の話』を紹介する。作者の橋本ライドンさんが、7月31日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、4.3万件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、橋本ライドンさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
黒髪のショートカットが特徴で、不安そうな表情をしているのは高校1年生の猪島岬。大人しく真面目な性格をしている。趣味は読書。大人しめのグループで穏やかに過ごすのを好んでいる。
また、岬は気にしいな性格。トイレから戻ってきて、教室のドアを開けようとすると仲良しグループの友達が「今日この後遊びに行こー!」と話しているのが聞こえる。
すると岬は「私がいない時に話してるってことは…私のことは誘いたくないのかも…!?」「どうしよう入りづらい」となかなか教室へ入れない。
しかし、友達はみんな「岬帰ってきてる」「岬、早く!遊び行こ!」と言って岬を呼ぶ。友達は当然のように岬と遊ぶつもりのようだが、このように岬はいつも気にしすぎてしまう。
そんな岬とは対照的に、金髪のロングヘアが特徴の首藤静は岬と同じく高校1年生。派手めのグループでワイワイ過ごすのが好き。また、自分のことを気にしない性格だと思っている。
同じグループの友達が誤って静のシャーペンを壊してしまっても「しょーがないよ、気にしないで」と言って気にしていない様子を見せる静。でも心の中では「…それ、お気に入りだったんだけどな」と呟く。しかし、友達に話しかけられると、気にしていないような素振りをみせていた。
ある日の放課後、カバンにつけていた、グループのみんなとお揃いのマスコットがないことに気が付いた岬。「おそろいなくすなんて嫌われちゃうかも…」と思った岬は、同じグループの友達と一緒に帰るのを断り、1人で慌てていた。
一方その頃、静は廊下に落ちているマスコットを見つけて…。
この漫画を最後まで読んだ人たちからは、「心から親友と呼べる長く続く友情の予感」「こういう関係性の2人組好き」「エモい」「ときめき止まらんな」など、多くのコメントが寄せられている。
――『友達とおそろいのマスコットを無くしてしまった女の子の話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
この漫画に登場する「岬」と「静」は、もともとはXに投稿した1本の2コマ漫画のキャラクターでした。元の2コマは『大事にしかたは人それぞれ』をタイトルとし、「おそろいで買ったマスコットを友達がつけておらず落ち込んでいたが、友達は大切なマスコットを無くさないよう玄関に飾っていた」という内容で「人それぞれの感覚の違い」を描いた話です。
この話は非常に大きな反響をいただき、KADOKAWAの編集さんのお声がけをきっかけに、このふたりの長い話を描き始めました。こちらの『友達とおそろいのマスコットを無くしてしまった女の子の話』は、「おそろいのマスコット」ですれ違い、絆を深めたふたりが、以前にも「おそろいのマスコット」を巡って知らない間に出会っていたら…?と想像を膨らませてできたお話です。
岬と静それぞれの性格や交友関係の違い、岬が「おそろいを持ち歩く」ことに意義を感じていること、静の性根の優しさなどが見える話を描きたいと思い、この話を描きました。
――本作では、マスコットがないと気がついた岬の青ざめた表情が非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
こだわったのは、乱高下する岬の心情を描くことです。本作は、岬と静の物語のプロローグです。岬は気にしすぎる女の子で、岬と静の関係は、岬の「気にしい」によって少しずつ深まっていきます。岬がどんな思考をする女の子なのか、物語全体の中盤で起こる「友達がおそろいをつけてくれていない」というあまりに些細な出来事が、彼女にとってどれくらい心に影を落とすことなのかが、読んでいる方にわかるようなエピソードにしたいと思いました。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
特に気に入っているのは静が友達にペンを壊されてしまった時、笑ってすませるシーンです。気まずそうにしている友達、本当はお気に入りのペン、当事者以外の友達のちょっとモヤモヤする「いじり」。岬にとっての憧れである「明るくて優しい首藤さん」が、自分の本当の気持ちをないがしろにしてしまうことがあることを描けたかなと思って気に入っております。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか。
「こういうのが好きだな」と自分が思うことからスタートします。それはキャラクターであったり、展開であったり、オチであったりさまざまなのですが、つきつめるとだいたい「愛(恋愛に限らず、友愛なども含む愛全体です)」と「執着」の話になります。最終的には「このキャラクターならこう言うだろう/こうするだろう」という考えに基づき、想定していたゴールとは変わっていくこともあります。
――作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか。
自分にとって「可愛い」キャラクターを描くことと、その時その時の、自分が出せるベストを尽くすよう意識しています。実力不足を感じることが多々あるので、そこで挫けずモチベーションを保つことが大切だと思っています。「今できるベスト」を尽くすことが私にとってはわかりやすく、読み返した時も達成感があり、少しずつできることも増えていく気がしています。
――今後の展望や目標をお教えください。
この先も漫画を描いていきたいです!普段は短い漫画を描くことが多いので、長い漫画にチャレンジしたいと思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
いつも漫画を読んでくださりありがとうございます。描いた漫画を読んでもらえることが私にとって一番の励みなので、本当に嬉しいです!これからも個人・お仕事ともに描き続けていけたらと思いますので、よろしくお願いします。また、今回取り上げていただいた「岬」と「静」のお話は、一冊の本として描き下ろした作品になります。Xでは全てを公開することができないのですが、是非最後まで見届けてもらいたい漫画です。公開中のお話を読んで気になったかたは、よろしければ単行本をお買い上げいただけますとすごく嬉しいです…!
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