1997年より放送が始まったアニメシリーズ「ポケットモンスター」に登場するロケット団のムサシ役や、「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年ほか)の綾波レイ役、サンリオキャラクター・ハローキティの声を30年以上担当するなど、日本を代表する実力派声優として知られる林原めぐみ。「らんま1/2」の新作アニメへの続投も話題になっている。また海外ドラマでは、ミステリー・コメディードラマシリーズ「マーダーズ・イン・ビルディング」のメインキャラクター・メイベル(セレーナ・ゴメス)の日本語吹替版を担当するなど、アニメーション声優のみならず、吹替、ラジオパーソナリティーと、魅力的な声を武器に幅広く活躍。長きにわたり声優界を牽引してきた林原のキャリアに迫る。
小学生の頃に映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」(1978年)を鑑賞したことがきっかけで声優という職業に興味を持ったという林原。高校卒業後は、看護師免許の取得に向けた勉強をするかたわら声優養成所にも通い、看護と声優どちらの勉学も両立させながら学生時代を過ごしていたという。学校在籍中にアニメ「めぞん一刻」(1986年)第1話の幼稚園児役で声優デビュー。
1980年代後半から1990年代はアニメ「らんま1/2」(1989〜1992年)の“女らんま”役を筆頭に、「新世紀エヴァンゲリオン」では綾波レイ、「スレイヤーズ」(1997年)ではリナ=インバースなど、主役級のキャラクターを多く演じるようになり人気声優へと大ブレイクしていく。
その後も林原は1990年代のアニメシーンを支える人気声優の1人として活躍し、当時の子どもたちにとって欠かせないアニメとして大ブームだった「ポケットモンスター」に登場する、悪役的存在のロケット団のムサシを演じた。彼らが主人公のサトシたちとのバトルに敗北した際に発する「やな感じ〜」という決まり文句とともに去っていく姿は、同アニメの中でも印象に残るおなじみのシーンだ。
さらに「名探偵コナン」(1996年〜)では、工藤新一と同じく体が幼くなってしまった、黒ずくめの組織の元メンバーでもある灰原哀の声を担当。冷静かつ沈着なキャラクターでもある灰原が醸し出すミステリアスさは、林原の声があってこその雰囲気だろう。
声優として活躍する一方で、1992年から放送中のラジオ番組「林原めぐみのTokyo Boogie Night」(TBSラジオ)でラジオパーソナリティーを務めている。30年以上続いている同番組は、彼女にとってのライフワーク。さまざまな人気キャラクターを演じている彼女ではなく、等身大の姿でリスナーとラジオを通じて交流しており、マルチな魅力にあふれる存在として多方面でファンの心をつかんでいる。
また、林原は海外作品の吹替キャストとしても活躍している。2021年にスタートし、ニューヨークの高級マンション・アルコニアを舞台に、頻発する殺人事件の謎に迫るミステリー・コメディードラマ「マーダーズ・イン・ビルディング」では、セレーナが演じるメイベルの日本語吹替版声優を担当。
同シリーズはメイベルに加え、同じマンションに住むチャールズ(スティーブ・マーティン)、オリバー(マーティン・ショート)の“おじさん”2人を交えた3人が繰り出すテンポの良い会話劇が魅力の作品で、ミステリーはもちろんセリフの掛け合いでクスッと笑えるコメディー要素もたっぷりのドラマ。2人の“おじさん”の日本版声優として、チャールズ役を羽佐間道夫、オリバー役を山寺宏一がそれぞれ担当しているという豪華なキャスティングだ。
山寺は本作の日本語吹替版で、自身初の発案・キャスティング協力も務めており「林原さんはものすごく役を掘り下げて、作品性とかキャラクター性に妥協せずに向き合う方なので、彼女だったらうまく表現してくれるだろうと感じました」と、期待を込めた彼の提案によって実現したぜいたくな会話劇が堪能できるのも同ドラマの醍醐味(だいごみ)だろう。
林原も自身のブログで「ミステリーがとにかくすごい! 吹き替えがこんなに楽しいなんて!」と手応えを語っており、“異色のトリオ”の掛け合いが耳心地の良いドラマとなっている。
林原といえば、代表作の一つである「らんま1/2」がこの10月から1992年以来32年ぶりにアニメで放送されることが決まり、林原ら主要キャストも続投することが話題になったばかり。今後もますます精力的に活動する姿が見られそうだ。
なお、「マーダーズ・イン・ビルディング」のシーズン4(全10話)は、毎週火曜に1話ずつディズニープラスのスターで独占配信中。
◆文=suzuki
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