TVアニメ「逃げ上手の若君」(毎週土曜深夜11:30-0:00ほか、TOKYO MXほか/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Leminoほかで配信)の第九回が8月31日に放送された。瘴奸との一騎打ちで時行が見事に勝利。人の価値を見抜く天才・吹雪が逃若党に加わり、視聴者からは歓喜の声が上がった。(以下、ネタバレを含みます)
本作は、「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」で知られる松井優征が週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載中の歴史スペクタル漫画を原作としたTVアニメ。鎌倉幕府滅亡の後、北条家の生き残りである主人公の北条時行が動乱の世を駆け抜ける姿を描く冒険譚だ。
アニメーション制作は「SPY×FAMILY」や「ぼっち・ざ・ろっく!」などを手掛けるCloverWorks、監督は「ワンダーエッグ・プライオリティ」で副監督を務めた山崎雄太、シリーズ構成は「その着せ替え人形は恋をする」の冨田頼子、キャラクターデザインは「劇場版ポケットモンスター ココ」で総作画監督を務めた西谷泰史が担当。奇才の製作陣が、美麗かつ迫力のある映像で歴史の一片を紡ぐ。
諏訪領の北端の村で始まった北条時行(CV:結川あさき)率いる「逃若党」と瘴奸(CV:東地宏樹)率いる「征蟻党」の戦い。時行は狭い室内で、弧次郎(CV:日野まり)と亜也子(CV:鈴代紗弓)の二人がかりでも全く歯が立たなかった鎧武者の瘴奸と一騎打ちで戦うことになった。
時行が吹雪(CV:戸谷菊之介)から授かったのは、真剣が最も切れ味を発揮する「引きながら斬る」剣技。まさに逃げ上手な時行にぴったりの技だ。時行は吹雪に教えてもらった通り、拝むようにして構えた左手を照準に、まずは相手の太刀筋が手と刀の間を通る瞬間まで待機。その時が来たら上半身を捻り、相手から逃げつつ刀を引き斬る。見事に切り裂かれた瘴奸の手からは血が吹き出した。
ここから瘴奸が出血多量で衰弱死するまで、時間を稼ぐ時行の鬼ごっこが始まる。当初は「手首の出血では意識を失うまで時間がかかる。まさかそれまで俺にやられずに済むつもりか」と時行に凄む余裕を見せていた瘴奸。だが、時行は生存本能の怪物であり、追い詰められてこそ真価を発揮する。怯えているように見えた時行は興奮を抑えきれぬ様子で恍惚とした表情を浮かべていた。
その後も楽しそうに室内を逃げ回る時行。そんな時行を必死に追いかけるが、一向に追いつけない瘴奸は薄れゆく意識の中、瘴奸は走馬灯を見る。もともとは武士の家に生まれた次男坊だったが、父から自分だけの領土を与えられなかった瘴奸。自分の領地を守るために極めた武芸と兵法を兄のために使うことを拒んだ瘴奸は流浪武士となり、徐々に奪う人生へと身を投じていった。
一発逆転で大戦に参加するも敗北し、楠木という男から「そなたはいつも闇の中におられますなあ」「追手の来ないどこか遠くに逃げられよ」「いずこかに光差す地もあるでござろう」と言われたことを思い出す。そんな場所はどこにもないと思っていた。しかし今、瘴奸の目には時行から後光が差しているように見えた。外道を極めた自分に純粋無垢な笑顔を向けてくれる時行を仏と崇め、瘴奸はついに倒れ込む。この血湧き肉躍る戦闘シーンに忍ばされるシュールな笑いこそ、本作の真骨頂と言えるだろう。
なお、瘴奸は援軍に駆けつけた小笠原貞宗(CV:青山穣)に命を救われる。すっかり時行に浄化された瘴奸は悪事から手を洗い、武士として貞宗に仕えることを決意。いずれまた時行と刀を交える時が来るだろう。その時が楽しみだ。
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