コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、『運命のリフォーカス』がAmazon Fliptoon縦読みマンガ大賞で準グランプリを受賞し話題となっている、つのだふむさんが描く『移住夫婦の出産が壮絶だった話』をピックアップ。
つのだふむさんが2024年8月21日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、4,000件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、つのだふむさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
主人公・ふむが糸島に移住し、迎えた2022年の大晦日。妊娠中の妻・りさこが突如痛みを訴える。ついに陣痛が来たかと思われたが、痛みは尻にできたおできであることがわかり、急ぎ往復40分かかる一番近いドラッグストアへ向かうふむ。薬を買い帰宅するが、おできの痛みにその日行くはずだった年越しパーティは断念することになった。
りさこの出産予定日は年明けの1月8日だったが、予定日が近づいても一向に産まれる気配がなかった。1月5日の内診でも子宮口は全く開いていない状態だったが、その日以来、りさこは本陣痛前の不規則な痛みである前駆陣痛の痛みとたたかうことに。翌日にはおしるしと言われる出血があり、さらにその翌日には陣痛かと思われる痛みに夜中に目を覚ます。しかし朝になると痛みは遠のいてしまい、一旦様子を見ることに。
その後も定期的に前駆陣痛の痛みに耐えるりさこ。出産予定日である1月8日にはさらに痛みは強くなり、産院に連絡するも「様子をみましょう」と言われてしまう。しかし、胎動がない気がするとして急遽病院へ。産院に到着し診察してもらうと、赤ちゃんは元気であることが分かりほっとする二人。しかしまだ子宮口は1センチ。まだ生まれないと言われ再び帰宅することとなるのだった。
それからも前駆陣痛の痛みに耐え続けるりさこ。1月11日の朝、自宅の2階でうずくまるりさこの後ろ姿を見たふむは、病院に入院させてもらおう、と提案する。子宮口はまだ2センチだが、入院することとなったりさこ。出産を促進させるためバルーンで子宮口を広げたり、促進剤を打ったりといった処置を受けることとなるのだった。そしてその後破水。りさこのこの後の行動が助産師さんを驚かせることとなる…。
作品を読んだ読者からは、「読んでてドキドキする…」「壮絶すぎて2人産んだ身でも恐怖」など、反響の声が多く寄せられている。
――『移住夫婦の出産が壮絶だった話』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
コルク代表の佐渡島庸平さんから「糸島に移住したい人いる?」という呼びかけがあり、奥さんに相談したら「住もう!」となったので、『糸島STORY』という日記マンガを毎日描き始めました。
こんな転機はそうそうないだろうなと。僕は「出会いを全てマンガにする」作家でありたいと掲げていて、この出来事はいろんな人や物事と出会えるだろうなと思って。
移住までのカウントダウン、移住当日の夏の日、移住後の日々、、、と、日記マンガはやめることなく描き続けていました。
その中で、移住一年目の冬にさしかかった頃、奥さんの出産が迫り、日記としてその出産までの日々も記録し続けました。本当に起きたことを、僕の視点を通して描いていて。出産の時の奥さんの苦しみや感情は、奥さんにしかわからないので、本人が記録していたテキストの日記と僕の視点を組み合わせてマンガにしました。
台風に被災したこともマンガにしたのですが、僕と奥さんはどんなに辛いことがあっても「これマンガにしてよ」「これはマンガだな」みたいな感じで、物語に落とし込むことで、現実を受け入れていたようにも思います。笑 そうじゃなきゃ、移住後の1年は、ちょっと無理だったかもな。
――今作を描くうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
「嘘の感情を描かない」ということは決めています。
感情が本当であれば、出来事の時系列を多少組み替えたり、演出を加えても「嘘」にならないと感じています。むしろ、時系列通りに淡々と事実を描くよりも、実際よりリアリティが立ち現れることが多々あるなと思う。
面白いなと思うのは、僕は奥さんを「りさこ」というキャラで登場させているのですが、彼女が実際には言ってないこととかも結構織り交ぜている。にもかかわらず、本人がマンガの通りのことを言ったと思い込んでることがある。笑
言いそうではあるけど、言ってなくて、でも感情は合っている、というセリフを描く。そうすると、本人も「言った」と認識するんだなと。そうすると、これはもう嘘ではない。
奥さんが僕のマンガを見て「こうじゃない」と指摘してくるのは、だいたい「感情」が合っていない時ですね。「私はこの時もっとこういう気持ちだった」と。
だから、感情を描き間違えると、それは嘘なんですよね。
――今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
うーん、自分で言うのは恥ずかしいですが、、、。
移住先のヤバハウスの押し入れの中にブローチが落ちてると思ったら干からびたでかいアシダカグモだったところとか、良いなと思いますね。一瞬で田舎の家と感じられる。
あとはやはり、台風の最中に日付が変わり誕生日を迎えたりさこが、無理矢理笑顔になって心を落ち着けようとするシーンですね。あそこだけは自分でも笑います。
本当はあの場面、誕生日の記念に動画を残してるのですが、動画はマンガよりも色々やばすぎて誰にも見せることはできません。
――つのだふむさんは『運命のリフォーカス』がAmazon Fliptoon縦読みマンガ大賞で準グランプリ受賞し、大変話題となっていますが普段漫画を描く上で、ストーリーやキャラクターなど、どのようなところから着想を得られているのでしょうか?
難しいですよね、、、、
できるだけ身近なもの、身近な感情からキャラクターもストーリーも拡げていくのが大事だと思っていますが、日記マンガではできていることが、ストーリーマンガになると難易度がグッと上がるので、僕はまさに今、キャラクターに悩み、ああでもないこうでもないと考え続けている真っ最中です。
どんなに突飛で壮大な設定のストーリーも、現実の何かの比喩でなくてはならないと思っていますし、主人公の葛藤や感情も含めて、自分がよく知っていることでなくてはな、と思います。
着想は、常に自分の中にあること、視点、、その精度を上げ続けていった先にあるものかもしれません。
――つのだふむさんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
まずは「運命のリフォーカス」で、ヒットを出すこと。
この作品、15話で第1章が終わるのですが、ちょうど今15話に取り掛かっていて。
15話まで描いたら、もう一回1話から見直して、大胆に描き直そうと思っているのです。
で、15話を10話にギュッと圧縮して、濃度の高い面白いものに作り変えて、そのニューバージョンで改めて連載をスタートさせる。
こんなやり方をしてる人はいないかもなと思うので、そういうことをどんどんやっていきたいです。
チーム体制の分業で作ることが多いウェブトゥーンですが、運命のリフォーカスは基本的に僕1人でネームから作画カラーまでやる、それで週刊連載する、というのを目標にしてます。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
友達や弟に、ノートに描いた自作のマンガを見せる。僕の創作の始まりはそこで、今もこれからも、ずっとそういうふうにマンガを描き、見せていけたらいいなと思っています。人気が出て、売れて、「先生」と呼ばれるのではなくて、友達や、兄弟に「これどう⁉︎」って見せて、楽しく読んでもらう。そういう関係のように、作品を届けていけたら幸福です。
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