<憐れみの3章>天性のセンスと並外れた演技力を見せるジェシー・プレモンス…ランティモス監督も絶賛する実力派俳優の魅力

2024/09/12 20:03 配信

映画

3つのストーリーのすべてで存在感を放つジェシー・プレモンス


そんなプレモンスは、本作の3つに構成されたストーリーで全く異なるキャラクターの演じ分けに挑み、すべての章で主人公と言っても過言ではないほどの存在感を放っている。

第1章となる「自分の人生を取り戻そうと格闘する、選択肢を奪われた男」を描いた1つ目の物語では、ウィレム・デフォー演じるレイモンドとの間に奇妙な“支配”と“服従”の関係を持つ男性・ロバート役を演じている。支配から逃れようとするものの、抗えずに葛藤する複雑な役どころだ。

第2章となる2つ目の物語「海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官」では、エマ・ストーン演じる海難事故で失踪した妻リズの夫・ダニエル役を演じ、奇跡的に生還した妻の別人のような言動に困惑してしまう。疑心暗鬼に駆られるにつれ、自身の言動も狂っていくという二面性のあるキャラクターを圧倒的な演技力で演じ、観る者を想像を絶する奇妙な世界へと引き込んでいく。

そして第3章となる3つ目の物語では、「卓越した宗教指導者になるべく運命付けられた特別な人物を懸命に探す女」では、エマ・ストーン演じるエミリーとともに、ある一人の女性を、人生をかけて探すという使命を負うアンドリュー役を務め、スキンヘッドに眼鏡という他2つの物語と全く異なる姿を見せている。また感情表現は控えめながら、強い信仰心を感じさせる絶妙なバランスの演技を見事に表現している。

ランティモス監督も「最も偉大な俳優の一人」と絶賛


プレモンスは3つの物語であると知った時、インスピレーションのために他の作品を参考にしようと試みたが、うまくいかなかったといい、「この世界観に近いと思えるようなものを見つけられなかったのです。映画としてだけでなく、ヨルゴスにとっても新しい領域のように感じています。本当に奇妙で、脚本とキャラクターの変化がとても面白いのです」と、新たなる世界だと捉えて本作へ挑戦したことを明かしている。

そんなプレモンスは、本作での類まれなる演技力が高く評価され、第77回カンヌ国際映画祭において、見事男優賞を受賞し、ランティモス監督のカンヌ無敗記録を更新。プレモンスのキャリアをずっと追いかけ、一緒に仕事をしたいと思っていたというランティモス監督は「彼は現在活躍している最も偉大な俳優の一人だと思います。ユーモアのセンスも素晴らしいし、トーンもよくつかんでいます。彼はとても努力家で、あるキャラクターから次のキャラクターへと微妙に変化していく姿は並外れたものがあります。彼はいつもいろいろなことに挑戦しているのです」と絶賛し、本作で2人の道が交差したことを心から喜んでいた。