俳優の磯村勇斗が、9月25日に都内で開催された映画「若き見知らぬ者たち」の完成披露上映会に登場。共演の岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太、霧島れいか、滝藤賢一、豊原功補、原案・脚本・演出を務める内山拓也監督と舞台あいさつを行い、撮影エピソードなどを語った。
同映画は、「佐々木、イン、マイマイン」(2020年)で若者の熱い支持を集め、各界の著名人からも絶賛、新人賞を総なめにした内山監督の商業長編デビュー作。失われた人生に絶望することも、家族から逃れることもできない一人の青年が、背負ったものの重さと虚しさに飲み込まれながらも、自分の中にある“最後の砦”と向き合う姿が容赦なく描かれる物語だ。フランス、韓国、香港、日本の共同制作作品であり、企画の段階で海外3つの国と地域での配給が決定している。
母の介護をしながら亡き父の借金返済に追われる主人公・彩人を演じる磯村は、内山監督の作家性に引かれてオファーを受けたそうで「お話を頂いたときに脚本を読んで、実際に内山監督とお会いしていろいろとお話をしたんですけど、そのとき彼の話している内容であったり、思い、彼の内側には何か“叫びたいもの”があるんだろなと感じて。その“声”を彩人という役のフィルターを通して表現したいと思って、絶対に参加しようと決めました」と、当時を振り返った。
その彩人というキャラクターを実際に演じてみて、磯村は「置かれている環境もそうですけど、呼吸することだけで精いっぱいという役柄なので、作り上げていく上でも大変だったんですけど、それ以上に弟の壮平(福山)を翔大が本当に一生懸命、格闘技(のシーン)に向けて体を減量しているのを隣で見て来たので頑張れました」と、精神的にも苦しい役柄ではあったものの、弟役の福山の姿に力をもらったことを伝えた。
また、彩人の恋人・日向役の岸井は、そんな磯村との共演を「あんまり私語をしていないというか、現場でもおうちのセットの上が支度場所だったので、役から離れることがなくておしゃべりもあんまりしていなかったんです。最終日にひげを剃った磯村さんにお会いして、(別人のようで)『誰?』ってなったぐらい、彩人でいてくださったんだなっていうのをすごく感じました」と回想すると、磯村は「最終日は大事なシーンでもあったので、本当は姿を現したくなかったんですけど、会ってしまって(笑)。ちょっとショックを与えてしまったことは非常に反省しております」と、ちゃめっ気たっぷりに謝罪していた。
さらに、磯村演じる彩人の親友・大和を演じる染谷はこれが磯村と初共演だという。磯村との共演について聞かれると「初共演で、初めましてだったんですよ。初めましてで、(いきなり演技で)大親友の2人が会話するということで…。でも、初めましての気がしなくて、『あれ?知ってたよね?』って気分にしていただいて、彩人がそこにいたので、本当に自然とお芝居に入っていった」と初めて会ったとは思えない空気感だったと打ち明け、「スタッフも込みで彩人を見守っているという現場だったのですごく心地よくお芝居をさせていただきました」と回顧。
それを受け、磯村は「染谷くんに現場でも言ったんですけど、僕はずっと(染谷の演技を)好きなんです。自分がデビューする前から映画で見て来たので、すごくすてきな役者さんがいるんだなと思っていたから、現場でその愛の告白をしたことがいい方向にいったのかなって思っています」と笑顔で話し、同世代ながら長いキャリアを誇る染谷に敬意を表した。
映画「若き見知らぬ者たち」は、10月11日(金)より、東京・新宿ピカデリーほか全国公開。
◆取材・文・撮影=月島勝利(STABLENT LLC)