最終回直前、アニメ「逃げ上手の若君」が話題となった理由とは? 他作品と一線を画す主人公、実験的な作画演出……

2024/09/28 10:30 配信

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物語にメリハリをもたらす実験的な作画演出


本作のアニメ化にあたっては、「SPY×FAMILY」や「ぼっち・ざ・ろっく!」など数々のヒット作を手がけてきたCloverWorksが制作を担当。監督の山崎雄太、キャラクターデザインの西谷泰史、色彩設計の中島和子など、作画の技術が高く評価された「ワンダーエッグ・プライオリティ」のスタッフが集結しているのは特筆すべきポイントだ。

本作も今期No.1と言えるほど作画のクオリティが高く、初回の放送直後からSNSで「作画素晴らしすぎて言葉失うどころじゃない」「控えめに言っても神レベルの作画では!?」「ただただ圧倒される」と絶賛の声が上がっていた。

CGやエフェクトと組み合わせてダイナミックな戦闘シーンを作り出す「鬼滅の刃」や、キャラクターの心情を繊細に表現した「【推しの子】」など、作画レベルの高さが話題になった作品はいくつもある。その中でも、本作を唯一無二の作品たらしめているのは作画演出の豊富さではないだろうか。

例えば、第二回では焼き払われた鎌倉の街が水墨画のようなタッチで描かれており、その中を歩く時行の絶望感や戸惑いがよりくっきりと浮かび上がった。続く第三回では、時行たち一行が鎌倉から信濃国へ移動する過程が絵巻風のイラストで描かれる。戦闘シーンでも敢えて荒々しい筆使いで敵の勢いを表現したかと思いきや、あくまでも“鬼ごっこ”を楽しむ時行の軽やかさを繊細な線画で見せるなど、本作はこうした実験的な作画演出によってメリハリをつけ、視聴者を飽きさせない。他にも中世日本の風景を繊細に描いた背景美術、鮮やかでどこかレトロな配色、時代劇を思わせる手書きテロップなど、細部にわたって作り手のこだわりが感じられる本作。第十二回「がんばれ時行、鎌倉奪還のその日まで」は、本日9月28日夜11:30から放送だ。

◆文/苫とり子

アニメ「逃げ上手の若君」より©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会