ハーレイ・クインやピースメイカーなど、数々の人気ヴィラン(悪役)を輩出してきたDCコミックス。なかでも不動の一番人気と言えば、バットマンの宿敵・ジョーカーだ。ピエロのような道化メイクを施し、底知れぬ狂気を振りまくその姿は、ときに恐ろしく、ときに悲しく、ときに愛らしい。バットマンという正義の権化に対するカウンター的キャラとして活躍しつつも、今やヴィランの枠組みを超えた存在にまで昇華した。「ムービープラス」では、10月11日(金)に封切りされる新作映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の公開記念特集として、前作「ジョーカー」をはじめ、関連作を一挙放送。今回は、ジョーカーという稀代の悪役の魅力を紹介すると同時に、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』で主演を務めるホアキン・フェニックスとレディー・ガガの主演作を振り返っていこう。ジョーカーのビジュアルは見たことあるけど、じつはよくわかっていないという人も、これさえ読めば観たくなること間違いなし。
ジョーカーが初めてコミックスに登場したのは1940年。バットマンが誕生したのが1939年であるから、ほとんど同時期ということになる。前述の通り、バットマンの宿敵として生み出されたジョーカーは、当初は知性と狂気を孕んだサイコパスとして描かれたが、徐々にマヌケなキャラクターへと変貌するなど、時代とともに変化を繰り返しているのが面白いところ。そんな相反する二つのキャラクター性は現在でも健在で、作品ごとに使い分けられていたり、融合していたりもする。まさに多様性こそが彼の人気の秘訣と言えるだろう。そんな器の大きなジョーカーだが、さらに「第3」とも呼ぶべき新たなキャラクターとして再構築されたのが、2019年の映画『ジョーカー』だ。鳴かず飛ばずのコメディアンだった彼が、ふとしたきっかけから狂気へと染まり、ジョーカーになっていく過程を描いた社会派作品で、これまでのキャラクター像とは一線を画した新たなオリジンを確立した。映画『ジョーカー』はR指定映画として初めて10億ドルの興行収入を超え、第76回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞、さらに第92回アカデミー賞で主演のホアキン・フェニックスが主演男優賞、ヒドゥル・グドナドッティルが作曲賞を受賞するなど、世界的な大ヒットを記録した。10月11日に公開される『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は本作の直接的な続編に当たるため、絶対にチェックしておきたい一作だ。
改めて、映画『ジョーカー』が革新的だったのは、これまで何度も映像化されてきたジョーカーという悪役を、まったく新しいキャラクターへと変化させたところだろう。それまでジョーカーと言えば、“ぶっ飛んだサイコパスな犯罪者”というイメージで、最後にはバットマンに倒されるべき究極の敵役として輝きを放っていた。しかし映画『ジョーカー』では、コメディアンを目指す心の優しいアーサー(のちのジョーカー)が、格差社会のなかで鬱屈を積み重ねていき、ふとしたことでその狂気を爆発させてしまうという展開。生まれつきの凶悪犯ではなく、弱肉強食の社会が生み出した哀しきモンスターとして描かれたことで、観客の共感を得たのだ。この映画にはバットマンも登場せず、アクション要素もほとんどない。貧富の差が激しいゴッサムシティという架空の街を舞台とした質の高い社会派ドラマで、「アメコミ」という枠組みを超えて広く認知された作品となった。
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