映画『ジョーカー』、そして続編の『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でジョーカーを演じるのは、ホアキン・フェニックス。「情動調節障害」という精神疾患を抱え、母親を介護しながら社会の片隅でひっそりと暮らすアーサーを演じるにあたり、なんと20キロもの減量を敢行。あばら骨がくっきりと浮き出るほどにやせ細った姿で撮影に臨むなど、徹底した役作りを行った挑んだホアキンは、まさに「怪演」と呼ぶにふさわしい芝居を見せている。緊張すると笑いが止まらなくなってしまう「情動調節障害」の発作に始まり、母親を介護する際の孝行息子な様子、しだいに狂気を帯びてゆく過程をじっくりと丁寧に積み上げていき、それが劇中でもっとも有名な「階段でのダンスシーン」でのカタルシスへと繋がっていく。ちなみに映画『ジョーカー』は、人気映画ライターグループ「映画木っ端微塵(多田遠志、てらさわホーク、高橋ターヤン)」による副音声解説付きの「ジョーカー◆副音声でムービー・トーク!◆」の放送もあるので、こちらもぜひチェックしてみてほしい。
そもそもホアキン・フェニックスは出演作ごとにガラリと印象を変えることで知られるカメレオン俳優であり、それは今回「ムービープラス」で放送される『8mm』や『ヴィレッジ』でも確認できる。『8mm』は1999年公開のサスペンス映画で、ホアキンの若かりし青年期を堪能できるのが見どころ。またニコラス・ケイジとの共演、『セブン』のアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーによるスリリングな脚本にも注目だ。『ヴィレッジ』は『シックス・センス』のM・ナイト・シャマランが贈る極上のスリラー&ミステリー。ホアキンは寡黙で誠実な村の若者・ルシアスを見事に演じきっている。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でもう一つ話題になっているのが、世界的アーティストであるレディー・ガガの参加だ。幼少期の夢が俳優であった彼女は、2015年ころからドラマなどに出演し、2018年に『アリー/ スター誕生』で映画初主演を果たす。バーのウェイトレスから瞬く間にスターへの階段を駆け上がっていく歌姫を熱演したレディー・ガガは、批評家から高い評価を得て、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、全米映画俳優組合賞の主演女優賞にノミネート。クリティクス・チョイス・アワードと米国映画批評会議賞では主演女優賞を受賞するなど、すでに世界でもっとも著名なアーティストの一人であった彼女が、俳優業でも成功を収めた瞬間となった。ちなみに、この映画の製作に名を連ねるトッド・フィリップスこそが「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」の監督だ。『アリー~』での高い演技力と歌唱力が、ジョーカーのパートナー役を演じることにつながった。シンガーソングライターとしての彼女しか知らない人は、ぜひこの映画で俳優としての魅力も感じてほしい。
最後に、狂気に染まりきった“これぞジョーカー”という映画も紹介しておこう。それこそが『ダークナイト』で、アカデミー賞助演男優賞を受賞したヒース・レジャーが演じる「史上最恐」とも言えるジョーカーが楽しめる。この作品ではあくまでバットマンの宿敵としての登場なだけに、そのスーパーヴィランっぷりを遺憾なく発揮。今回の「ムービープラス」特集で、ホアキン・フェニックス演じるジョーカーと比べてみるのもまた味わい深いだろう。ちなみに「ムービープラス」では、クリストファー・ノーラン監督によるダークナイト三部作も放送される。「バットマン ビギンズ」「ダークナイト」「ダークナイト ライジング」は、バットマンの世界観を知るには最高の教材とも言えるだろう。これを機に、DCコミックスの奥深き世界へと足を踏み入れてみてはいかがだろうか?
◆文=岡本大介
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