【連載】ステージ上での脱退騒動から5年、異色のアイドルが再始動/onodela「アナーキーアイドル」#1 ステージに乱入してアイドルを脱退した話(前編)

2024/10/23 19:00 配信

アイドル 連載


同じグループでデビューする予定の練習生たちと合流した時点から、変な空気が続いていた。事務所への行き帰りはいつも集団行動の3人とは反対に、いつも一人で往復していた。というか、私は事務所と大学の最寄駅が同じで、いつも大学から事務所に直行していたが、住まいも学校もバラバラだった他の3人はどこで集合していたのだろう。そんなことも聞きたかったが、聞ける機会は一度もなかった。中学を卒業したばかりの子や高校2年生の子がいて、はじめは3人組としてデビューする予定だったのに間に割り入って、当初あった計画を壊しに来たと思われた人間なんて敵意が湧いてもおかしくない年頃だろう。

気まずい雰囲気の中で数ヶ月の準備期間が経っていた。もともと同時にデビューしたかったけど、「入ってきたのが遅かったから」という理由でほかのメンバーから反対され、自分だけデビューが数ヶ月後の6月末に延期していた。

6月になり、やっとステージに上がることが視野に入ってきた頃、4人用の新しい歌割りのプリントが渡された時、落ちサビ(最後のサビの前に挿入される、BGMを極端に落としてボーカルを目立たせるサビ)が私のパートになっていた。その時のメンバーの顔は、地獄のように険しい表情だった記憶がある。

デビュー目前のある日、「私、水色担当になりたいです!」と自ら申し出た。なぜなら、アイドルファンとして私が推す「推しメン」全員が水色担当だったからだ。また、この涼しく、少し憂鬱なイメージが自分に合っていると思った。すると、今まで担当カラーがなかったグループ内で、”水色を担当したい”という嵐が巻き起こった。みんな、純粋に水色を担当したかっただけではないだろう。結局、所属している事務所の社長の裁量で、幸いにもその大好きなカラーを担当することができたが、これを機にさらにメンバーとの関係が悪化した。

〈後編へ続く〉

【写真】デビュー秒読み段階、これからステージで活躍しようと意気込んでいた頃本人提供写真