そしてゾンビなどの背景にもある死後の世界。36年ぶりの続編の劇場公開で話題になっているティム・バートン監督による「ビートルジュース」(1988年)は、事故死して幽霊になってしまった若夫婦が、自分たちが暮らした家に引っ越してきた一家を追い出すため人間を退治する仕事をするビートルジュース(マイケル・キートン)に依頼したことから始まるドタバタ劇。ブラックユーモアたっぷりのダークな世界、ゴシック風味のある作り込まれた美術、顔を白塗りにして目の周りを黒くした死者たちの特殊メイクに加え、CGではなく物体を少しずつ動かしてコマ撮り撮影していくストップモーションや粘土を用いたクレイメーションによる特殊効果も見事で、バートン監督らしいダークかつシュールさが詰まっている傑作。続編「ビートルジュース ビートルジュース」で知った人にこそ、この機会に見てもらいたいところ。
同じく、“バートン監督×死後の世界”を描いたストップモーション・アニメが「ティム・バートンのコープスブライド」(2005年)。死後の世界の物語なのだが、生者の世界よりも死後の世界のほうが自由で生き生きとした、カラフルポップな世界として描かれている。気弱な若者ヴィクターをデップ、死体の花嫁エミリー(コープスブライド)をヘレナ・ボナム=カーターという “バートン組”の俳優が声を担当しているほか、エミリー・ワトソンがヴィクターと結婚する予定の女性ヴィクトリアの声を務める。バートン監督らしい世界観を堪能できる「奇妙な三角関係」が、実に興味深い。
最後は、殺人鬼が登場するものを。「ザ・スイッチ」(2020年)は、凶暴な殺人鬼と女子高校生が入れ替わってしまうストーリー。怖いのに、ヴィンス・ヴォーンが体現する中身がJKになったおじさん殺人鬼がなんともかわいい。「タッカーとデイル 史上最悪にツイてないやつら」(2011年)は、親友同士の中年男2人組が殺人鬼に勘違いされてパニックが起きてしまう展開で、不運が重なっていくのが怖くもあり、おかしくもあり。ダークさや悲鳴が響き渡る中に起きる笑い。怖さと笑いは遠いようで近いものなのかもしれない。
なお、ムービープラスでは「特集:ハロウィンナイト」と題し、10月27日(日)から5日間、ハロウィンにぴったりの作品が一挙放送される。上記で紹介した「イーストウィックの魔女たち」「ダーク・シャドウ」「ビートルジュース」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」「マギー」「ティム・バートンのコープスブライド」のほか、ありそうでなかったゾンビ狩りテーマパークを舞台にした「ゾンビ・サファリパーク」(2015年)もラインアップ。いつでもどこでもゾンビ狩り放題、という新しい体験を売りにした孤島の高級リゾート施設で巻き起こるパニックホラーで、タイトル的にはややおふざけ系なのかと思いきや、そこはスティーヴ・バーカー監督らしく王道のゾンビものの良さを踏襲しつつ、移民問題など社会派の一面ものぞかせる深い作品だ。
十人十色のコスプレで楽しむハロウィンだけに、いろんなジャンルのホラー映画で盛り上がってみては。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
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