悪役もハマり役ではあるのだが、今では変幻自在、カメレオン俳優とも称される山田。福田雄一監督とタッグを組んだドラマ「勇者ヨシヒコ」(2011年ほか、テレビ東京系)シリーズなどのコメディーに出たかと思えば、ノンフィクション小説を原作にした社会派映画「凶悪」(2013年)でのジャーナリスト役、“放送禁止のパイオニア”村西とおる監督を演じた「全裸監督」(2019年ほか、Netflix)シリーズ、重松清の小説を映画化した「ステップ」(2020年)での苦労しながら一人娘を育てるシングルファーザー、大河ドラマ「どうする家康」(2023年)などの時代劇と、本当にくるくると違うキャラクターを見せて、それぞれ主役でも脇役でも鮮烈な印象を放っている。
その演技の幅に脱帽するばかりだが、2024年もうならされた作品がある。ディズニープラスのスターで独占配信されたドラマ「七夕の国」(全10話)だ。同ドラマは、映像化困難といわれていた漫画家・岩明均による同名コミックを実写化した意欲作。超能力を持つ主人公を軸に不気味さ漂う超常ミステリーで、山田は物語の鍵を握る役に見事に応えた。とある町に代々伝わって来た物体や肉体をエグる球体を操る能力者のトップに位置する神官だった男・丸神頼之。はじめは顔を布で覆った状態で登場し、声色、せりふのトーンで怪しさを醸し出した。そして布を外しても、妖怪のような“異形”の顔で山田自身の表情は分からない。
演技では目や口元の動きといった表情で感情を読み取ってもらうことも大切なポイントになると思われるが、それが出せない役。だが、山田は役が決まったときに「劇中で自分の顔が見えないことは、まったく問題ではない」と言ったという。これまでのキャリアで培った確かな自信と力が、声や体の動きだけで見せるという異形の役を作り上げた。
10月13日に放送された「ボクらの時代」(フジテレビ系)で、11月1日(金)公開の映画「十一人の賊軍」で共演した仲野太賀、岡山天音と対談した山田。趣味がカメラという仲野と、絵を描くのが好きだという岡山の話から、「何か新しいことを挑戦するっていう時に、やっぱり、特にいまの時代はネット、SNSがあるから批判の声を恐れて行動できないことが多いんだけども、でも、初めてやることってへたくそで当たり前だと。だから、とりあえずやってみたらいいじゃん」という心構えにより「次の段階にいける」と語っていた。
新しいことに挑戦し続けたからこそ、今の活躍があるのかもしれない。近年は、映画監督やプロデューサーといった“裏方”に回ることもあり、日本のエンタメ界をさまざまな形で盛り上げているが、やはり異形の役も説得力を持たせることができる演技はいつまでも堪能したいものである。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
※記事内、高橋ヒロシの「高」はハシゴダカが正式表記
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