<透明なわたしたち>松本優作監督が描く20代の“不透明な世界” 演出のこだわり、福原遥らキャストに託した思いを語る

2024/10/19 13:30 配信

ドラマ コラム インタビュー

犯人の人物像が見えなくなり、碧(福原)は富山へ 「透明なわたしたち」第5話 (C)AbemaTV,Inc.

さらに松本監督は、富山という土地にも作品とリンクするところがあったという。「富山って、曇りの日と晴れの日で全く表情が違うんです。どんよりとした曇り空は感情とリンクする部分があるというか。そういう風に景色を活かせる土地柄ってなかなかないと思います。それに、曇りだと立山連峰が全く見えなくて晴れだと見えるとか、そういった多面性が“物事をいろいろな角度から見ることで本質がわかってくる”という作品のテーマ性ともリンクした場所だなという思いで映像を作っていました」

過去と向き合う4話:「伊藤健太郎さんは存在感が本当にすごい」

どこかあたたかみのある高校時代の映像 「透明なわたしたち」第3話 (C)AbemaTV,Inc.


渋谷の事件の犯人を知った碧は、続く第4話で“犯人の同級生”の立場で記事を書き、評価を受ける。碧はさらなる記事を書くため、同級生たちに会い、その中で自暴自棄になった友人の一人から、部室放火の犯人は自分だと告白される。碧は当時、別の同級生を犯人だとする学校新聞を制作していた――。

群像劇である本作では、碧だけでなく彼女の5人の同級生たちがそれぞれの“居場所のなさ”に悩む過程も描かれている。

高木洋介(倉悠貴)にも、思わぬ大問題が巻き起こり追い詰められていた 「透明なわたしたち」第4話 (C)AbemaTV,Inc.


小野花梨は、東京で夢破れ地元に戻って結婚した一児の母・齋藤風花を演じる。松本監督は「小野さんは芝居が本当に素晴らしい。彼女とは5年前ぐらいにもご一緒したんですが、またレベルアップした小野さんを見ることができてすごくうれしかったですし、風花という役に自分の感情を近づける作業ってそうとう苦しかったと思うんですが、すごく頑張ってくださった」と絶大な信頼を寄せる。

女優志望だが恵比寿のクラブで働くホステス・桜井梨沙を演じるのは、武田玲奈。碧は梨沙との対話の中で、自分の中にある意思に気づいていく。松本監督は「武田さんは淡々と粛々と自分のやるべきお芝居に集中するというプロフェッショナルさを感じましたね」と語る。

順風満帆な渋谷のスタートアップ企業のCEO・高木洋介(倉悠貴)と、渋谷の片隅で闇バイトに手を染める男・喜多野雄太(伊藤健太郎)は、一見真逆の境遇。だが、それぞれ割り切れない思いを抱えて生きてきた。「伊藤健太郎さんは存在感が本当にすごい。そして、こちらのやりたいことを察知して具現化してくださる方。倉さんには、ほかの俳優にない唯一無二さがあると感じました」(松本監督)

そして、影の薄い同級生・尾関健(林裕太)がドラマのキーパーソンとして徐々に存在感を増していく。「実は尾関という役が裏の主人公ぐらい大切な役だったんですが、オーディションで林さんにお会いした時に、僕たちスタッフ満場一致で決まりました。撮影終わりの新幹線の中で、役をどうやったら掘り下げられるかをすごく話し合ったり…。難しい役どころを本当にしっかりやってくださったなと思いますね」。23歳で同級生役のキャスト陣の中では最年少の林が、重要なキャラクターを演じきった。