米ソ冷戦時代のスパイ「0011ナポレオン・ソロ」は、もうひとつの「007」? 超傑作ドラマ劇場版一挙放送

2024/11/01 18:00 配信

ドラマ 映画 コラム

「0011ナポレオン・ソロ/地獄へ道づれ」(C)1966 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

アメリカで1964~68年まで放送された人気スパイ・アクション「0011ナポレオン・ソロ」シリーズ(日本では1965~70年に放送)。映画として再構成された劇場版が第8作まで作られ、特に日本では「ビートルズか、ナポレオン・ソロか」と言われるほどの人気を博した。2015年のガイ・リッチー監督のリメイク作『コードネーム U.N.C.L.E.』で知った方も多いだろう。シリアスとコメディのバランス、バディものとしての痛快さ、そしてもう1つの名作スパイシリーズ「007」との関係まで、語るに尽きない同作を、CS映画専門チャンネル「ムービープラス」で一挙放送する今振り返る。

米ソ冷戦期、スパイ映画ブームのさなかに産声を上げた名作


各国による水面下の情報戦が激化し、うわさ話から根拠を持った事実まで幅広く市民の話題になった米ソ冷戦期のまっただなか。そうした時代背景にあって、人知れぬところで活躍するスマートなスパイの物語は多くの人々の関心を集めた。いわゆる1960年代、スパイ映画の黄金期だ。

なかでも起爆剤となったのが1962年に第1作を発表した「007」シリーズ。イアン・フレミングによる小説を原作とした映画で、ハードボイルド、銃撃戦、美女、派手な爆発、予想を裏切るフェイクの連続といったスパイ映画の“旨み”を濃縮した作品として、爆発的なヒットを遂げた。

「007」に触発されて次々に名作スパイ映画が生み出された1960年代、当時生まれた金字塔ともいえる作品の1つが「0011ナポレオン・ソロ」シリーズだ。ドラマとしてアメリカ放送話数は105話、日本でも89話が放送され、シリーズは合計4シーズンという非常に長い間愛され続ける。

ユニークなのは、同作の骨子には「007」の生みの親イアン・フレミングも携わっているという点。いわば「ナポレオン・ソロ」と「007」は兄弟分的存在と言っても過言ではない。ハードボイルド路線やあらゆる困難を乗り越えるスーパーエージェントというポイントを取っても、両作に流れる同じ系統の血が感じられるはずだ。

両作の大きな違いは、主役にある。ジェームズ・ボンドという稀代の主役を持つ「007」と違い、「ナポレオン・ソロ」は頼れる相棒と支え合うバディもの。そしてその相棒こそが、同作を傑作と呼ばれるまでに押し上げた要因でもある。

「0011ナポレオン・ソロ」はその名の通り、認識番号“0011”ナポレオン・ソロ(ロバート・ヴォーン)が主人公。色男で頭脳明晰、非常に有能な人物だが“女に弱い”という欠点を持っていた。そんな相棒をフォローするのが、認識番号“002”イリヤ・クリヤキン(デヴィッド・マッカラム)。硬派でクールなイリヤは、ソロが女で失敗しそうになるたびにその手綱を引いてコントロールするという役どころだ。

イリヤの人気ぶりは、番組構成の変遷からもうかがい知れる。「0011ナポレオン・ソロ」は原題を「The Man from U.N.C.L.E.」というのだが、“The Man”という単数形を見てわかるとおり同作は当初ナポレオン・ソロという主人公1人で描く予定だった。イリヤはあくまで脇役で、相棒という枠組みではなかったのだ。しかし作中でのイリヤとソロの軽妙な会話や彼の活躍が注目を集め、次第に主役を超えるほどの人気を獲得していく。結果、ナポレオン・ソロとイリヤのコンビが活躍するシリーズへと移りかわっていったのだった。

ロマンあふれる秘密のスパイグッズ!


同作の物語は、2人が所属している国際的な諜報機関“United Network Command for Law and Enforcement”…通称“U.N.C.L.E.(アンクル)”の活動がメインのテーマ。闇の組織“T.H.R.U.S.H.(スラッシュ)”の企みを防ぐため、東奔西走するソロとイリヤの活躍を描いている。

ソロ&イリヤという魅力的なキャラクターが注目を集めがちな同作だが、スパイ映画の大事な要素も忘れてはいけない。たとえば“U.N.C.L.E.”では専用衛星回線を用いた秘密通信をおこなうため、シガレットケース型やボールペン型といった小型無線機を使う。スパイ映画ならではといえる秘密ギアの数々は、男心をくすぐるばかり。

同作の成功を裏付けるように、ノベライズやボードゲーム、ランチボックスやアクション・フィギュアなど多くのグッズが展開。ほかにもオリジナルの長編小説が多数の作家によって書かれており、そのほとんどが日本でも邦訳されているものの、現在はすべて絶版となっていてマニアの間ではコレクター・アイテムとなっている。

日本最大級のCS映画専門チャンネル「ムービープラス」にて11月5日(火)からドラマシリーズを再編集した映画8作品を一挙放送する。1960年代の“スパイ映画黄金期”をけん引した「0011ナポレオン・ソロ」。魅力的な主人公たちの軽妙な会話に聞きほれるもよし、「007」との共通点や相違点を探すもよし…歴史ある傑作シリーズをそれぞれの観点で楽しんでみてほしい。