つい最近、韓国の人気アイドルが日本の1980年代アイドルの名曲をカバーして話題になったことは記憶に新しい。80年代ごろの日本といえば、老いも若きもテレビに釘づけとなったアイドル全盛期。社会現象を巻き起こした大人気アイドルたちは、やがて活躍の場を銀幕にまで広げていく。令和の世においても国民的人気を誇る80sアイドルたち。彼女たちが出演した映画のなかでも、特に貴重な作品をピックアップしていく。
80年代アイドルを代表する1人、森高千里。ミニスカートから覗くまぶしい美脚がトレードマークで、一世を風靡した伝説のアイドルだ。1986年の「ポカリスエットムービーキャラバンイメージガールコンテスト」で1万2000人のなかから選ばれた森高は、その翌年に映画「あいつに恋して」への出演を果たす。
舞台は北海道・日高。サラブレットを生産する牧場主(植木等)と道産馬を守り育てる牧場主(高品格)は、犬猿の仲だった。そんな2人にはそれぞれ正太郎(風見しんご)と千里(森高千里)という孫がいる。やがて道産馬の優秀さを全国に知らせるために、日本縦断に出発することになった正太郎。正太郎と千里は惹かれ合っていたのだが…というところから始まるストーリーだ。
同作の見どころは風見のコミカルな演技や、馬とともに日本縦断という実話をベースにした物語にある。風見といえば当時アイドルもかくやという人気者で、同作は映画出演2作目。そこにヒロイン役として森高が並び、世間からの注目を大きく集めた。
「あいつに恋して」というタイトル通り、同作は原作と比して風見と森高が演じる正太郎と千里の恋に重点を置いている。“時の人”である風見の勢いに引っ張られ、森高も俳優として大活躍を…と期待されていたのだが、思わぬ事態が森高を襲う 。
初出演となる映画の主題歌を任されたことで、同時に歌手デビューも果たしていた森高。徐々に歌手活動の幅を広げていくなかで、ツアーのリハーサル中に体調不良で入院を余儀なくされる。後年には森高が作詞した楽曲「ザ・ストレス」の制作に関するエピソードとして明かしていたが、多忙な芸能生活によるストレスも原因だったという。そしてこうした体調の変化にともない、森高は活動の方向性を歌に絞っていく。
その後の森高の活動はご存じの通りだ。まぶしい美脚をトレードマークにした「17才」やインパクト抜群の「非実力派宣言」に続き、「渡良瀬橋」「ララ サンシャイン」「私がオバさんになっても」など誰もが知る名曲を世に放った森高。だがアイドル歌手としての知名度に反して、映画への出演は「あいつに恋して」と“本人役”で友情出演を果たした「シャ乱Qの演歌の花道」以外にはないようす。
そうした背景を知ると、「あいつに恋して」の特殊性がわかるというもの。そして貴重な80sアイドル映画作品というと、もう1つ思い浮かぶタイトルがある。いまは亡き本田美奈子.が唯一出演した映画「パッセンジャー 過ぎ去りし日々」だ。
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