コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、夢を見つけたものの30歳という年齢を理由に諦めていた主人公・ミヤが、“ある事件”をきっかけに歩み出す『20年前のキミへ』をピックアップ。
COMICOで『パステル家族』を連載されていた、作者のセイさんが10月19日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、7877件を超える「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、作者・セイさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
主人公・ミヤは同窓会に来ていた。同じクラスのみんなの幸せそうな顔を見て、30にもなって何も成せていない自分を実感していた。
アコタは医者に、リセは女優に、モッケは人気の動画配信者に…。
頑張ったやつらはちゃんと“勝ち組”になっていた。ミヤもやっとやりたいことは見つけたものの、もう遅かった。夢を見つけるのがせめてあと10年早ければ…そう思わざる思えなかった。
リセはそんな辛気臭いミヤを見て「30なんてまだまだ若造!」と励ますものの、ミヤはなかなか前向きになれない。リセは「きっと10年後にも同じ事言ってる!だったら今、50年後から戻ってきたと思って未来をやり直せばいい」と声をかける。続いて、アコタとモッケが「オレ達が夢を追えたのはミヤのおかげなんだぜ!」と伝えるも、聞く耳を持たなかった。
自分だけ出遅れた、そう思ってどんどんお酒を飲み始めるミヤ。ミヤの意識は遠のき、目を覚ますと病院だった。
ミヤはすぐに異変に気付く。目の前にいるアコタが老け込んでいる。目を覚まして駆けつけてきたリセも同じだ。混乱していると、アコタに「同窓会の夜に急性アルコール中毒で倒れた後、20年眠りっぱなしだった」という衝撃の事実を告げられた。
一晩で20年分のチャンスを棒に振ってしまった虚しさに涙が溢れるミヤ。「50歳なんてどうしようもない…」そう呟くミヤに、モッケは「ミヤはいつも年齢とか理由をつけてなにもしない」と喝を入れられた。
自分はみんなみたいに子供の頃からやりたい事を見つけられたわけでも、努力できる舞台があったわけでもなく、スタートからハンデを背負ってきた。この気持ちが分かるわけないと塞ぎこんでしまう。するとアコタが、「世の中には努力したくでもできない人もいる。なぜ恵まれた環境を活かさないのか」と訴えた。
アコタのような優等生には自分みたいな落ちこぼれの気持ちはわからない。そう言い切るミヤにリセは「じゃあもしも20年前の夜に戻れたら、ちゃんと頑張るのか」と問う。ミヤは「そりゃがんばる。30なんてまだまだ若造じゃないか。20年前に戻れたら、死ぬ気で努力する」と宣言した。
その言葉を聞いて嬉しそうな表情をするモッケ、アコタ、リセ。すると、リセからさらに衝撃の事実を伝えられる。ミヤの夢は叶うだろうか――。
理由をつけて諦めてきた夢に、まさかなきっかけで挑戦することになったミヤの物語に「ギャン泣き」「笑い泣いた」「いい話すぎる」「良作に出会ってしまった」「ありがとう」と感動の声が続々と届いている。「頑張ろうと思えた」とミヤに続いて自身の夢を見出し、抱負を語る読者もおり、話題となっている。セイさんのこれまでの作品を含めて「この方の作品はなんか刺さる」「セイさんの描く作品本当に大好き」「心がほっこりする」と改めて反響があった。
――『20年前のキミへ』の創作のきっかけや理由をお教えください。
10年以上にわたり連載していた商業作品『パステル家族』が無事に終了し、久しぶりにまとまった自由な時間を得ることができました。そこで以前から挑戦してみたかったことに取り組むため、まずはこれまでネタ帳に温めてきたアイデアを、個人の発信として一つずつ形にしていく事にしました。
読切の短編作としてキチンと描いたのは当作品が第一弾でしたが、おかげさまで予想を超える大きな反響を頂き、大変驚きつつも嬉しく思っております。今後も短編や長編の作品を様々な形で発表していければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
――セイさんが『20年前のキミへ』の中で特に見てほしいシーンやお気に入りのセリフはございますか。
一番見てほしいシーン、セリフは、ミヤが最後に心で叫んだあの言葉です。漫画家に限らず、人が何かを成し遂げるうえで最も大切なものは「センス」や「才能」ではなく「行動量」であると僕は考えており、それがこの作品のテーマでもあります。
また作中でリセが語っていたように、たとえ50歳になっても60歳になっても、行動することで人生は変えていけます。そしてそのためのモチベーションを与えてくれる仲間の存在は、大きな宝物であると感じております。
ちなみに前作『パステル家族』では、90歳で新たな成長を遂げ、大きな一歩を踏み出したおじいさんのエピソードも描かせていただきました。その際には、多くの方から反響をいただいたことが今でも心に残っております。
自分自身も、死ぬまで日々成長を続ける人間でありたいと願っております。
――今作では、ミヤのほかにリセ、アコタ、モッケがメインで登場しますが、それぞれのキャラクター設定やデザインのこだわりがございましたらお教えください。
今回は、あえて設定やデザインにこだわりを持たずに制作いたしました。
というのも僕の経験上、僕が生み出すキャラクターはしっかり時間をかけて練り上げるほど失敗の確率が上がるという変わった特性があるからです。
これはアマチュア時代からずっと一貫していて、10年以上プロとして連載していた中でも、計算抜きでパッと生み出したキャラクターの方が多くの読者の皆様に親しんでいただけたように感じています。たとえば一生懸命考えた美形キャラよりも、パンチパーマのモブおばさんにコアな人気が出るなんてこともしばしばです。
理由はおそらく、直感やひらめきから生まれたキャラクターは自然に活き活きと動き出す一方、計算から生まれたキャラクターはどうしても計算の枠内でしか動かないことが原因かと思います。
なのでミヤとモッケのデザインはほぼ0秒で考えましたし、リセやアコタも2分ぐらいで考えて一発OKとしました。キャラクターの性格についても特別な設定は設けず、それぞれが自由に「話したいように話す」ことで、物語に自然と馴染んでくれたように感じています。
このように「考えすぎず、こだわりすぎないこと」が自分なりのキャラクター作りのこだわりとなっています。
――読者の方から「セイさんの漫画はいつもあたたかくて好き」というコメントが多く見られました。漫画を創作する際に心掛けていることがございましたらお教えください。
大きく2つあります。
1つめは、見ていて辛い気持ちになるシーンを極力作らない事です。
僕の作品は読者さんから「嫌なキャラクターが出ない」と言ってもらえる事が多いのですが、これは僕自身のこだわりに基づくものです。
話作りの手法として、作品にカタルシスを持たせるためには、思わず目を背けたくなるようなシーンを加えるのが手っ取り早く効果的であるとされています。しかしそういったシーンを排除したうえで作品のクライマックスを盛り上げることができれば、それが作家として大きな強みになると感じ、このようにして自分の作風を確立いたしました。
2つめは、結末の爽快感を重視する点です。
読者の皆様が作品を読み終えた瞬間、思わず「あぁ良かったなあ…」と暖かい気持ちを抱いていただけるような、そんな心地よい作品をお届けすることを大切に考えております。
――今後の展望や目標をお教えください。
漫画家として活動を始めて10年以上が経ちましたが、今年は初めて商業連載が途切れる年となりました。これを一つの好機と捉え、これまでに自分に不足していたことを一から学び直しつつ、これまで書き溜めてきたアイデアを個人で積極的に発表していこうと考えています。
現在は、インディーズ連載の場も豊富にあり、本当に恵まれた時代であると感じています。今後1~2年は、このようなインディーズ活動を中心に据え、自己研鑽の期間として充実させていければと思っております。
――最後に作品を楽しみにしている読者の方やフォロワーの皆さんへメッセージをお願いいたします。
挑戦をやめない限り、人はいつまでも成長し続けると信じています。
これからも短編・長編の新作を次々と発表していく予定ですので、引き続き応援いただけますと幸いです。
この作品をお読みくださった皆様の人生が、今よりもっと素晴らしいものになりますように!
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)