クライマックスに向けて大きく動き出した放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK総合ほか)。そのうねりに巻き込まれていく徳川家康(阿部サダヲ)の長男・信康を平埜生成が演じている。役柄によって、全く異なる雰囲気を作り出す彼に初出演となった大河ドラマの話題を中心にインタビューを敢行した。
――平埜さんにとって、初の大河ドラマ出演ですが、今の心境はいかがですか?
「凄いなあと思っています」
――凄いというのは?
「撮影がハリウッド・スタイルに近いという印象があって。本番直前まで現場に役者は入らないんですよ。本番前のテストもないし、何回も撮り直すこともない。ほぼ一発OKの撮影です」
――演じている徳川信康については知っていましたか?
「知らなかったので、自分で調べました。温厚で立派な武将だったといわれたり、荒くれ者だったという説もあったり、多面的な役柄なので作り込めると思いましたね。だから、“こんないい役をありがとうございます”とこの機会を与えていただいたことに感謝しています」
――今回の信康は、温厚な人のバージョンですよね?
「僕とディレクター陣の共通意見は、“プリンス”です」
――確かに、その通りですが(笑)。
「でも、僕自身にはプリンス気質はないので、頑張って演じています。それに信康には母方の貴族、公家の血も流れていますが、父方の三河の民という血も引き継いでいるんですよね。その両方を持っている人はどんな人なのかも考えています」
――さらに、信康は武将としても素晴らしい資質を持っていたといわれます。それに気付くのが織田信長。そのシーンもしっかり描かれますよね?
「最初はそのシーンで温厚な信康が決定的なセリフだけ真剣に言うのはどうだろうとか、信長に一番響く方法を僕は考えていたんです。でも、それはディレクターさんが考えることだと思い直して」
――どうして思い直したんですか?
「年齢的なことも含めて、自分なりにしっかりと考えたうえで委ねようと思ったんです。だから、ディレクターさんの指示に応える形で、若々しさ故の危うさが出るように、なりふり構わずド直球で演じました」
――その信康にプリンスらしさは残っているんですか?
「“信康はプリンス”という軸は外していないです。その上で、信長に問われたことをド直球で返す。僕の中では(市川)海老蔵さんとのシンプルな戦いになったなと思っています」
――菅田将暉さん演じる井伊直政(当時は井伊万千代)と碁盤を挟んで対峙するシーンもありますが。
「信康が万千代さんと初対面するシーンだったので、戦いはなかったですね。信康は万千代さんにどんな印象を持つだろうかということだけを考えていました」
――菅田さんとの共演は舞台「ロミオとジュリエット」(2014年)以来ですね?
「2年ぶりに会いましたね。“売れたなあ”と言っておきました(笑)」
――平埜さん自身も、最近は映像作品に出演する機会が増えています。2017年だけでも「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」「亜人」「斉木楠雄のΨ難」に出演しています。
「言われてみるとそのラインナップは凄いですね(笑)」
――「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」はスペインロケだったんですよね?
「僕の撮影は2日だけでしたけど、三池(崇史監督)さんはアクションに厳しいので、“違う。もう1回”と言われながらじっくり撮り上げました」
――撮影以外の日は何をしていたんですか?
「酒浸りの日々でした(笑)」
――(笑)本当ですか?
「共演者の皆さんとよくご飯を食べていたのは本当ですが(笑)、実は撮影の見学にも行きました。映像の(山田)孝之さんの芝居を生で見たいと思ったので。なかなか見られないじゃないですか。カットがかかってから、次の撮影が始まるまでどういうふうに過ごしているのかを見たかったんですよね」
――「亜人」では絶対に死なない人間として激しいアクションシーンがありましたが。
「『亜人』のアクションは、僕、城田(優)さん、山田(裕貴)くんの関係性を大事にしていました。細かな動きは僕らの自由だったので。その場で話しながら決めていましたね」
――山田さんは同年代ですよね? 現場ではすぐに打ち解けたんですか?
「山田くんはよくしゃべる人です。現場で僕は自分から話しかけないほうなので、結構仲良くなったほうだと思います。“友達になれるかも”と思いましたから」
――そして「斉木楠雄のΨ難」ですが、ほかの2作とは異なるギャグ映画です。
「僕、福田(雄一/監督)さん作品に出演させていただくことに独特の怖さを感じるんです」
――そうなんですか?
「“面白いことを提案しないと!”というプレッシャーがあるので。役で笑わせるのは好きですけど、役で“笑わせる芝居”は本当に高度で難しいです。だから、今回の『斉木楠雄のΨ難』では笑いのない不良の役で良かったなと(笑)」
――これから出演作が増えるに従って、その難しさも乗り越えていくんじゃないですか?
「簡単ではないですけど、そのためにも今は精一杯、信康という役を演じようと思っています」
取材・文=あらいかわこうじ
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