【テレビの開拓者たち / 岡田惠和】「いつか『ひよっこ』の続きを書いてみたいです」

2017/09/26 11:30 配信

芸能一般

“普通の人”を魅力的に描くことが脚本家としての自分の役割なのかなと


「ヒロインのみね子は、演じるのが有村架純さんだから成立したキャラクターだと思います」(岡田惠和氏)©NHK


──今作では、有村架純さん演じるヒロインのみね子に共感する声もたくさん集まっています。従来の朝ドラのヒロインは、夢に向かって生きる女性や、大きな目標を達成する女性であることが多いのですが、みね子は、どこか現代の若い女の子にも通じるような、等身大のキャラクターでした。

「確かに、朝ドラのヒロインとしては少し珍しいキャラクターかもしれないけど、人物像としては珍しくも何ともない、普通の女の子なんですよね。でも、自分が愛せる人、感情移入できる人ってどんなタイプだろう、と考えると、僕の場合はやっぱり、みね子みたいな普通の人が思い浮かぶんですよ。前向きにリーダーシップを取るタイプでもなく、臆さず無謀な行動を取るような破天荒な人物でもない。他愛ない日常の中で、つらい思いを抱えたり、喜びを感じたりしながら生きている、みね子のような人が、僕はやっぱり一番好きだし、そういう人の話を書きたいんです。ただ『ひよっこ』に関しては、ヒロインを演じるのが有村さんだから成立したんだと思っていて。ストーリーの流れを他の登場人物が持っていっても埋没しないだけの力のある女優さんなので、僕としては安心して、書きたいように書くことができました」

──“普通の人を描く”というのは岡田さんの作品に通底しているテーマでもありますよね。

「ええ、そうですね。さらに言うならば、それは脚本家としての自分の役割なのかもしれない、と思っています。もちろん、普通であれば何でもいいわけじゃなく、その普通の人たちをどう面白く、魅力的に描くのか、それが自分に課せられた役割なのかなと」

──そういう自覚を持たれるようになったのは、何かきっかけが?

「僕が脚本家としてデビューしたころは、まず“月9”のようなトレンディードラマがメインストリームにあって、また、野島伸司さんの作品のようなエッジの利いたドラマも人気を博していた時代で。そんな中、僕が初めて原作付きではなくオリジナルで書いた連続ドラマが『若者のすべて』(1994年フジ系)という作品だったんですけど、これは川崎の町に住む普通の若者たちの話で、書きながら『これからも僕はこういう人たちを描いていくんだろうな』という感覚が強くあって。もしかしたら、こんなふうに普通の人を描くことが、自分の作家的な立ち位置なのかなと。そしてまた一方で、『南くんの恋人』(1994年テレビ朝日系)という作品で、ファンタジーの世界を連続ドラマとして落とし込むという描き方を経験したときに、僕は強烈なフィクションの中でこそ自分らしさを発揮できるんじゃないか、とも思ったんです。この2作をほぼ同じ時期に書いているのが、ある種運命的なんですけど、普通の人を描くものと、ファンタジー性の高いもの、その2つが自分の2本柱だと考えるようになったのはそのころからですね」

関連人物