本作にはさまざまなキャラクターが登場するが、その誰もが “心の揺らぎ”を胸に秘めている。三島はクラスから浮いていていじめられていても、うちでこっそりと母親の口紅を塗ったり服を着たりすることを心のよりどころとしている。男性の先生・江戸川のことが好きだが、だからといって女性になりたいかと言われれば、疑問が浮かぶ。
三島のイジメグループのリーダーである桐野は、三島が落とした口紅を隠し持っていて、自らの唇に塗ろうとしているところを三島に見つかってしまう。それをきっかけに、密かに三島と交流を持ち、2人きりでいる屋上では自分のことを「あたし」と言って心を開いていく。桐野も江戸川先生のことが好きだが、かつて女の子と付き合って行為に至ったときに吐いてしまった苦い経験を持っている。
桐野と同じバスケ部員で三島をいじめる夢野は、いじめながらもやけに三島のことを気にしてばかりで、まるで好きな子に対してキツく当たってしまう小学生のよう。それでいて三島のピンチには血相を変えて駆けつけ、その後に三島に危険がないかと心配する優しさも垣間見せる。彼が三島に惹かれているのは誰が見ても明らかだが、夢野は葛藤を抱えていた。
また、教師の柳田は自分を欺いて生きることに限界を感じており、行き詰まった彼は自暴自棄になっていく。
このように四者四様の生き様と悩みがあり、感情移入して見入ってしまうが、必ずしもそれぞれが自分自身の境遇と重なるわけではない。しかし、自分が何者であるか自分自身でも掴めずゆらぎがあることを不安に思う気持ち、大勢の輪からはみ出してしまう疎外感や焦燥感は誰しも経験があるのではないだろうか。そんな多くの方が身につまされる思いがこのドラマには詰まっている。
さらに辛く重いトーンばかりではなく、とぼけた笑いも交えて描かれる。シリアスな場面の直後にはマヌケなことが起こってしまうというのは、人生そのものという気がしてならない。少年たちの心のゆらぎを普遍性を持ったリアルな感触で描き、見るものの共感を呼ぶ本ドラマ、ぜひチェックして欲しい。
■構成・文=牧島史佳
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