7月24日に劇場公開され、2024年に国内で公開された洋画の実写作品でNo.1の興行収入となるなど日本でも大ヒットを記録した映画「デッドプール&ウルヴァリン」が、11月12日に配信された。デッドプールとウルヴァリンがタッグを組んだ“R指定”で、劇場公開時から「イカれてて最高」「今回もぶっ飛んでる!」とマーベルファンを中心に歓喜していた小ネタも豊富な“マーベル屈指の問題作”をあたためてレビューし、小ネタも交えて紹介する。(以下、ネタバレを含みます)
不治の病を治すために受けた治療が“人体実験”で、醜い容姿と引き換えに驚異的な治癒力を持つ“不死身の体”を手に入れたウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)。そんな彼が“デッドプール”となって活躍する姿は「デッドプール」「デッドプール2」で描かれているが、第3弾は映画「LOGAN/ローガン」で壮絶、かつ感動的な最期を迎えたウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)とタッグを組むことに。
物語は、デッドプールがウルヴァリンの墓を暴き、遺骨を相手に会話をしたりするブラックユーモア満載なシーンから始まる。そこに現れたのは、ドラマシリーズ「ロキ」に登場していた“神聖時間軸”を守る謎の組織「TVA(時間変異取締局)」の特殊部隊のメンバーたち。
デッドプールはウルヴァリンの骨や爪を使い、軽快な音楽に合わせるように彼らを次々になぎ倒して行く。スローモーション演出など、「デッドプール」シリーズらしいオープニングだが、“一体何が起こっているの?”といった謎の多さがあるのもいつものデップーらしいところだろう。
その後、「どうしてこうなったのか」というのを時間を遡って教えてくれる。「デッドプール」シリーズがMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に合流したということで“アベンジャーズになりたい”と思ったウェイドは面接を受けていた。彼を面接しているのは、トニー・スターク…ではなく、トニーの相棒で秘書兼運転手をしているハッピー・ホーガン(ジョン・ファヴロー)だった。しかし、熱弁を振るうも採用されず…。
さて、ウェイドだが、今はデッドプールとしての活動は行わず、自動車の中古車販売の販売員として生活している。スーパーヒーローになることは自分の意思でやめているようで、「デッドプール2」に登場した仲間たちと幸せに暮らしていた。
しかし、ある日TVAの特殊部隊メンバーが現れ、ウェイドをTVAに強制的に連行。そこでウェイドは、自分が住んでいる世界“アース10005”が「アンカー」と呼ばれる重要な存在の死によって消滅する危機が迫っていることを知らされた。そのアンカーがウルヴァリンであり、「LOGAN /ローガン」で亡くなった彼とデップーは同じ時間軸(世界)にいたということも判明。
デップーはTVAが使っている時空を超えるデバイスを奪って、本当にウルヴァリンが死んだのかを確かめに行ったところで、追い掛けてきたTVAの特殊部隊が現れ、オープニングの戦闘シーンへとつながったということだ。劇中、デップーのセリフに「3作目なのに説明が長い」というのがあったが、ここでも長めの説明をしてしまった。
亡くなったウルヴァリンの代わりに“アンカー”になってもらおうということで、TVAのデバイスを使ってマルチバースを移動し、別の世界のウルヴァリンたちに会いに行くデップー。
ここもマニアックなネタが盛りだくさん。原作のコミックスに登場するウルヴァリンと同じ身長160cmの小柄なウルヴァリンや原作の初期で着ていた茶色のコスチュームなど、いろんなウルヴァリンが登場するが、一人だけヒュー・ジャックマンじゃない“ウルヴァリン”が紛れ込んでいた。サプライズでカメオ出演している俳優なので、そこは見てチェックしてもらいたい。
面接のような感じでいろんなウルヴァリンと会って、最終的にアンカーとして代役になってもらおうと決めたのは、仲間を失って失意の中にいるウルヴァリンだった。
ウルヴァリンを連れてTVAに戻るが、TVAのエージェント・パラドックス(マシュー・マクファディン)と意見が合わず、というかパラドックスが上層部に内緒で独断でいろいろ行っていることをデップーが見抜き、ウルヴァリン共々“虚無”へと送られてしまった。
“虚無”は、これも「ロキ」に出てきたが、忘れられた者たちが行き着く終着点ともいえる場所のこと。そこに「20世紀FOX」のロゴが放置されているのもブラックユーモア的なものと言える。
“虚無”ではいろんなキャラが登場する。キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)がいたと思ったら、エヴァンスが以前演じた「ファンタスティック・フォー」のヒューマン・トーチだったというのも遊び心を感じさせてくれる。
最凶のヴィラン、カサンドラ・ノヴァ(エマ・コリン)も“虚無”にいた。そして、カサンドラと戦う仲間として、エレクトラ・ナチオス(ジェニファー・ガーナー)、ブレイド(ウェズリー・スナイプス)、ガンビット(チャニング・テイタム)、それに「LOGAN/ローガン」に登場したミュータントのローラ(ダフネ・キーン)まで…こういった濃いキャラたちが集結しチームを作る感じにワクワクする。
デップーは仲間たちが暮らす世界の消滅を阻止すべく、虚無から脱出するためにカサンドラと死闘を繰り広げる。ここの対決は大きな見せ場。ヴィランにも過去があり、ウルヴァリンとカサンドラのシーンは印象的だった。カサンドラにはカサンドラの思惑があるのだ。
下ネタやブラックジョーク満載、“第四の壁”(元々は演劇用語で、舞台上に存在する左右の壁と奥の壁に対して、観客側の見えない壁)を超えて語り掛けてきたり、自由奔放で破天荒なところなどはこれまでと変わらず。それどころか、さらに過激になっていたり。
過去の「デッドプール」シリーズはもちろん、「X-MEN」「ウルヴァリン」シリーズも、ちょくちょくイジりながらもリスペクトが込められており、ライアン・レイノルズやスタッフの“愛”が感じられる作品に仕上がっている。エンドロールで過去作のメーキングシーンが使われているところからもそれは十分に感じられるはず。
R指定なので「家族そろって」とは言えないが、“混ぜるな危険”な2人の活躍は楽しめること間違いなしだ。
「デッドプール&ウルヴァリン」はディズニープラスで見放題独占配信中。
◆文=田中隆信
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