―――『BLEACH』で好きなキャラクターを教えてください。
平松:僕は更木剣八と涅マユリが大好きです。剣八は敵を圧倒するパワーと戦闘への純粋な悦びがあって、一方のマユリは、智慧と技術力で敵の能力を上回っていく。二人とも負ける姿が思い浮かばないし、自分の理屈でしか動かないけど、最後は勝つ。キャラクター性が理屈をねじ伏せていくのが最高に痛快なんですよね。
ただ、第27話で「案ずるな。妾はマユリと違うて、死者の身体を捏ね繰り回す趣味はない」という千手丸のセリフを聞くと、「マユリってそういえばひどい死神だったな」と初登場時のマユリを思い出して、「マユリが好き」と言っていいのか迷ってしまいますが(笑)。それでもやっぱりマユリは言動が面白いし、山じいにさえ強い物言いをして馴れ合おうとしない、そんなところも好きですね。
――『BLEACH』のセリフで惹かれたものを教えてください。
平松:海燕のセリフが本当に好きです。中でも「心は体の中には無え何かを考えるとき誰かを想うときそこに心が生まれるんだ」「心は仲間にあずけて行くんだ」(共にコミックス30巻268話)というセリフは、『BLEACH』の根源にあるような想いが詰まっていて、最高ですよね。言葉の選び方、その言葉を最大限に生かすシチュエーションの作り方、キャラクターの表情すべて、読み返す度に久保先生のすごさを感じます。
――サブタイトルの「相剋譚」にちなんで伺います。現在、ご自身の中で相剋していることはありますか?
平松:シナリオを書くことは楽しいですが、一方で、偉大な“原作”に見合ったシナリオが書けているのか毎回プレッシャーを感じます。また、シナリオが評価されれば素直に嬉しいのですが、そこに葛藤もあります。
『BLEACH』に限らず、映像用に調整をするとはいえ、原作の台詞や展開をそのままにシナリオを作った場合「良かったね」と評価されても、称賛されるべきは原作の良さであり、描かれた先生方です。僕がオリジナルのシナリオを書いたときに評価されるようなものが書けるのか、原作の魅力を借りていただけと思われないように新たなキャラクターや物語を生み出せるのか、そこにいつも悩んでいます。
頂いた評価と能力に対する自己評価のギャップ、嬉しい気持ちと戒める気持ちが、ずっと自分の中で相剋しています。ただ、そんな相剋する感情があってもシナリオの仕事は楽しいです。
――最後に、ファンに向けて一言お願いします。
平松:まずは次の第33話の放送を楽しみにしていただきたいと思います。そして、これからもアニメオリジナルのシーンがたくさん追加されていきます。原作で描かれなかったシーンから原作で描かれている場面に補足するように書き足したシーンまで、原作を読んでいる方でも「おっ!」と驚くような場面が毎週出てくるので油断せずに、最後までこの死闘を見届けてください。
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