爆風スランプの26年ぶりのツアー「爆風スランプ〜IKIGAI〜デビュー40周年日中友好LIVE “あなたのIKIGAIナンデスカ?”」のファイナル公演が、11月17日に東京・LINE CUBE SHIBUYAで行われた。
ツアーのオープニングを務めたのは、中国のロックバンド・布衣(ブイ)。ファンキー末吉(Dr)が彼らのデビューアルバムをプロデュースした縁から、2018年に正式に布衣のメンバーとして加入し、毎年100本近くをまわるツアーを敢行している実力派として知られている。ヘヴィメタルをベースに中国の伝統的なサウンドを加味しながらメロディアスに展開していくロックは、観客に新鮮な驚きを与えていった。
「次は、きっとみんなも知っている曲なんじゃないかな」とファンキー末吉が言って始まったのは、「リゾ・ラバ」。ソリッドでスケールの大きいアレンジにメンバー個々の技量の高さも感じられる。
そして2コーラス目には、サンプラザ中野くん(Vo)が、ソロの前にはパッパラー河合(Gt)が、ソロ中にバーベQ和佐田(Ba)がステージに登場。布衣とのコラボレーションが実現した。
爆風スランプが1999年に活動休止した直後に拠点を中国に移したファンキー末吉と、幾度かの復活ライブでバンドの灯を絶やさなかったメンバーとの絆が、中国のバンドである布衣を交えて、ひとつになったかのような感動があった。
パッパラー河合のエンターテナーぶりで転換中とは思わせない盛り上がりを見せた会場は、テンションを途切れさせることなく爆風スランプのライブへ突入していく。「えらいこっちゃ」では、バーベQ和佐田の怒涛のスラップベース、ファンキー末吉のドラムソロ、パッパラー河合のギターソロと、挨拶がわりにスーパーな演奏力の高さを見せつけていく。圧倒的な基礎体力ともいうべき演奏力があるからこそ、爆風スランプの楽曲は本当の意味でジャンルレスなのであり、時代を超越して“青春”を表現できるのだ。
会場に集まった観客の多くは、中高年の人たち。だが、みんな青春の真っ只中にいるように目をキラキラ輝かせ、爆風スランプの演奏に没頭していた。思わず、ここは(東京・)渋谷公会堂なんだと錯覚してしまいそうなほど“あの日”を思い出した人も多いだろう。だが、今はあの日ではない。今は今なのだという事実がこれほど最高だと思えた瞬間もないのではないだろうか。なぜなら、あの日と同じように、もっと熱狂的に自由にライブを楽しんでいるからだ。
サンプラザ中野くんは「あのときの中高生が今、中高年に!中高年の方が中学生よりも自由に動けます。使えるお金もあります。今回のライブは“IKIGAI”がテーマですけど、裏テーマは“中高年”です。中高年パワー!」と声を上げた。
中盤では、パッパラー河合がボーカルを担当する楽曲「スーパーラップX」をサンプラザ中野くん以外の3人で披露。かなりアバンギャルドで変則的な演奏に、パフォーマンス後に加わったサンプラザ中野くんが、「よかった!感動した」と素直な感想を口にする場面も。
バンドはそのまま“出身地マイラブシリーズ”の誰のバージョンを歌うかで真剣勝負のジャンケンを繰り広げ、結果バーベQ和佐田が一撃で勝ち抜け、「京都マイ・ラブ」を披露した。