前島亜美「厳しい言葉を向ける“第三者のジャッジ”が怖かった」アーティストデビューで語る“歌う決意”

2024/11/19 08:30 配信

音楽 インタビュー

前島亜美が、11月20日(水)に1stアルバム「Determination」でアーティストデビューを果たす※提供写真

声優、として活動する前島亜美が、11月20日(水)に1stアルバム「Determination」でアーティストデビューを果たす。アイドルグループの卒業後は俳優業に加え、「BanG Dream!」丸山彩役など声優業でも活躍の幅を広げてきたが、音楽活動はキャラクターソングを除けば長く途絶えていた。「怖かった」というその期間を経て、今アーティストデビューする決意。前島にとっての“歌”を聞いた。(前後編/前編)

ファンと共通言語、共同作業者であるのが声優アーティスト

――ファンも待望といった今回のアーティストデビュー。前島さん自身はどのような思いをお持ちですか?

声優のお仕事をしていると、“声優アーティスト“の方と身近に接する機会が当然多くて。先輩だけでなく、周りの声優さんが続々とデビューして、ライブやアルバムの話をしているのを聞いていたので、自然と憧れのような気持ちは持っていました。声優業を始めたときはそういう道もあるんだなと思いましたけど、グループ活動をしていたからこそ1人で戦う大変さを知っていたし、気持ちはあってもなかなか勇気が出せなかったです。

でも、改めて自分の人生を振り返ったときに、上手い下手ではなく、 好きか嫌いかで考えると、やっぱり私は音楽が好きで、何よりステージに立つことが一番好きだったんですよね。それで今回キングレコードさんとご縁をいただいたことをきっかけに、自分の名前で、自分1人でアーティストデビューに踏み出してみようと決めました。

――声優さんの場合、キャラクターソングを離れても“声優アーティスト”と呼ばれることが多いです。アーティストと声優アーティスト、両者は何が違うのだと思いますか?

私はグループ時代、音楽業界で生粋のアーティストである先輩方の背中をたくさん見てきました。一方で私自身はアニメが好きで、声優さんと声優アーティストが好きで、アニサマ(Animelo Summer Live)にもプライベートで足を運んだりしています。そういう風に両者を間近で見てきた感覚でいうと、声優アーティストの爆発的な吸引力ってものすごいなって。それってお客さんと共通言語でつながっていることなんじゃないのかなと思います。同じ作品を愛している。同じ物語に身を任せている。同じ熱量と同じ目線で、その瞬間を楽しんでいるみたいな感覚が声優アーティストの場合はより強い気がします。

私はアーティストの世界観に魅了されるライブも大好きですが、声優アーティストはお客さんも世界観を作る共同作業者になるみたいな。そこの一体感も含めて、素晴らしいエンタメであるというのが声優アーティストの強みなのかなって感じます。

――共通言語、共同作業者という説明はとてもしっくりきますね。今回のアーティストデビューでは、アルバムに対してどう自己表現を行いましたか?

もう、本当に戸惑いながらのスタートでした。まず取りかかったのが作詞にチャレンジしたリード曲の「Determination」。レコーディングもこの曲が最初でしたが、歌ったときに自分の素の声が分からなくなってしまって。近年はキャラクターソングしか歌ってこなかったことと、それ以前のアイドルグループでは素の自分であるとはいえ、十数人のメンバーの中で被りを避けてのキャラクター分けみたいなものがあったんですよね。

アニメが好きだったこともあり、ちょっとアニメ声っぽく歌うというのがなんとなく私の担当になっていて。となると、本当に素の声で歌ったことってもしかしたからデビューしてから15年間、なかったかもしれないんです。もちろん、一番楽な歌声というのはありますけど、それが曲調に合うか、お客さんが喜んでくださる声なのかと考えるとまた迷ってしまい、そこのバランスがとても難しかったです。

――レコーディング時間もだいぶかかりましたか?

「Determination」だけで5、6時間かかって、もうヘロヘロでした。でもアルバムの10曲を連続してやっていくうちに、だんだん自分も知らなかった自分の声が出てくるようになって。じゃあ、この曲はキャラクターっぽくとか色々遊びを試すようになって、とても勉強になったレコーディングでした。

重大な責任が押し寄せてくる毎日が楽しくもあり、怖くもあり

前島亜美1stアルバム「Determination」※提供写真


――アルバムには全10曲を収録。完成楽曲を聴いて、客観的にどういう印象を受けましたか?

声優を始めてからキャラクターボイスとして長く使ってきたのが大きく分けて3パターンあって、それは自分でも聴き慣れている声ですが、その中間や、もっと細分化したパターンの声は聴き慣れていないので、この歌声でいいのかと懐疑的になってしまうんです。でも、ディレクションでオッケーが出たということは間違ってはいなかったんだとは思います。そういう意味では自分の好みより、周りの客観的な反応も大事にして歌ったアルバムですね。

――確かに自分にとって聴き心地がいいものと、聴く人が心地いいものというのは違う場合がありますよね。そこに正解を見つけるのはとても難しいと思います。

こんなにも重大な選択が毎日のように押し寄せてきて、その1つ1つで結果がこうも変わってしまうということが楽しくもあり、責任重大でもあり、怖くもありましたね。それと、私はやっぱり曲の雰囲気に声質が引っ張られるんだなとは思いました。

「Determination」も力強い歌詞ではあるんですけど、希望的な音やメロディーが大きいので、超地声というよりは、明るさに満ちた声質で表現しているなと感じて。逆にどっしりした楽曲では思いきり地声で歌っている。あとで聴いてのことですけど、曲によって変わる声優アーティストっぽさがあるのかなと思いました。

――新しい挑戦ですし、やってみて分かることが色々あったようですね。

きれいにまとめるよりもできるだけ幅を広げたいと思って。周りの意見をたくさん聞いて、少しでも新しい方へ、風通しがいい方へと選択を持っていこうとしたレコーディングでした。

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