スバルには大罪司教を倒した実績がある。その脅威に住民が怯えている今、スバルが声をかけたら、これ以上心強いことはないだろう。アナスタシアやユリウス(CV:江口拓也)もガーフィールの提案に同意するが、スバルは決意しきれない。
そんな中、アルが「躊躇うんならやめちまえよ」とスバルに告げる。これからスバルが背負うことになるのは『英雄幻想』。スバルの敗北はスバル一人の敗北ではなく都市全体の敗北になる、もし背負うのであれば絶対に負けない覚悟を持たなければならないと語るアル。だが、そんなアルのおかげでスバルの覚悟が定まった。その頭には、異世界に召喚されてから現在までの記憶が背中を押すように流れていた。
TVアニメ1st seasonが放送されてから約8年。色んなことがあったなとエモーショナルな気分になるのと同時に、スバルに救われてきた人々の多さに驚く。元より特別な人間だったわけではなく、何度も絶望に呑み込まれてきたスバルが、その度に己を奮い立たせてきたのは“絶対に救いたい”という強い気持ちがあったから。
そんな姿を見て、多くの人たちはスバルのことを信じ、力を合わせてきた。エミリアも、ベアトリスも、王選における敵陣営の者たちも。ガーフィールに至っては、スバルの無事を確認しただけで涙ぐむほど彼のことを慕っている。
救いたい人間の数が増えただけで、やるべきことは今までと変わらない。覚悟を決めてマイクの前に立つ。そんなスバルの演説は約7分間に渡って描かれた。印象的だったのは”、“大罪司教を倒した”という肩書きを最初に告げなかったこと。まず、スバルは自分がいかに弱い人間かを語ったのだ。脈略がないスバルの弱音を、最初は不安そうに聞いていた住民たち。だが、「それでも、逃げられないから戦う」というスバルの一言で顔色が変化していく。
スバルも住民たちと一緒で、不安や恐怖を抱える1人。だからこそ、同じ目線でその気持ちに寄り添うことができる。その上で、エミリアが歌う挿入歌「I Trust You」をバックに、一緒にいる“誰か”と、負けそうになる心を支え合いながら一緒に戦ってほしいという熱い思いを飾らない言葉で住民たちに語りかけるスバル。そして、最後に「俺の名前はナツキ・スバル! 魔女教大罪司教『怠惰』を倒した精霊使いだ!」と名乗るところが最高にかっこいい。そんなスバルの演説を色んな場所から聞いている人たちの表情も印象的に映し出され、みるみる希望が湧き立っていくのを感じた。
これまでは身近な人たちを助けてきたスバルが、不特定多数の不安に怯える人たちのために“英雄”として立ち上がる一つの集大成となったこの回。放送後にはXで「スバルの演説」というワードがトレンド入りを果たし、視聴者からも「絶望の淵に居る街中のみんなに希望を持たせる素晴らしい演説だった」「これ聞いて泣かん人おらんやろ…」「個人的に過去最高の神回」「久々にアニメで心震えた」と熱のこもった感想が寄せられた。
■文/苫とり子
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