コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、ちゃおプラスにて『上杉くんは女の子をやめたい』の新連載がスタートした、やぶうち優先生の作品『ゲキカワ♡デビル』をピックアップ。
ちゃお編集部の公式Xが2024年10月26日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、1万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、やぶうち優先生にインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
主人公のオシャレ好きな中学1年生・藤美(ふじみ)マイは、中学の入学式にも気合いを入れて登校。同じ中学には幼なじみで同じマンションに住むカイもいた。
入学式当日、マイは校内で「ダッサ!!」とバカにされている同級生・莉々夢(りりむ)と出会う。姿勢の悪い莉々夢を見て、マイは「ガチオワ」と言いながら割り込む。さらにからかっていた女子にも姿勢が悪いと指摘するのだった。そんなマイの言葉に怒った相手の女子は、マイに手を上げようとするが、通りかかったカイに助けてもらうのだった。
これをきっかけに莉々夢と友達になったマイ。莉々夢は元気で可愛いマイに憧れネガティブなことを発言する。しかし、それに対してもマイは「ガチオワ」だと指摘。翌日も変わらずネガティブな莉々夢に、とりあえす姿勢だけ直そうと提案するものの、マイのように生まれつき可愛いわけじゃない、と莉々夢はその場から逃げ出してしまう。
校庭の隅で悩む莉々夢のところへカイが登場。マイは過去に「ジミマイ」と呼ばれていたことを語り、昔の自分のような子を放っておけないのだ、と莉々夢に教える。そして、その場にやってきたマイは、莉々夢は姿勢だけ直せば“ゲキ的”に“カワれる”と改めて言うのだった。
翌日、姿勢を正した莉々夢は周りの生徒たちから「変わった」と言われる。少し自信のついた莉々夢は、カイがいつか自分を好きになってくれるかな、とマイに言う。莉々夢を「ゲキカワ」させたマイは、恋のライバルを生んでしまったことにも気づくのだった…。
作品を読んだ読者からは、「おしゃれに興味持ったのはこの漫画のお陰」「懐かしくて涙出る 今見てもやっぱ好き」など、反響の声が多く寄せられている。
――『ゲキカワ♡デビル』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
もう9年前のことなのであまりよく覚えていないのですが…。
そのひとつ前の連載がたちあげ段階で好きにやらせていただいたので、今度は担当さんとよく話し合って方向性を決めよう、と思いました。一応前もって考えていた明るいノリのデスゲームのようなお話を出してみたものの、案の定ダメと言われて。そのうち時間もなくなってきて、担当さんからのご提案で「ファッション+サクセスもの」でいくことになりました(単行本5巻のおまけ漫画より)。
ただそれだけだとありきたりなので、なにかこの作品独自の部分をつくらねば、と。
担当さんが辛口な物言いで添削してくださる方だったのと、当時「ヒルナンデス!」のコーナーでファッションチェックをされていた植松晃士さんの影響もあって、主人公を少女漫画ではあまりいないタイプの毒舌キャラでいくことにしました。スティックも植松さんからです(笑)。
連載当初、編集部内では「マイが怖い」と不評でしたが、読者のみなさんにはすぐに受け入れられて好きになってもらえたのでよかったです。
――今作を描くうえで、特に心がけていた点や大切にしていた点などをお教えください。
なるべく各回にお洒落の豆知識を入れるようにしていました。それも、頑張らなくてもちょっとそこだけ気をつけたら「ゲキ的に」「カワる」よ、という感じの。意識改革的な。タイトルの「ゲキカワ」にはそういう意味が込められています。
じつは当時、同じ雑誌(『ちゃお』)にファッションものを得意とされる作家さんがいらっしゃって。なぜかその方と連載期間がガッツリ被ってしまって。だったら同じ時期に私がファッションものをやらなくてもよかったのでは…と思ったりもしました。ただあちらは可愛いお洋服を「着る」ほうがメインでしたので、こちらは「つくる」ほうの視点と服に限らない「お洒落指南」に比重を置くことにした、という経緯があります。ラブ要素をメインに、サクセスパートを進めつつ、豆知識を盛り込むのは毎回大変でしたが。
「スマホブス(第8話)」や「パーソナルカラー」(第17話)「骨格診断」(第34話)など、この作品で知ってから今も気に留めているという書き込みをネットで見つけると、役に立ってよかったと嬉しくなります。
――今作のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
第25話の、らいむがマイに活を入れるシーンです。
[※セリフとしては「思うぞんぶん後悔したら “現実(いま)”を受け入れて “未来(まえ)”を向きなさいよっ!」の部分]
それまでマイの目は光を失っていますが、らいむがマイの気もちに向き合ってくれたことでマイの目に光が戻り、現実から目を背けていたマイがようやく自分の悲しみを受け入れて泣くことができた、という所です。
あとは第35話の、マイが自分の母親に「ガチオワ!!」というシーン。
[※セリフとしては「ママから見たあたしの幸せなんかどーでもいい! でも! ママが“ママ”をやめたほうが幸せになれるんなら… あたしはママなんかいらないっ…!!」まで]
お互いが相手の幸せを思うがゆえにすれ違ってしまった親と子が決別するエピソードです。
前作やその他の私の作品でも母親とすれ違う話がちょくちょくありますので、意識はしていないものの何か思う所があるのかもしれません。
こうしてふり返ってみると「ゲキカワ♡デビル」ってかなり重たい話ですね。
――ちゃお編集部のXの投稿には「懐かしすぎて涙出てきた」「めっちゃ好きだった」など作品に思い入れのあるファンの声があふれています。やぶうち優先生がこれまで読まれた漫画の中で、特に思い入れの深い作品があれば教えて下さい。
ありがとうございます! 覚えていてくださって嬉しいです。
私の場合は…いろいろありますが、やっぱり「ドラえもん」ですね。
子供の頃、家には母や姉が買った漫画がたくさんありましたが、初めて私個人の所有本になったのが、入院中の私に母が買ってきてくれた「ドラえもん」の(なぜか)7巻でした。それ以前からアニメは毎週欠かさず見ていましたが、原作を1巻から読みたいと思って買い足し、その後もずっと買いつづけて。小学館の雑誌に投稿したのも、「ドラえもん」が好きだったからかもしれません。幼少期のファーストインパクトって絶大で忘れられないですよね。
そしてだいぶ大人になってから、藤子・F・不二雄先生と私は誕生日、血液型、干支までが同じと知り、並ならぬ親近感をもちました。反面、畏れ多くもあります。生まれもった運命的には近いはずなのに足元にも及ばないなあ、と(笑)。
――やぶうち優先生ご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
「ゲキカワ♡デビル」の連載は2019年の12月号で終了しました。
2020年から違う担当さんと別作品の連載をたちあげましたが、担当さんとの意見の相違で中断され、2021年にまた違う担当さんと新たに連載をたちあげたものの途中で骨折して半年間休載した結果打ち切りになり、2022年には体調不良で入院したため仕事の予定がなくなったり…と、「ゲキカワ♡デビル」終了からここ数年、紆余曲折がありました。本気で廃業を考えたりもしました。
そんな時、「まほちゅー!」と「ドーリィ♪カノン」という作品で長くお世話になった担当さんのご厚意でなんとか漫画を描く気力をとり戻し、この「ゲキカワ♡デビル」をたちあげた担当さんのおかげで今年、webで新たな作品を連載させていただけることになりました。本当に感謝しています。
現在「ちゃおプラス」で「上杉くんは女の子をやめたい」という作品を連載中です。
「ゲキカワ♡デビル」とは毛色の違うお話ですが、思春期の少年少女たちの日常にちょっと非現実的な設定が投下されて起こる波乱の展開という点では「ゲキカワ♡デビル」と通ずるものがあるかと。(※「中学生デザイナー」と「TS」)
理想は藤子・F・不二雄先生のように、幅広い知識と好奇心をもち、親しみやすい作風で子供から大人まで年齢性別を問わず愛される漫画家になることです。今後も小中学生ぐらいの淡い恋心や葛藤・成長などを「すこし・ふしぎ」な要素を入れつつ描き、みなさんの心に響く作品をお届けしていけたらいいなと思っています。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
「ゲキカワ♡デビル」を応援してくださったみなさん、ありがとうございます!
絵は子供向けで、画面やセリフもわかりやすくはしてありますが、内容は子供が相手だからと手加減したりはしていません。連載中盤のとある衝撃展開から読むのをやめた、という読者さんをちらほら見かけますが、ぜひ最後まで読んでみてほしいです。大人になった今だからこそ、また違った部分が見えてくるかもしれません。もちろん読んだことがない方もぜひ!「ちゃおプラス」でときどき期間限定で全話無料になることがありますので、そのタイミングを狙ってでも(笑)。他の過去作品や最新作の「上杉くん」など、いつでも無料で読めるお話が「ちゃおプラス」にはたくさんありますので、ぜひあそびに来てください!
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