年の瀬が近づき、街がイルミネーションで華やかに彩られる12月。きらびやかなツリーや楽しげに笑いあう恋人同士の姿がそこかしこで見受けられる、クリスマスの季節だ。だがクリスマスの楽しみ方は、誰かと過ごすだけではない。最高に盛り上がる“名作映画チャンス”デーでもあるのだ。胸が温かくなる、それでいて思い切り笑わせてくれる名作たちを紹介する。
2024年に見るクリスマスの映画として外せないのが、公開40周年という節目を迎えた「グレムリン」。スティーブン・スピルバーグが製作総指揮として携わった名作で、フワフワな体毛とつぶらな瞳がトレードマークの不思議な生き物“モグワイ”をめぐるクリスマスの大騒動を描く。
1984年に公開された同作。主人公のビリーは父親から不思議な生き物“モグワイ”をプレゼントしてもらう。モグワイは“ギズモ”と名付けられるのだが、父親はモグワイを飼うにあたって「絶対に破ってはいけない3つの約束」を申しつける。
1つ目は「水に濡らさないこと」、2つ目は「光に当てないこと」、3つ目は「真夜中を過ぎたら絶対に食べ物を与えないこと」。
ビリーはかしこくキュートなギズモにすぐメロメロになった。だがどれも簡単だったはずの約束は、1つずつ破られてしまう。筆を洗うためのコップの水をこぼされ、濡れてしまったギズモ。突如苦しみだしたギズモの背中から飛び出したいくつもの毛玉はみるみる成長して、5匹のモグワイとなっていく。
だが分裂したモグワイたちは、心優しいギズモよりちょっとイジワルで下品。そして彼らは悪知恵を働かせ、人間たちから夜12時過ぎに食べ物を手に入れる。大事な約束を破った結果として、彼らは凶悪な顔つきの“グレムリン”へと変身してしまう…。
キュートなモグワイたちが変身し狂暴化したグレムリン。彼らが起こすイタズラによって、街はパニックに。だが面白いのは、街の人々が彼らを退治するときの手段だ。たとえばビリーのママはミキサーに顔を突っ込んで何かを食い漁っているグレムリンを見つけた際、ミキサーのスイッチを入れてミンチにするというやり方で討伐。どう考えてもスプラッタすぎる。
もちろんちゃんと正当防衛。グレムリンたちは皿を投げつけたり、噛みつこうとしたり、鋭い爪でひっかこうとしたり、非常に危険な存在なのだ。実際に過激すぎるイタズラのせいで、死人まで出ているようす。とはいえ電子レンジで加熱して爆発させる…なんてやっつけ方は、なんとも80年代アメリカン …というほかない。
またグレムリンたちは酒場を占領して酒を飲んだり、煙草をくゆらせたりといったどこで覚えたのかもわからない人間臭い動きをするのもユニーク。さらに車へちょちょいと細工してブレーキが利かないようにしたり、階段昇降を助ける補助イスのスピードを限界以上に上げたりするなど、なぜか機械にも人間以上に精通している。
「なんでやねん!」とツッコミたくなるポイントは多々ありつつ、それも込みでスカッと楽しめるのが映画「グレムリン」。キュートで健気なギズモ、ツッコミどころ満載の大騒動シーン、ちょっぴりスプラッタなグレムリン退治…と何度でも視点を変えて楽しめる作品だ。
ちなみに続編の映画「グレムリン2 −新・種・誕・生−」も忘れてはいけない。初代のエンディングでは離れ離れになったギズモとビリーだが、ある偶然によって再会。すると不幸にも水周りを直しにきた業者の不手際で、またギズモが水を浴びてしまい…。前回よりも高度な知能を得て進化したグレムリンたちによる、パワーアップしたイタズラが大都会を混乱に陥れる。
ドタバタだけでなく、ほっこりしたファンタジック・コメディ作品もクリスマスにぴったり。「マイケル/ジョン・トラボルタ」は、“らしくない”天使が起こすクリスマスの奇跡を描いた作品だ。
シカゴのタブロイド紙記者であるフランクは、会社に届いた「うちに天使が住んでいます」という内容の不思議な投書を見つける。クリスマスのネタとしてピッタリと見込んだフランクは新人記者のドロシーを連れ、急ぎアイオワへと向かう。
しかし現場にたどり着いてみると、そこにいたのはオーバーオールを着た太めのおじさん“マイケル”だった。彼は無精ひげをたくわえ、タバコをくわえながら下品なジョークまで飛ばす。どう控えめに見ても天使には見えないマイケルだが、たしかに背中からは羽が生えている…。
清貧に努め、自省的であり、賢く穏やか…といった従来の天使観をぶち壊すようなマイケル。やりたいことをやりたいときにやる、非常に人情味あふれる新しい天使像を描きだした。
フランクとドロシーは彼を連れてシカゴへ帰ろうとするのだが、その道中でフリーダムすぎるマイケルに散々振り回される。牛との力比べを始めたと思ったら、男たちとケンカした罪で刑務所へ。やっぱりどう考えても天使ではないのだが、ところどころで天使の力を使って見せることで「やっぱり天使なんだ」と思わされてしまう。
ギャップ著しい同作最大の見どころは、なんといってもジョン・トラボルタの愛くるしい演技。“素なのでは”と思えるほど自然なトラボルタの演技が、人間臭い天使をここまで魅力的にしてくれる。憎めないおじさん天使などというキャラクターを成立させるとは、さすがトラボルタと言わざるをえない。
気ままな天使マイケルの“誰よりも人間臭い”部分にクスッとさせられる同作。だがそれでこそ、ふと訪れる天使がもたらす奇跡の温かさがより際立つ。死者とともに踊るダンス、小粋なトラボルタらしい演技、人情にあふれる奇跡…「マイケル」はクリスマスという夜にピッタリの“笑ってほっこりできる”名作だ。
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