コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回はマンガボックスにて連載中の、安達智さんが描く『あおのたつき』より『死んだ遊女があの世で生計を立てる話』をピックアップ。
安達智さんが2024年11月30日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、2.7万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、安達智さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
時は江戸時代。最大の遊廓であった新吉原に、霊験のご利益を求める者だけが迷い込むという、浮世と冥土の境「鎮守の社」があった。
そこに一人の遊女・三浦屋の濃紫(こむらさき)がやってくる。「鎮守の社」の宮司・楽丸(らくまる)は、幼いころは「あお」と呼ばれていたという濃紫に、この場所が冥土との境であることを説明する。自分が死んだことすら信じられない様子のあおに、「わだかまりが恨みになると悪霊になって悪さをする」ことから、ここで魂を守り導いているのだと楽丸は言う。
そこにもう一人の彷徨える遊女がやってくる。その姿は白い面をつけた大きな遊女の頭だった。楽丸は心付けを渡すのであおに話を聞いてやって欲しい、と言う。お金をもらえると知ったあおは、やる気満々でその遊女の話を聞くことに。
泣きながら話し始めた彼女は富岡という名前で、同じ里から出てきたきよ花と一緒に遊廓で働いていた。醜い自分とは反対に美しいきよ花は全てにおいて優遇されていたことから、富岡は不満を募らせていた。
そんな富岡にあおは、劣等感が膨らみ過ぎているだけではないのか、と率直に言う。さらに鏡を差し出し本当に醜女か確かめろ、と言うあおに富岡は激怒。暴れだした富岡を楽丸が宮司の力で祓う。
すると、富岡の面にはヒビが入り、その劣等感と嫉妬心からきよ花の髪を切ってしまったことを思い出す。商売道具である髪を切ってしまったことに激怒した遣手婆に、富岡は折檻を受け、それゆえに息絶えてしまう。富岡は死の直前、きよ花はきよ花でしんどい思いをしながら稼いでいたことに気づき「一緒に里へ帰れたらええのう」と思ったのだった。自分が死んだ時のことを思い出し、涙を流す富岡。白い面は全て砕け散り、そこには雪のように白い肌の美しい女の顔があった。
富岡の魂を無事に導いたあおは、楽丸からもらった心付けに気分を良くしていた。そして、浮世に戻れないなら雇ってくれと楽丸に頼み、楽丸の手伝いをすることになるのだった…。
作品を読んだ読者からは、「とても心惹かれる漫画」「読んでも良し、絵として眺めても良しな素敵な作品」「めちゃくちゃ読み応えある」など、反響の声が多く寄せられている。
――江戸時代の遊廓・遊女をテーマとした本作『あおのたつき』は、どのようにして生まれたのでしょうか?きっかけや理由などをお教えください。
元々実家がラブホテルなことから、裏通りに裏茶屋(出合茶屋。現代のラブホテル)が連なる吉原遊廓に興味があったのかもしれません。
また、大正3年の稲本楼の遊女・小紫(こむらさき)の美しさに惹かれたことも相まって吉原のことをもっと知りたいと思うようになりました。
よく調べてから漫画を描き始めようと思っていましたが、描きながら知っていくこともできるなと思って入門書を一通り読み終わった段階でもう構成を考えていました。
――『あおのたつき』を描くうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
人の死を扱っていることもり、しんどくなり過ぎないようにしたいと思っています。
三つ子の話(2話:犬の児)を描き終わった時点でもう自分がしんどくなってしまったのもあり、しばしば箸休め回を挟むようになりました。
――今作は、『あおのたつき』の1話目となりますが、連載の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
いつでもそうですが、最新話が1番直近で描いた絵なので「よくできたな」と思います。
――「時代劇に通ずる爽快感がある」「泣いちゃった‥」「江戸時代の遊廓文化を勉強しようと思いました」など、Xの投稿には様々なコメントが寄せられましたが、特に印象に残っているコメントなどはありますか?
「吉原についてもっと知りたくなった」と言っていただけたのは、自分が連載を始めた際の気持ちとリンクして嬉しかったです。
もともとOJT(職業内訓練)でしか物事を覚えられないため、吉原のことを深く知りたくて連載を始めたという経緯もあり、読者さんと並走しながら連載を続けられたらいいなと思います。
8巻の山田朝右衛門のあたりから時代考証の方にも協力していただいており、私も日々勉強させてもらっています。
――安達智さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
当然ですが吉原の外にも歴史はあるので、ずっと勉強していかないといけないなと思います。
深みがありつつも落語みたいに気軽に楽しめる作品づくりをしていきたいです。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
現在15巻と連載が長くなってきましたが、オムニバス構成になっていますので一度離脱された方も読みたいエピソードだけ読んだり…という楽しみ方もできるのでいつでも戻ってきてもらえたらと思います。笑
また『あおのたつき』にもしばしばゲスト登場する『丁寧な暮らしをする餓鬼(https://x.com/gaki_teinei)』を別名義で執筆しているのですが、こちらは巡回個展もしていますので合わせてお楽しみいただけると嬉しいです。
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