大晦日の風物詩の1つと言えば、大規模な総合格闘技大会。今年もRIZINによるビッグイベント「RIZIN DECADE」が12月31日(火)、さいたまスーパーアリーナにておこなわれる(ABEMA PPVにて全試合生中継)。DECADE(10年)という大会名通り、大晦日開催が10回目となるRIZINのこのメモリアルな興行で、メインを務めるのが鈴木千裕だ。現RIZINフェザー級王者、並びに現KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王者という、二冠王である鈴木。まさに総合格闘技とキックボクシングの二刀流を地で行く鈴木に、話を聞いてみた。
――まさに二刀流の王者としての出陣となりましたね。
はい。プロデビューして7年になるんですが、駆け出しの頃から、『僕は格闘技界の大谷翔平になります』と宣言して来たんですよ。周りからは『バカじゃないのか、アイツ』『なれるわけないじゃん』と大変だったんですけどね(笑)。『そもそもお前が大谷選手の名前を出すな』と(苦笑)。
僕の中での二刀流の達成は、現役でキックボクシングと総合格闘技のベルトを同時に持つことでした。それが出来ている今は、自分でも二刀流ファイターと言っていいとは思っています。
――実は、アマチュア時代から、RIZINの大晦日大会のメインも狙っていたとか。
そうですね。RIZINのアマチュア・トーナメントが、プロの方の試合の合間におこなわれたことがあったんですよ。要するに休憩中なんですけど。そちらで優勝させて頂いて(2016年12月30日。さいたまスーパーアリーナ)。その時に、『いつか絶対チャンピオンになって、大晦日のメインで試合やります』と言ったので。これまた周囲には笑われたんですけどね。『いやいやいや』『無理でしょ』みたいな(苦笑)。今年はそちらも嬉しく思います。
――メインの相手はクレベル・コイケ選手。鈴木選手の持つRIZINフェザー級王座に挑戦という形となりますが、1年前には、逆に、同王者であるコイケ選手に鈴木選手が挑戦。王座奪取はなりませんでしたね。
クレベルの体重超過で王座は剥奪だったんですが、試合では僕が腕ひしぎ十字固めで一本負けしてしまって……(2023年6月24日。クレベルの体重超過により、公式の試合結果は無効試合)。だから、僕の中では今回のテーマは、リベンジなんですよ。「リベンジ!」 その一言ですね。
――記念すべきRIZINの大晦日大会10回目のメインを飾るということへの気持は。
でも、現時点では、やはり僕が務めるのだろうなぁという感覚です。近年、僕くらいの成績を残した人がいないですから(※2023年より、キックボクシングを含め4勝1無効試合)。
――ただ、今回の大会の終了予定時刻を観ると「24:00~25:00頃」となっていまして。メインが大晦日でなく、新年を明けてから行われる可能性もあるのですが……。
アゼルバイジャンでも、日本時間でいう午前3時くらいに試合しましたから大丈夫です。時差ボケを直す時間もなくて、少し眠かったんですけどね(笑)。いずれにせよ、リアルな格闘技なら、僕がメインを張るのがベストかなという気はしています。
――リアルな格闘技と言う部分では、昨年、鈴木選手が、一部の喧嘩自慢が目立つコンテンツに、疑義を申し立てたことも話題になりましたね。『今の日本の格闘技界は不良やヤンキーが輝く時代になっている。一切遊びも全部断ちきってまじめにやってる人が報われる格闘技界をつくりたい」と……(※昨年11月の発言)。
今は、僕の中では、段々ラインが引かれるようになって来たんじゃないかと感じています。格闘技を本職でやっている人達と、そうじゃない人達との違いが出て来たというか。少し前だと、そういった喧嘩の番組やYouTubeに出ている人たちを、一視聴者が、「あれ、格闘家でしょ?」と観てしまう部分があったと思うんですね。でも、徐々にそういう同一視がなくなって来たというか。
――鈴木選手の発言については、まさに大晦日格闘技興行のレジェンドである魔裟斗選手も、同調する一幕がありました。「格闘技が不良のやんちゃなものになっちゃうと、親が子供にやらせたくないからね。そうなると裾野が小さなパイになっちゃう。正統派の方が裾野は広がるよ」と。
うれしかったですし、口はぼったい言い方をさせて頂けるなら、同志だなと感じました。魔裟斗さんも本気で格闘技を追求して来た方だし、生活の全部を格闘技に捧げた部分があったと思う。片手間に格闘技をやっている人たちが目立つことは、違うんじゃないかと思ってくれたと思います。
――大晦日のイベントは、世間一般の注目も集まります。ご自身が思う、格闘技の魅力とは?
格闘技を知らない人にとっては、ただの試合だとは思うんですよ。でも、例えば5分3Rの試合があるとして、格闘家って、その15分のために、数カ月、時には数年かけて、練習をするわけなんですね。その成果を発揮出来るのは、15分しかないわけですよ。野球とかサッカーは、何試合もあるし、時間だって90分や、9回まである。でも、格闘技は、あって数カ月に1試合、そして、長くても15分なんです。つまり、その15分には、その選手のそれまでの人生全てが詰まってるんです。
しかも、陸上とかの競技と違って、生死がかかってる。大怪我をする危険性ももちろんです。その可能性を背負ってリングに上がる。そして、命をかける覚悟で殴り合う。それって、他のスポーツにはない領域じゃないかな。
それがつまらないわけがない。格闘技って、古代ローマの時代からあるわけでしょう?それは同時に、やる人にも、見る人にも、やめられない刺激があるということなんですよね。人間本来の刺激が詰まってると言っていいんじゃないかな?
格闘技をやってると、僕は日常が物足りなく感じてしまうんですよ。例え絶叫マシンに乗ろうが、バンジージャンプをしようが(笑)。格闘技には、日常ではまかない切れない魅力がつまってます!非日常を味わいたい人には、ぜひ観て欲しいですね!
――では、これまで応援して来てくれたファンに向けても一言。
1R、KO勝ちで年を越す僕の姿を観て欲しいですね!
――ありがとうございました。
もしくは、年明け1発目に1RKO勝ちする僕の姿かもわかりませんけどね(笑)
撮影=大石 隼土
取材・文=瑞 佐富郎
1999年生まれ。東京都三鷹市出身。クロスポイント吉祥寺所属。
2016年、アマチュアRIZINで優勝し、翌2017年、PANCRASEで総合格闘家としてプロデビュー。2019年にはキックボクシングにも進出し、2021年7月にはKNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王座を獲得。RIZINには同年9月より参戦し、2023年11月にはヴガール・ケラモフを下し、第5代RIZINフェザー級王者に。今回のクレベル・コイケ戦は、今年4月の金原正徳戦に続き、2度目の防衛戦となる。
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