【舞台レポート】上白石萌音、朗読劇「メメント・モリ」で魅せた巧みな表現力と伸びやかな歌声

2024/12/18 13:05 配信

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上白石萌音の巧みな表現力が「メメント・モリ」の世界観を鮮やかに描きだす(C)朗読劇「メメント・モリ」製作委員会

Mrs. GREEN APPLEのフロントマン・大森元貴が2021年2月にリリースしたソロデビューEP『French』に収録された楽曲「メメント・モリ」の世界観を基にした絵本「メメント・モリ」の朗読劇公演が12月14日・15日の2日間、ところざわサクラタウン ジャパンパビリオン(埼玉・所沢)で開催された。俳優の上白石萌音が読み手、ミュージシャンや舞台音楽の作編曲家として活動する大嶋吾郎とピアニスト・作曲家の栗山梢が演奏を担当。情景が目に浮かぶような上白石の語りに大嶋と栗山が奏でる音楽がエモーショナルに重なり合い、子供から大人まで楽しめる絵本の奥深い世界観を、繊細かつダイナミックに表現し観客を感動の渦に巻き込んだ。

楽曲から絵本、そして朗読劇へ

 「メメント・モリ」は、大森が2021年2月にリリースしたソロデビューEP『French』に収録された楽曲で、【死】というものに寄り添い、その先には優しく温かい世界が広がっているという、大森元貴の死生観が表現されている。その後、イラストレーター・大谷たらふとコラボしたリリックビデオが公開され、そこで描かれた映像世界が絵本化された。本公演は同絵本を朗読劇化したものとなる。 

朗読劇「メメント・モリ」が12月14日、15日の2日間、埼玉・所沢の「ところざわサクラタウン ジャパンパビリオン ホールA」にて開催された(C)朗読劇「メメント・モリ」製作委員会

公演は、ライトが落とされた会場に鼓動音が鳴り響き、大嶋と栗山による「メメント・モリ」(インストゥルメンタル)の生演奏で開幕した。ステージ上のスクリーンに本作の主人公・ボクのイラストが映し出されると、曲に合わせて会場から自然と手拍子が湧き起こる。上白石の朗読への期待感がひしひしと伝わる雰囲気だ。 

演奏後、上白石がステージに登場し、ピンスポットライトに照らし出される中、ボクとして身の上や心情を一人語りしていく。世界や人生のさまざまなことに疑問や関心を持つ子供の心情を表現する語りには、透明感あふれる上白石の声質が見事にマッチ。また「いつか旅立つ日がくるでしょう。わかっているけどどんなだろうな」などの印象的なセリフに合わせて、アレンジされた「メメント・モリ」のフレーズや、時折差し込まれるSE的な役割を果たす音が生演奏で表現され、朗読との相乗効果で物語を彩っていた。 

【写真】上白石が「メメント・モリ」を生歌唱するひと幕も(C)朗読劇「メメント・モリ」製作委員会

上白石の情感たっぷりな声で朗読されるおじいちゃんとおばあちゃんとの思い出は、温かみがたっぷり。おじいちゃんとおばあちゃんが天国へと旅立った後、修道院での暮らしについてしっとりと話す口調とのコントラストが絶妙で、ボクの2人への厚くて深い想いがしっかりと伝わってくる。さらに、ボクの家族であるおじいちゃん、おばあちゃん、馬のパカラ、猫のニャーゴといった各キャラクターを巧みに演じ分ける上白石の圧倒的な表現力が、物語への没入感をグッと高めていた。 

物語の中盤、おじいちゃんとおばあちゃんがいる天国への興味が尽きないボクは、パカラと共に天国探しの旅へ。探し続けても見つからず、やがて夜となり疲れたボクは眠りにつくのだが、ボクの暗闇への恐怖心をかき立てるような音楽と、ボクがパカラに抱かれて眠るシーンでの柔らかな曲調が、ボクの心情を補完するかのようで印象的だった。

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