物語の見せ場の一つでもある、ボクが天国のような世界を目撃するシーンでは、軽妙なサウンドで幸福感や楽しさを演出。その後、ボクが自問自答していくシーンは本作のテーマが色濃く反映されており、静かながらも力強い上白石の語りと相まって、観客の心に深く強く訴えかけていく。
特に、天国のような世界でおじいちゃんとおばあちゃんに再会し、ボクが「会いたかったよ」と心の底からの叫びを連呼するシーンは圧巻だ。そんな上白石の熱演は、ボクがたどり着いた天国への一つの“回答”に説得力を持たせ、ボクの成長をも感じさせるかのよう。上白石が発するひとつひとつの言葉が心に響き渡り、観客たちは深くうなずくように聞き入り、所々ですすり泣く声も漏らしていた。
上白石が最後のセリフを朗読した後、バラード調にアレンジされた「メメント・モリ」を生歌唱。切々とした中にも温かみあふれる伸びやかな上白石の歌声は、物語のクライマックスを感動で包み込み、多くの観客の涙を誘った。 降壇後も、拍手が鳴り止まない会場にオリジナルの「メメント・モリ」が流れると、カーテンコールで上白石がステージに再登場。観客に向けて深々とお辞儀をすると、再び大きな拍手が贈られた。
“死”というものに向き合い、寄り添い、その先には優しく温かい世界が広がっているという大森の「死生観」が描かれた本作。楽曲から絵本、そして朗読劇へ。公演前に大森が寄せていた「表現がさまざまな形に変わり、また届いていく、作家として本望です」という言葉通り、この日「メメント・モリ」は上白石の圧倒的な表現力による朗読によって新たな息吹が与えられ、楽曲が持つ意味の深さがより浮き彫りとなったように感じられた。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)