――児童役の子どもたちはオーディションで選ばれたそうですが、決め手となったポイントはありますか?
このドラマでは、子どもたちが抱える悩みを日常のものとして描きたかったので、自分の言葉でセリフを言えるかどうかをポイントとして選ばせていただきました。というのも、お芝居をしている感じが見えてしまうと、どこか非日常の遠いものを見ているように感じられてしまうと思ったので。出演している子どもたちはすごくナチュラルなお芝居をしてくれていると思います。
――毎回子どもたちの自然な演技に驚かされます。
ありがとうございます。例えば、第7話で考える前に言いたいことをなんでも言ってしまうれいかという女の子が登場しましたが、視聴者の中には「なんなの、この子」と思った方もいたと思うんですね。でも、それは彼女の芝居が自然だからそうさせていて、このドラマのリアリティーはひとりひとりの子どもたちが支えてくれていると思っています。
――撮影を通して、子どもたちの成長を感じる部分もありますか?
大いにあります。今日もリハーサルで子どもたちと会ってきましたが、最初に彼らと会ったときとはまるで違う表情になっています。彼らの中にいいドラマを作る俳優としての意識が芽生えたからなのか、どんどん頼もしくなってきていて、それはこちらとしてもうれしいですね。
――選ぶのは難しいかもしれませんが、これまで放送された第1話から第9話で、岩崎プロデューサーが感動したシーンや、心を打たれた回があれば教えてください。
選ぶのは難しいですが、僕個人としては第6話ですね。同じ働く大人として、仕事がうまくいかないで悩んでいる篠谷先生のつらさに共感できたし、すごく感情移入して何度も泣いてしまいました。
一番好きなシーンでは、第5話で牧野先生が病院を追われるきっかけとなったところです。小児科医局長の高崎先生から「寄り添うということがどういうことかわからない以上は、ここにはいられない」と言われた牧野先生が不器用ながらも自分なりの信念を語るシーンがあるのですが、松下さんのお芝居がすごく良くて感動しました。その過去を背負って、自傷行為を抱える少女のもとへ走っていくのも、その父親へ涙をこらえて訴えかけるのも、すごく好きです。
あと、TVerで配信されているオリジナルエピソードの第7.5話で、子どもたちが泣きながら合唱をするシーンがあるんですね。僕自身、中学生のときに指揮者をやったことがあるのですが、まとまらなかったクラスが歌ってくれるようになって涙を流しながら指揮をした経験があったので、自分の思い出とリンクして何度見ても泣いてしまいます。すみません、やっぱり1つには選べませんでした(笑)。
――この作品を通して視聴者に伝えたかったことを教えてください。
まず「気づくことの大切さ」というのがあります。それは家族や友だちはもちろんですが、まったく関係のない人の苦しみや悩み、気持ちに気づいてあげられることは、すごく大事だということ。「一人に慣れる社会を作ってはいけない」ということと同時に、悲しいことやつらいことがあったときに誰かを頼れる社会であってほしいという願いを込めました。これは原作者である日生マユ先生のメッセージであり、僕たちもドラマでそれを伝えたいと思っています。
――最終話に向けての注目ポイントを教えてください。
最終話は、原作では描かれていないエピソードを作らせていただきました。牧野先生が過去にうまくいかなかった元患者の真琴くんの新たな病気とどう向き合っていくのか。ここまで小学校の児童たちと接してきた牧野先生の成長が見られると思います。なので、原作では描かれなかったその先の部分を楽しんでいただけるとうれしいですね。
――気が早い話ではありますが、続編の可能性は?
それは分からないです。でも、(取材日時点では)撮影がもうすぐ終わってしまうので、子どもたちから「あと3クールくらいやりましょう」と言われました(笑)。子どもたちはこのドラマでいろんなことを吸収し、成長してくれたと思います。なので、僕自身も終わりたくないというか、名残り惜しい気持ちがありますが、まずは最終話を楽しんでいただければと思います。
◆取材・文=馬場英美
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