ドラマ〈未成年~〉柴田啓佑監督が語る本作で大切にしたこと「役を背負った2人から生まれるリアルな感情を大事にしてあげたいという気持ちをずっと持っていました」【インタビュー前編】

2024/12/24 12:10 配信

ドラマ インタビュー

2人のビジュアルと性格が実は逆というか、そういうギャップ萌えをどれだけ作れるかっていうのはポイントに置きながら演出していました。


2人の距離が近づく公園のシーン(C)「未成年」製作委員会


――クランクイン前に、監督から2人に役の説明や演技のオーダーはされたのでしょうか?

いえ、衣装合わせのときに軽く話したり、現場で都度、確認作業をしている感じです。水無瀬に関しては「どこか男らしい部分もあるけど原作ほどツンツンしていなくていい。あくまで高校生だから、いつも一緒にいるクラスメイトといるときは普通の高校生でいいし、漫画に引っ張られそうな部分もあるけど、もっとリアルな高校生像に近づけたいと考えている」と言いました。蛭川は「本当にヤンキーなわけじゃなくて、ただマイペースに生きているのを勘違いされて周りにそういう人間が集まっているタイプだから無理してオラつかなくていい。そういう子の中に蛭川がいたら自然と蛭川もそう見えるから大丈夫。なんならどこか女々しいところもあるよ」という感じですかね。僕がどれだけ「こうだよ」って言っても本人たちの中に落ちていなければ芝居の表現に繋がらないので、そういう話を日々、雑談レベルで話していました。

――ロケの都合などで撮影の順が前後するとシーンの時系列の確認も必要になってきますよね。

はい。そこを見るのが監督の仕事なんですけど、本人たちはこういう長い連続ドラマが初めてで、最初は少し戸惑いがあったようです。それで「連ドラはこういうものなんだよ」って言いながら(笑)。「前のシーンはこうだったね。それだと次こうはならなくない?」とか、急にウェットな芝居を見せたときに「まだそんなに泣かない。その涙は後ろに取っておいて」とか。役に入り込むと、どうしても感情が溢れて止まらない瞬間ってあると思うんです。だから決してダメなことではないし、むしろめちゃくちゃ大事な気持ちだけれど作品上はそうじゃないよねっていう整合性の“調整”ですよね。役を背負った2人から生まれるリアルな感情を大事にしてあげたいという気持ちは、僕はずっと持っていました。

――お2人は次第に慣れていきましたか?

なんとなく、体感でつかんでいったんじゃないですかね。2人の吸収力がもうスポンジのようだったので。最初は戸惑っていたかもしれないけど、そんな感じはすぐになくなりました。

――2人が距離を縮めるシーンで演出のポイントに置いていたのはどんなところでしょうか?

まず本島くんって顔が圧倒的にかわいいじゃないですか。上目遣いとか上を向いた瞬間の顔がすごく女性的だなと思うんですけど…でも、言っているセリフは意外と男らしいんです。「家、来る?」みたいな誘いもしますし。逆に蛭川は、ああいう男らしい顔をしているけどしっぽを振ってついていくようなかわいらしい感じがあって。2人のビジュアルと性格が実は逆というか、そういうギャップ萌えをどれだけ作れるかっていうのはポイントに置きながら演出していました。

――他に撮影中のこだわりがあれば教えてください。

カットをなるべく割らず、長回しでいけるところは長回しで撮りたいと思っていました。大事なシーンは顔のワンショットをちゃんと見せるんですけど、できるだけ一連でお芝居をやる時間を作りたくて、そこに割と時間を使いました。お芝居を決める段取りの時間をじっくりとって、本番はもうババッと。あと今回は、それぞれの部署のスタッフが本当にこだわってくれて、例えば夕暮れはリアルに陽が落ちるタイミングで撮れるようにするなどいろんな調整をしてくれたんです。台本以上にいい時間で撮れたシーンもあって、画としてすごくグッとくるなと思います。

雨の中、水無瀬を待つ傷だらけの蛭川(C)「未成年」製作委員会


【後編へ続く】

■取材・文=川倉由起子

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