「機動警察パトレイバー the Movie」(1989年)、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(1995年)など、数々のアニメ・SF作品を世に送り出し、国内のみならず世界的に支持を集める押井守監督。世界初のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)監督として日本のアニメーション業界に大きな影響を与え続けてきた押井氏の名作をセレクト放送する企画「VHSを巻き戻せ!俺たちのOVA特集 vol.6〜押井守特集〜」が衛星劇場で放送中。そこで今回は世界的な知名度を誇る押井氏のキャリアをあらためて紹介する。
日本のアニメーション界をけん引し、独自の世界観は国内外問わず多大なインパクトを与え続ける押井氏。2021年に公開された映画「花束みたいな恋をした」では、本人役としてサプライズ出演し、映画ファンの間でも話題となったが、架空の登場人物たちの間でも“神”と讃えられる彼の人気ぶりは言うまでもないだろう。
1978年にテレビアニメ「一発貫太くん」で初めて演出を務め、テレビアニメ「うる星やつら」の劇場版第1作として公開された「うる星やつら オンリー・ユー」(1983年)で映画監督としてデビュー。
同時期には、彼の師匠であるアニメーション監督・鳥海永行氏との共同監督作であり世界初のOVAとしてアニメーション史に残るSF作品「ダロス」を誕生させた。同作は21世紀末を舞台に、地球にまつわるさまざまな問題を月面開拓計画の実施によって解決していくが、その反面で犠牲となった月面開拓民たちが自治権を要求して立ち上がっていく姿を描いている。創造的な世界観もそうだが、OVA自体がテレビアニメや劇場アニメでは成立しないような挑戦的な作品が多く「ダロス」は日本のアニメーションの可能性を広げ、海外市場にも流通していくきっかけとなった作品として語り継がれている。
また、72タイトルにもおよんだヒット作「機動警察パトレイバー」シリーズでは、OVA時代から絵コンテ・監督として携わり、劇場版「機動警察パトレイバー the Movie」と続編「機動警察パトレイバー2 the Movie」(1993年)で監督を務めた。
さらに同じく監督を務め、士郎正宗氏原作の映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は、ビルボード誌の全米セルビデオチャートで第1位を獲得し、続編として制作された「イノセンス」(2004年)は、日本アニメ史上初となるカンヌ国際映画祭のコンペティション部門にノミネートするなど、“押井守作品”は海外でも人気を博していく存在へ。2017年にはスカーレット・ヨハンソンが主演を務め、ハリウッドで実写映画化されたことも記憶に新しい。
一方で、アニメーション作品のみならず実写映画も積極的に制作している押井氏は、バイオレンス・アクションムービー「ケルベロス-地獄の番犬」(1991年)で、近未来都市・東京を舞台に国外逃亡した元特殊警察の一員と彼を追う男女の姿を描いた。原作・総監修を務めたオムニバスムービー「真・女立喰師列伝」(2007年)では、架空の職業“立喰師”(たちぐいし)をモチーフに、無銭飲食を生業とする6人の女性の姿を神山健治監督ら気鋭のクリエーター陣と共に制作。
2024年には代表作の一つでもあり多くのファンから愛され続ける「機動警察パトレイバー the Movie」が公開35周年を迎え、アニバーサリーを記念して全国104館の映画館でリバイバル上映が行われ、新旧ファンが劇場に足を運びSNSでも大きな盛り上がりを見せた。
そんな日本のアニメーション界を代表とする押井監督作が1月の衛星劇場「VHSを巻き戻せ!俺たちのOVA特集 vol.6〜押井守特集〜」で特集放送される。
実写映画作品からは近未来都市・東京を舞台に国外逃亡した元特殊警察の一員と彼を追う男女の姿を描いた「ケルベロス-地獄の番犬」が1月15日(水)夜6:45から、混乱状態のアニメ映画現場に派遣された“裏演出家”の活躍を描いた「トーキング・ヘッド」(1992年)が1月16日(木)夜6:45から、6つのエピソードで構成されるオムニバス作「真・女立喰師列伝」が1月17日(金)夜6:45から放送。
OVA作品からは機動警察パトレイバーの製作陣が集結した「トワイライトQ」(1987年)が1月21日(火)夜6:15から、家族をテーマにしたSFコメディー「御先祖様万々歳!」(1989年)が1月21日(火) 夜7:30~、22日(水)夜6:15~から、世界初のOVA作品「ダロス」が1月23日(木)夜6:15から、近未来を舞台に続発するレイバー犯罪の解決に挑む新米警官の物語「機動警察パトレイバー アーリーデイズ」(1988年)が1月24日(金)夜6:15から放送される予定だ。
◆文=suzuki
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