来年1月1日、NOAH・日本武道館大会「ABEMA presents NOAH “THE NEW YEAR” 2025」(昼3:15開始、ABEMA PPVにて全試合独占生中継)のリングに、WWEのスーパースター、中邑真輔(44)が帰って来る。対戦相手は、かつてUFCなどの総合格闘技で活躍し、2024年1月にプロレスラーとしてデビューを果した佐々木憂流迦(35)。プロレス、総合格闘技と、育ったリングは違いながら、実はもともと親交のあった2人の関係や、NOAHの盟主や現地での知名度まで、真輔が語り尽くした!
――佐々木憂流迦戦を、最初にオファーされた時の気持ちは如何でしたか?
「おう、憂流迦か」と。そんな感覚でしたね。そもそも、NOAHの中に、僕とつながりのある初対戦の選手って、彼しかいませんから。
――もともと、中邑選手と憂流迦選手は、師匠が一緒なんですよね。
芹沢健一さんですね。互いに学んでいた和術慧舟會という総合格闘技道場の、静岡の代表の方で。その縁で昔から知己はあったんです。僕の方から憂流迦に「プロレスやりなよ」と言ったこともありますよ。
――高評価していた?
と言うより、僕は、向いていそうな人を見ると、すぐ「プロレスやりなよ」という人間なんですよね(笑)。やっぱり僕はプロレス一本でここまで来てるわけだし。憂流迦は9歳下で、身長もあるしマスク(顔)も良いし、もちろん格闘技好きなわけですから。
――憂流迦選手は修斗を経てアメリカのUFCでも活躍しましたが、中邑選手もプロレス入り前は数々の格闘技をたしなまれて。前田日明さんにスカウトされたこともあったとか?
前田さんが主宰されてたリングスの道場に、和術慧舟會の仲間と出稽古に行った時ですね。前田さんが、「明日からウチに練習に来ないか?」と。でも僕もバカ正直に、「新日本プロレスに行きたいので」と答えました。大人としての配慮ある返しが出来なかったというか(笑)。もちろん、総合格闘家としての憂流迦については、メジャーであるUFCに行ったわけだし、しっかり頑張ったんだなと評価してますよ。アメリカでも何度か食事したりしてますし。彼のプロレスの試合は、ほぼ観たことがないんですけれど(苦笑)
――憂流迦選手のプロレス・デビューは今年(2024年)の1月2日ですから、まだ一年経ってませんね。
だからね、一つ感じたのは、NOAHにおいて憂流迦が明らかに推されていることなんですよ。それに対してNOAHの他の選手は声をあげないのかな?と。羨望やジェラシーを含めてね。そういうのがないのも、今風なのかも知れませんけれど。
――団体の期待を、一手に背負っている形というか。
うん。でも、だったらお前自身を見せてみろ、とは思う。僕は動画とかで、憂流迦をそれなりに挑発しているんですが、彼は、「はい」「そうですか」と率直な反応で。「なぜ、中邑真輔とやりたいのか?」を、もっと自分の言葉で見せて欲しいんですよね。
――当日は、どういった試合になる?
僕にとっては、既に憂流迦は、数ある同業者の1人になったんですよ。だから、試合については、“容赦しない”としか言いようがないですね。一方で、向こうの出方については、楽しみにしてますよ。だって、現時点では僕、彼については辛辣にしか言ってませんから(笑)。繰り返しますが、彼に主張があるなら、ぜひそれを出して欲しいなとは思ってます。
――中邑選手は2023年元日のザ・グレート・ムタ戦に続き、2年ぶりのNOAHのリングになりますね。それ以前にも、2009年より断続的にNOAHのリングに上がってらっしゃいます。生まれ育った新日本プロレスのリングと、違いを感じることはありましたか?
もともと違う団体ですから、基礎的な部分の違いもあるとは思うんですが、とはいえ、やはりトップの選手の場合は、そういう齟齬すら感じさせませんよね。ただ、大きく言うと、僕の中では、リングの特質が違うという印象はあります。新日本の方が少し硬くて、ゆえに、横の動きが出やすいんですね。逆にNOAHの方は、若干柔らかくて。その分、縦の動きが多めになる傾向はあると思います。
――2009年には、NOAHの始祖である、三沢光晴さんとも唯一の対戦を果たしてますね(※〇中邑真輔、後藤洋央紀vs三沢光晴、杉浦貴●。1月4日。東京ドーム。三沢選手は同年6月13日、試合中の事故により永眠)。
三沢さんのエルボーの感覚は、今でも覚えています。鋭角的な痛みというか、シャープな感じではなかったんですよ。1発目のインパクトの瞬間、太さを感じたんです。どでかい丸太がぶち当って来るような。太鼓でグワアンと叩かれたような衝撃でしたね。
――2016年より渡米し、現在までWWEで戦われています。WWEという団体の魅力を一言で言うなら?
子供の頃は実際には観ることの出来ない団体でしたからね。純然たるアメリカのプロレス団体という印象でした。日本には武道という文化が古来よりあることで、そのプロレスも、闘う姿勢を見せるという特長があると思うんですね。比べるとWWEは、レジェンドのハルク・ホーガンやランディ・サページしかり、キャラクターそのものを前面に押し出すイメージ。ですから、全世代、全世界に対して、ストーリーテリングを極めてわかりやすく打ち出して行けるという強みがあると思いますね。
――そんな中邑さん、昨年は雑誌で「世界が尊敬する日本人100」にも選ばれていました(※『ニューズウィーク日本版)』2023年8/15・8/22合併号掲載)。
えっ?!知りませんでした(笑)。
――今は現地住まいですが(※フロリダ州オーランド在住)、認知の高さを感じることはありますか?
ありますね。僕はよくアジアンタウンに行くんですけど、例えば飲食店のオーナーのおじさんが急に隣に座られて、「観てるよ」と話しかけて来たり。タクシーに乗っても運転手が、、「ん?!」という顔で覗き込んだり。ましてやIDカードの類いを見せるとなると、僕は「Shinsuke Nakamura」と、本名でリングに上がってますから。
――確かに!WWEでは珍しい、日本のリングネームそのままのデビューで、しかも本名ですからね。
本名を使うが故の弊害が(笑)。まあ、向こうは応対がカジュアルですからね。どっかのバーで飲んでると、「あちらの方からです」と奢られたりもありますよ。それが可愛いお姉ちゃんならより嬉しいんですが、コテコテのプロレス好きなおじさんであることが多いんですけどね(笑)。
――今回は、日本人男子プロレスラーとしては初めて、WWEのベルトを保持した状態での来日になります。一方で、以前は競い合った棚橋弘至選手(新日本プロレス)が引退へのカウントダウンを開始するなど、日本のプロレス界は、激動の年明けになりそうです。
棚橋さんの引退は、彼自身が決めたことだから、こちらがどうこう言うのはおかしいとは思います。でも、僕にとっては切っても切り離すことの出来ない、自分のキャリアの上で重要な対戦相手でしたから、思うところはありますよね。
――当日を楽しみにしている日本のプロレスファンに、メッセージをお願いします。
幸いにも、WWEのベルトを持ったまま今回来日出来たということで。それを嬉しく思うし、進化する中邑真輔を楽しみにしていて欲しいですね!
「ABEMA presents NOAH “THE NEW YEAR” 2025」は2025年1月1日(水)昼3:15からABEMA PPVにて全試合生中継(配信開始は昼2:30)。見逃し放送は配信終了後から2025年1月15日(水) 夜11:59まで視聴可能。
1980年生まれ。京都府峰山町(現:京丹後市)出身。青山学院大学レスリング部で主将を務め、2002年に新日本プロレスに入団。同年8月、プロデビュー。並びに、総合格闘技のリングにも進出。2003年、歴代最年少でIWGPヘビー級王座奪取。2016年2月、WWEと契約し、4月に同団体の下部組織・NXTでデビュー。2017年4月にWWEへの昇格を果たした。2024年11月、自身3度目のWWE US王座戴冠を果たしている。
取材・文=瑞 佐富郎
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