ーーなるほど。本作では、ゆずが健斗に抱く「何か違うんだよな…」というちょっとしたズレが個人的にリアルだなと思ったのですが、皆さんが本作に共感した部分はありますか?
伊藤:物語の後半の話になってしまうのですが、健斗が新人の漫画家の先生に、「自分が作りたいと思ったものを作品として世の中に出すべき」と言うシーンがあるんですけど、そこが刺さりました。役者をやっていく上で、僕にとってそれが永遠のテーマでもあるのかなと思っていて。求められるものをやることももちろん重要ですが、そればかりだと自分の心が健康ではなくなってしまう気がしていて…。
実際に僕もやりたい作品やお芝居だけをやれてたかというとそうじゃなかったので、それに悩む時期もありました。マストのものだけになってくると、どうしても作業になってしまう部分があって、仕事が楽しくなくなってくると言いますか…好きじゃなくなってしまう感じがして。やらされてると思って仕事をさせていただくのは一番失礼なことでもあると思うので、それがすごく怖かったんです。ただ今振り返るとあれも必要なことだったんだなと感じています。後半の方で健斗の気持ちに変化があってそれを説明するシーンがあるのですが、その感情にはすごく共感できるなと思いながら撮影していました。
弓木:私は、ゆず自身が思っている以上に早いスピードで世間から持ち上げられてしまって、なんか思ってたのと違うな…と葛藤している姿に共感しました。私は最初、みんなの相談相手役的なお姉さんキャラでやっていくぜ!という意気込みで乃木坂46に入ったのですが、生放送のラジオが始まった途端、全然違うことがばれてしまって…。でも、「逆にそこがなんかいい!」みたいな感じで持ち上げていただくことも多くて、それが自分の中でギャップと言いますか、違うんだけどなと思う部分です。あと私はグループに所属していますし、大家族なので周りに人はいっぱいいるのですが、無意識のうちに隠し持ってしまう部分があるので、そういうところもゆずに近いのかなと。共感できるところが多かったように感じます。
愛希:私は好きなことを仕事にするというところです。私もありがたいことにそうさせていただいているので、星くん(鈴木大河)をはじめそこに行き着くまでのそれぞれの過程みたいなところにも共感しました。好きなことを仕事にする難しさと、それを仕事にできたときの幸せ、そしてだからこその葛藤っていうのは分かるなと思うし、自分自身も今すごくお仕事について改めて考えている時期でもあるので、投影しながら撮影に臨んでいました。
構成・取材・文=戸塚安友奈
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