特殊な職業が故か、日本では、なぜか「探偵」と名の付くドラマの主人公は曲者ぞろい。最近でも、推理のような雑事は使用人に任せる貴族だったり、バーボンとジャズをこよなく愛する私立探偵だったり、人情にもろい探偵だったり、いつもBARにいたり…。
今回の探偵は、ある意味探偵と遠いはずのモデルであり、“重要参考人”だ。しかも仲間はモデル2人、それもイケメン。
その設定だけを見たら、正直嫉妬を禁じ得ないし、どんなドラマになるのやらと、ディスクをデッキに入れずに食べちゃおうかと思うくらい悩んだものの、いざ見てみると、「あ、なるほど」と。ストンと落ちた。
自分が不審者に間違われて憤っているのなんて、小さいことだと思うくらい、大変な目に遭い続けている主人公・圭。ちょっと名前が知人の某エセグルメ編集者っぽくてアレではあるが、目の前でちょっと前まで話をしていた人がシャンデリアの下敷きになって死んでしまうなんて、もうトラウマでしかないでしょ。同情しかない。
さておき、なぜか圭がいつも死人の第一発見者になってしまう、という説明のVTRが実にコミカル。おかしな日本語だと承知で言うが、そのVTRの死人に遊びがあって、つかみはOKな気がした。
それにしても、玉森は「何で俺ばっかこんな目に…」という役どころが実によく合う。男性から見てもどこか放っておけないタイプの顔立ちをしているというか、いじられキャラとはまた違う、愛されキャラか。あの困り顔で見られると、つい「よしよし、私が助けてあげるからね」と言いたくなるような。
そして小山と古川の役どころもバランスがいい。小山演じる斎が推理オタクで実はおぼっちゃん、古川演じるシモンがいつでも女子に囲まれ、聞き込み上手。そんな3人がそろっているからこその“重要参考人探偵”であり、絶妙に役割分担されている3人が集まるから、一見そこらのあんちゃんとしか思えない彼らが推理力をフルに発揮できるのだろう。
いわば三本の矢。第1話でもそこがすぐ見て取れたが、今後このチームワークがどうなっていくのか、楽しみだ。
その他、重要参考人になった圭を追う刑事たちが、豊原を筆頭に怖過ぎ。その怖さもあからさまな怖さではなく、対峙(たいじ)しただけで、思わず「こやつ、できおるわい」と言いたくなるような。実にリアリティーある刑事だ。職務質問の回数では業界屈指の筆者が言うんだから間違いない。あれは刑事ではないけど。
マギーの仕事人っぷりも見事。仕事人といっても、夜な夜な民衆のうらみを晴らすべく、悪代官の屋敷に忍び込んで心臓をひと突きにするあれではなく、主人公方が出会う仕事相手の役だ。こんな言い方をしては失礼だが、日本のサラリーマンの平均的なルックスは? と聞かれたら、思い浮かべる風貌というか。
エリート街道とは無縁ではあるものの、常にいい仕事をすることに時間を惜しまないタイプの役をやらせたら、ピッタリ! 今回も実にそれがよく出ている。
さらに牛込社長! いつも味のある演技を見せる大河内浩が演じるとな。個人的に大好きだからというわけではないが、絶妙な“小物感”が出ていて、やっぱり彼も連続ドラマでは欠かせない名バイプレーヤーだなとあらためて痛感。
それと対比する、というわけではないが、“味のある棒”の脇役・鈴木拓。どの役かは言わない方が初見でのインパクトもあろうから、伏せるが、うん。ここはいつもの拓さんでしたね。だが、それがいい。
また、滝藤賢一も人生初のオネエ役、とは思えないほど絶妙にハマっていた。絶対昔から温めていたでしょ!と思うくらい、完璧なまでのオネエ社長っぷり。衣装も含め、これも一見の価値あり。
フレッシュな刑事役がさまになっている新木ももちろん魅力的だし、西岡徳馬のすっばらしい“静”の演技、そしてもはや本物の警察官僚なんじゃないかと言いたくなるくらいに自然な、松平健の警視総監役と。金曜の11時台という時間帯とはいえ、いろいろな層のファンが楽しめる作品になっている。
とまあ、このコラムは視聴する上で重要ではないかもしれないし、作品を知る上で参考になるとも言えないが、とにかく言わせてほしい。
シモン、うらやましいぞ。
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