誰も見たことのない番組はタモリの「おもしろそう」から生まれる【ザテレビジョン35周年特集】

2017/10/21 11:55 配信

芸能一般

日本のテレビ史を見つめ続けるザテレビジョンは創刊35周年。過去の記事からピックアップして“テレビ”を振り返る【ザテレビジョン35周年特集】で、今回スポットを当てるのはタモリが司会を務めてきた番組の数々である。

現在放送中の「ミュージックステーション」(毎週金曜夜8:00、テレビ朝日系)や「ブラタモリ」(毎週土曜夜7:30、NHK総合)、「タモリ倶楽部」(毎週金曜夜0.20、テレビ朝日系)で、タモリがマイペースを崩さずいつも変わらぬ様子で、楽しそうに出演するのを見るだけでどこか安心感を抱く視聴者も多いだろう。肩ひじ張らずに“ユルく生きる”ことを認めてくれるような存在であるタモリが、これまでどんな番組と歩んできたかを振り返る。

「コソッと始めた」音楽バラエティー「今夜は最高!」が8年続く【‘87年9/25号】


ひとつの番組が始まり、やがて最終回を迎えるというのは、いつの時代も世の常でありテレビ界の宿命ではあるけれど、32年続いた「笑っていいとも!」(’82年~’14年3月、フジ系)が、日本のお昼から消えてしまったという衝撃はまだ記憶に新しい。32年間通算8054回もの生放送を、単独司会で出演したことはギネスにも認定されており、もう誰も成し得ないほどの偉業であるにも関わらず、タモリ本人は「終わったら早く酒飲みたいな」と最後まで飄々としていた。

視聴者側はランチタイムにタモリが出てこない寂しさを“タモロス”という言葉で表現し、当たり前のように存在していた番組の終了に妙な寂しさを覚えていたが、タモリにとっては長い芸能生活で何度となく迎えた最終回のひとつだったのかもしれない。

8年続いた音楽バラエティー「今夜は最高!」(‘87年9/25号)


‘87年9/25号のザテレビジョンでは、タモリとゲストがコントや生歌、演奏などを交えてトークをするバラエティー番組「今夜は最高!」(’81年~‘89年、日本テレビ系)の放送300回を記念したインタビューを掲載。番組には、ジャズをはじめとする音楽好きのタモリがトランペットの腕前を披露するなど、オシャレでカッコいいのに面白いという独特の雰囲気があった。タモリは「コソッと始めて、注目もされていなかった番組が、6年も続き、見てくださる人にも出演してくださる人の間にも定着したのはありがたいこと」と感謝し、「この番組の出演がきっかけでバラエティー分野に進出していった人もいれば、素顔をさらけ出すのが嫌で出演拒否する俳優さんも。もめたりしたことが特に思い出されますネ」と、嬉々として語っている。のちに32年もの長寿番組をやる男が「もっといっぱい、長くやっているような気がしますネ」と6年目の放送を楽しんでいる様子が伝わる。

「世にも奇妙な物語」がスタート「まだわからないけど、おもしろそう」【‘90年4/27号】


【写真を見る】「世にも奇妙な物語」初回収録時のタモリ(‘90年4/27号)


‘90年にスタートした「世にも奇妙な物語」(フジ系)は、現在も春と秋に「特別編」として放送されるスペシャルドラマ。タモリは毎回、ドラマの導入部分とエンディングに登場し、ストーリーテラーとしてオムニバス形式の物語をつないでいく。ちょっと不気味で怖く、ゾッとするくらい滑稽な世界を描く「世にも奇妙な物語」は、かつて流行した「ヒッチコック劇場」という外国テレビ映画の日本版をイメージしてスタートした。ゴールデンタイムでオムニバス、しかも奇妙な話という設定は、日本のテレビ界では画期的で当たった試しのない企画。しかし、自身も「ヒッチコック劇場」が好きだったというタモリ。記事には「まだわからないけど、おもしろそうじゃない」と喜んで参加している姿が捉えられている。タモリの番組は長く続く印象がある。「世にも奇妙な物語」も27年続く長寿番組だ。

「トリビアの泉」が目に見える形にした「へぇ」という世界【‘06年1/13号】


タモリの“満へぇ”が出るか注目された「トリビアの泉」(‘06年1/13号)


なぜ、タモリが司会を務めると長寿番組になるかというひとつの考察として。ジャズ音楽や鉄道、ヨット、坂道や古地図などマニアックで多趣味なタモリが、「ほぉほぉ」、「それ、おもしろそう」と言いながら新しい世界に食いついていく姿に、人々も自然と吸い寄せられているのではないだろうか。

その最たる番組が「トリビアの泉・素晴らしきムダ知識」(’02年~’12年、フジ系)だった。人生に必要のないムダ知識や、人に教えたくなる雑学豆知識を、大胆かつバカバカしい検証VTRで紹介していく「トリビアの泉」は、番組独自の単位「1へぇ」を作り上げ皆がどれだけ「へぇ」と思ったかを可視化して大人気となった番組。タモリはトリビア品評会会長として、プレゼンターの高橋克実八嶋智人と出演していた。「“満へぇ”(ひとりが押せる最大へぇの数)を出す方がおかしいと思う」と言うくらい、なかなか「へぇ」ボタンを押さず厳しめのスタンスだったタモリ会長。本誌の対談でも「昔はよく、無駄なことばっかり知ってて人に吹聴したがるイヤな親父がいたんですけど、この番組のせいで、そういう人たちがまた息を吹き返したりしてるんじゃないかと。心配ですね」と自嘲めいた発言を残している。

心から楽しんでいるように見えたかと思えば、やたらとクールな平静さを見せたり。タモリがテレビの中で見せる顔は、どれが本当なのかわかりにくいところがある。しかし、ひとつ言えることはタモリが出演する番組には、タモリの好奇心がギュッと詰まっていて、新しい刺激に満ち溢れているということである。