――原作の清武英利さんの「石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの」は警視庁の組織の複雑さもリアルに描かれていますよね。
佐藤:日本一巨大な組織ですからね。これだけの複雑さを国民は知っているんだろうかと、身内に警察官がいない限りは、ほとんど知らないわけですよ。そういった中で、清武さんの本来持っている“記者魂”というか、そういったものがあえてこれをチョイスして警察機構の中にも入っていったのかなと。
江口:想像を絶する部分がありますよね。僕は「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)という番組をやらせてもらっているんですが、元記者だったスタッフがいて、実際に警察関係者の自宅に聞き込みに通っても「目も合わせないで、全部無視されることもよくあります」と聞いて、そういうことは僕たちの日常の中にはなかなかあり得ませんからね。
佐藤:(笑)。
江口:でもその中からも記者は何か吸い出したいし、それこそ執念ですよ。それは巨大な組織への挑戦でもあるし、ヤマがでかいほどドラマとしては面白いですけど、その骨組みを書かれたということは、非常に興味がありますね。
――これまで、さまざまな刑事の役をされてきていますが、実在の人物がモデルということで、難しかったことや、チャレンジなどはありましたか?
佐藤:僕は最初監督の若松(節朗)さんにお会いした時に、「最も魅力的でない主人公をやらせてもらいます」と言わせてもらいました。現実的に言うと、真瀬(北村一輝)というノンキャリアが3000万のキャッシングをしたら、どういう金の使い方をしたのかということに役者は最初に引かれるんですよ。
でも、実際二課の刑事さんはそこに一切興味がない。テレビや映画の刑事は犯人の故郷にどんな幼少期だったのか探りに行くけど、実際の刑事は関係なければ行きませんよ。つまりドラマや映画に出てくる刑事と、現実に仕事をされている刑事は全く違うということですよね。
江口:そうですね。
佐藤:その部分をどういうふうに僕の中でうまく合わせていくか、たぶんリアルな刑事像でやるとドラマ的に見た場合、見る側からしたら非常に感情移入しにくい刑事になるかもしれない。その辺りの感情移入をさせたりさせなかったりという部分を、自分の中でトライしたいという思いはありましたね。
江口:僕は、木崎と全然違う価値観を持っているという部分をどういうふうに出していくのかというところですかね。木崎という執念の男に対して、齋見はあわよくば出世したい、上に昇れば違う景色が見られて組織のためにもっと立ち回れるはずだと常に思っている人物です。もしかしたら事件を追っている最中はそんなことどうでもよくなる瞬間もあるだろうなとも思いますが、木崎との関わり合いの中で2人のやり方の違いや考え方の違いはあえて丁寧に作っていきたいと思います。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)