今最もチケットが取れないと言われている天才講談師・神田松之丞が、自身の冠ラジオ番組「神田松之丞 問わず語りの松之丞」(TBSラジオ)でも活躍を見せている。
同番組は、毎週火曜~金曜の夜に10分間、松之丞のしゃべくりを堪能できる“毒づき”ラジオ。今年3月に初めて特番として放送され、4月からワンクールの深夜帯放送が惜しまれつつ幕を閉じたが、10月より帯番組として復活。高田文夫も大絶賛するほどの冗舌なしゃべりが話題だ。
そんな人気パーソナリティー・松之丞に独占インタビューを敢行。ラジオ番組での狙い、ラジオと本業との違い、そして、今後の野望など、赤裸々に語ってくれた。
――10月より深夜帯から夜の帯番組へとリニューアルしましたが、番組作りの違いはありますか?
「深夜の30分時代の方が面白かったよね」と言われないことを第一に、けれどスタンスは変えないようにしていこう、と思っています。30分から10分になってぎゅっと内容を凝縮して、むしろ過激にしようと試みていますね。
まずは時間帯を気にせずにやってみて、怒られたらやめればいいじゃんみたいな(笑)。挑戦的だなと思いますし、自由です。ただし、絶対に前よりもクオリティーは上げていきたいですね。
――お客さんの反応はいかがですか?
ラジオを聞いているのって素敵な方が多いなという印象があって、講談会でも良質なお客様が増えたなと感じますね。これまで来ていなかった層の方がいらっしゃって下さるなと思って聞いてみると、「リスナーです」とおっしゃっていただくことが多いです。特に地方で増えたなと感じます。
メディアに露出すると、悲しいことにマナーの悪い方がいらっしゃってしまうこともあるんです。けれどラジオをきっかけに新たに来て下さるお客様は、適切な入り方でいらっしゃっていただけるので、非常にありがたいです。
――松之丞さんは、落語芸術協会所属の二ツ目落語家・講談師11人で結成されたユニット「成金」に唯一の講談師として所属されていますが、メンバーからの反応はどうでしょう?
瀧川鯉八兄さんは「面白いね」って言って下さいますけど、基本は一切無いですね。みんなライバルなので。
言ってないだけで聞いているんですかね。まぁ、本当に興味ないだけかもしれないですけど(笑)。けれど、以前ラジオでお茶を7杯出す前座の話をしたら、オンエア後は2杯になりましたよ。適正な量に(笑)。だからみんな割と聞いてくれているんじゃないかなとは思ってます。
ただ、振り返って考えてみると、私はやはり講談師なので、落語家と比べたらキャッチーな存在に見られるんだな、と。講談は落語よりも知られていない文化ですし、そこが周りの人も応援したくなるんじゃないかと思います。講談師は落語家と比べたら人数もかなり少ないですしね。
だから私が落語家だったらここにいられなかったんじゃないかなと、シビアに思ってはいますよ。
――独演会はチケットが入手困難といわれるほどの人気ぶりなのに、謙虚すぎますよ…。ちなみに、ラジオとまくら(落語で本題に入る前の話)の内容の線引って何かあるんでしょうか?
そこは明確にありますよ。まずまくらは本編があとにあるんですよね。たとえまくらで本編とはまったく関係がないことを話したとしても、お客様に余力を残しておかないといけない。
もちろんまくらでウケすぎてしまうこともあるんですけど、やはり寄席では本編を聞いてこその充実感を味わってほしいんです。
ただ、ラジオはまくら部分のしゃべりだけで満足していただかなければいけないので、まくらよりも相当難しいと認識しています。
話し方も、ラジオは1人に、まくらは大勢に話し掛けているイメージです。自然と口調も変わっているんじゃないかな。
――なんとなく、ラジオの松之丞さんと、高座での松之丞さんは少し違う人物にも見えます。
そうかもしれませんね。だからラジオにのめり込んでしまうと、講談に影響が出てしまうんですよ。しゃべりの速さも、高座はラジオと比べたら少しゆっくり話さないと、中身が入ってこないのかなと思いますし、そのあたりはすごく気をつけています。
だから一見同じしゃべりですけど、二足のわらじなんですよね。まくらでしゃべる速さとか、間のとり方がラジオ寄りになっていると、「あ、危険だな」と感じますし、ジレンマがあることは事実です。
少しずつキャラクターの異なる神田松之丞を楽しんでいただければ、うれしいですね。
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