憧れのダンサーとしてよく名前が挙がるYOSHIE。ダンサーとしてはもちろん、イベントを主催するなど、裏でもダンスシーンを支えているSETO。そんな今のダンスシーンに欠かせない2人に、それぞれの立場から今のダンスシーンについて語ってもらいました。今のダンサーにとって課題は何なのか、次世代を担うであろう10代のダンサーはこれから何をすべきなのでしょうか。
――最近の10代のダンスシーンをどう思いますか?
S:みんな上手いと思います。まだ若いのでカッコイイという感じはないですけどね。
――とても恵まれた環境にはいるんですけどね。
Y:そうなんですけどね。
S:若いときからレッスンをやったりしているのはどうかな、と思うことがあります。どう?
Y:そう! それ以前に、教えをメインにしている人が多いのはおかしいと思う! 現役のダンサーとしての在り方がインストラクターというのはおかしくないですか?
S:他のエンタメ業界からするとおかしいですよね。
Y:絶対に無理なことだけど、私のレッスンも含めて一度全てのレッスンが規制されればいいのに、と思っちゃいます。高校生の夢がインストラクターだって言うんですよ! それでミュージシャンに叶うわけないじゃないですか。私はミュージシャンにも負けたくないんです!
――ダンサーは、いちアーティストであるべきですよね。
Y:そうそう! それが“本物”ですよね。だって、プロ野球選手が教えをしてお金を稼いでいるっておかしいでしょ?
S:もちろん、ダンスのシーンが広がったお陰で仕事が増えたからありがたいんですけどね。
Y:だから、今のこのシーンの盛り上がりは悪くない。むしろすごいことなんです。今のシーンで活躍している若いダンサーたちにしか経験できないことがあって、彼らの素晴らしいダンスを見ると、いろいろなことと戦ってきたからあの踊りができるんだな、と思います。
――そういえば、お二人をキッズのダンスシーンであまり見掛けたことがないのですが……。
Y:キッズクラスを持たないようにしています。あとは、キッズバトルのジャッジはほぼ断っていますね。
S:僕はキッズだけのレッスンはやりません。
Y:子供には遊んでいて欲しいんですよ。もし、私が5歳からダンスをしていれば子供たちの気持ちがわかるかもしれないんですけどね。
S:僕は大人になってからダンスを始めたから全くわからないですね。
Y:子供だけのバトルで負けて泣いているのを見るともう・・・。
S:申し訳ないってなるよね。
Y:そもそも子どものダンスに勝敗をつけたくないんです。
S:そうそう。
Y:レッスンはオープンクラスにしていて、子どもが来てもしばらく無視しちゃいます(笑)。それで長く続いたら「お、やる気あるな!」と、感じます。
S:レッスンは親に連れてこられていることが多いからね。自分の意志でレッスンを受けているのかな、って思っちゃうんですよ。
――でも、そこから活躍するダンサーが出てくることもありますよね。
Y:そうですね。だから、キッズのダンスシーンが盛り上がっていることは決して悪いことではなくて、素晴らしいことだとは思っています。商業目的ではなく、子供たちのためになっているなら良いですね。
――では、過去を振り返ったときにやっておけば良かったと思うことはありますか?
Y、S:英語はマストだね!
Y:1に英語、2に英語、3,4がなくて5に英語!
S:僕は全然話せないけど(笑)。
Y:英語が話せるだけで世界が広がるし、全然違いますね。
――実際に海外へ行くと苦労しますか?
Y:苦労どころじゃないですよ。ダンスでコミュニケーションができているから何とかなっているけど、いろいろな細かいことが伝わらない部分もありますね。だから、いつも海外へ行くときは戦場に行く感覚でいます。「海外に行っていて良いね」、「楽しんでね」ってよく言われるんですけど、楽しいだけではないんです!
――毎回、気合を入れて行っていたんですね!
Y:そう! 毎回、修行しに行く感じ! これから海外へ行く日本人のためにも、海外での私の成果や仕事のクオリティが評価されなきゃいけないじゃないですか。だから、結果を出して「あ~、良かった!」と思って帰ってきています。
――ダンス以外でもかなり体力を使っていたんですね。
Y:英語ができればそのストレスが一気になくなりますよ!
――では、逆にやっておいて良かったと思うことはありますか?
Y:YOSHIBOWさんや坂見誠二さんから音楽に乗るカッコ良さ、グルーヴで踊ることを教えてもらったことが1番のプラスになっていますね。音楽に乗れないのに踊るということは、日本人が着物の着方を知らないのに日本舞踊を踊っているようなものなんです。
S: 振付でもなく、バトルでもない部分だよね。
Y:そういう教えがあったから、LINK(ELITE FORCE)に「俺と感覚が一緒だ!」と言われて一緒に踊ったり、NYでは一緒にワークショップをやることができました。
――それはどんな内容のワークショップだったんですか?
Y:振付はなくて、それぞれのグルーヴ4×8をみんなに踊ってもらうんです。それが3時間ですよ(笑)。どちらかのグルーヴが切れたら終わりなんですけど、私はYOSHIBOWさんの名に掛けて絶対に途切れさせないように、と思ってやっていましたね。そしたら、LINKが「まだ出てくるのか?」ってバトルみたいになっちゃったんです。
――張り合いになっていったんですね(笑)。
Y:そう、もう張り合い! でも、そういう原点を作ってきた人とそうやって踊れたことにテンションがあがりましたね。しかも、横でPOPIN PETEが受けているんですよ(笑)。
S:すごい光景だな(笑)。
Y:「これはYOSHIBOWさん、BE BOP CREWのお陰なんだ」と、そのスタジオにいる人たちに泣きながら伝えましたね。私が教わった音楽の乗り方は全てのダンスに通じるし、おばあちゃんになっても気持ち良く踊れるんです。でも、それをみんなに強要するんじゃなくて「私ってラッキーでしょ? いいでしょ?」って思っています(笑)。だから、生徒にはそういう乗り方を伝えていますね。
――SETOさんはレッスンするときに心掛けていることはありますか?
S:僕もそんな感じで、振付というよりも音楽の乗り方ばっかりです。そっちの方が気持ち良いんですよね。振付をやってもすぐに覚えちゃうからやっても意味がないんです。
――レッスンでやる振付は完璧に踊れるのにクラブに行くと突っ立っているだけ、という人もいますよね。イベントでも、ショーばかりでDJタイムが休憩時間になっているな、と感じます。
Y:それはありますね。
S:それは主催者が悪いです(笑)。僕らのイベントはDJタイムが多いですよ。
――そこで生まれるコミュニケーションって大事ですよね。
S:そう、大事!
Y:つまりはYOSHIBOWさんの名言「女は男を、男は女を口説き落とすダンスをせないかんばい!」ということですよ!!!
それぞれ違う経緯でダンスの世界に足を踏み入れた2人であっても、今のダンスシーンに思うことは同じ。さらに盛り上がるであろうダンスシーンに今いるからこそ、そのきっかけを作ってくれた偉大なダンサーたちが教えてくれたことを次世代に受け継いで欲しい、そんな思いも込めて再び結成されたBE BOP CREWの遺伝子を受け継ぐチームGANGが、11月26日(日)『BE BOP CREW 35周年アニバーサリー』に出演します。次世代のダンスシーンを支えるであろう彼らのダンスは必見です。
(撮影●関純一 取材・文●msk(onelove))
(撮影●関純一 取材・文●msk-onelove-)
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