時代劇専門チャンネルでの新作を目前に急逝した藤田まことさんの生コメント

2010/02/21 10:37 配信

ドラマ 芸能一般

オリジナル10分番組「必殺を斬る」のナレーションに臨む藤田まことさん

CS放送の時代劇専門チャンネルは、4月より、17日に急逝した俳優・藤田まことさんの代表作の1つである「必殺」シリーズをフィーチャーした放送枠「必殺アワー」を設ける。

同枠では、平日の昼1時、夜1時に、ハードな初期作品から華やかさを増した後期作品までをハイビジョンマスター化し、放送していく。4月5日(月)からは「新必殺仕置人」をオンエア。表の顔は一般市民だが、裏では金で殺しを請け負い、虐げられた人々の恨みを晴らす闇のアウトロー・中村主水(藤田)たちを描く人気時代劇「必殺」シリーズの第10作。同作では、「必殺仕置人」(シリーズ第2作)で活躍し、独特の凄味と“必殺骨はずし”で人気を博した念仏の鉄(山崎努)が復活する。

また、「必殺アワー」スタートを記念して、毎週月曜日の「必殺アワー」終了後に、松竹と時代劇専門チャンネル共同制作のオリジナル10分番組「必殺を斬る」を放送。番組関係者15人へのインタビューを新たに撮り下ろし、その証言を基に「必殺」の魅力にさまざまな角度から迫っていく。「題字とサブタイトルの関係」など、新事実が満載で貴重な証言集となっている。また、このオリジナル番組のナレーションは藤田さんが担当。食道腫瘍(しゅよう)手術を終えた藤田さんの'10年の初仕事がこの仕事だった。

今回は、その放送を楽しみにナレーション撮りに臨んだ藤田さんの生の声を紹介する。

――早い復帰となりましたが、お気持ちはいかがですか?

わたしは食道腫瘍(しゅよう)の手術をしまして、食道がね、細くなって。('09年)10月の末ぐらいから物がちょっと通りにくくなったんですね。ご飯が食べにくくなって。11月10日に(福島・)郡山でステントという管を入れたんです。手術をするわけではないんですけど。それに1カ月掛かったわけです。郡山というところで、点滴をしながら1カ月過ごしていたんですね。その間休養していたわけです、実は。今は、通常に物が通るようになって。で、今日がことしになって初仕事というわけですよね。あとは、ボツボツ。週に3日はまだリハビリやっているんです。1カ月、点滴だけで寝てましたから、年も年だから筋肉が落ちていくのは仕方がないんだけれども、リハビリの病院で「元に戻るかな?」と言ったら「年とは関係ありません」と言われたから、今でも木・金・土と春からの仕事に備えて筋トレをしています。春からの仕事に備えて。それまではCMの撮影もあったりするんですけど。3月ぐらいに本格復帰ですかね。

――主水としてナレーション収録中、「必殺」への思いはよみがえりましたか?

映像は事前に見た時にはさ、皆若いしさ。やっぱり映像美ですかね。とにかく(HDに)「もう、いいだろう」という(ほど)時間を掛かるわけですから。それと、撮影場のセットが狭かったのもありますね。撮影できる広いところ、ステージがない。だから真っ暗のところで撮ろうという貧乏くさいところから、このことは(特番の)原稿にはなかったけど、始まったんですね。本当は東映だと5つライトを使うんだけど、松竹じゃ照明の機材が少ないから仕方ないから3台にしようという。とにかく、わたしが最初「必殺」に呼ばれていって、訳も分からず「仕置人」が終わるころから慣れてきたころ、もう亡くなられた鈴木さんという方が撮影所にいて、彼が経理にいった時に、偶然「みんなのギャラを見てきた」と言うんです。「主水、あんた必殺の中でも飛び抜けてギャラ低いわ」と言っていた。テレビ出身の者だから。鈴木さんは「頑張ってギャラ上げてもらえるようにしてもらいな」と言ったんで、「ありがとう」と言っていたんです。「どうやって撮影所に来ているんだ?」と言われて、「東海道新幹線と京都では撮影所までタクシーで」と言ったら、「大変やわ。タクシー会社のチケット2冊あげるわ。東は名古屋、西は大阪までジャンジャン乗り放題」って言ってね。面白かった。それから2年くらいたって、鈴木さんが偶然「皆のギャラ見てきた。主水さん、もうチケットいらんな」。3年目になってやっと人並みのギャラを頂戴できることになりました。第1作の「仕置人」に出してもらって、2年目。監督の三隅研次さんが、撮影終わった時に、「藤田さん、これ大事にこの役を大事にしていったら、一生もんになるで」と言ってもらったことが、今でも耳に残ってますな。時代劇専門チャンネルにもつながっていくわけですよね。本当にね。

――この収録で新しく気づいたことありましたか? 当時は気づかなかったことなど。

音のつなぎ方かな。随分苦労しているわけですよ。絵の編集は絵を見ながらできますが、音っていうのはまったくないもんですからね。頭の中で組み立ててつなぐのは苦労だったと思いますわ。

――「必殺」とのめぐりあわせは?

「必殺」とは一生縁が切れないでしょうな。主水になる時には、自然に変わっていったんですが、京都行くとやっぱり中村主水なんですよね。だから撮影後シリーズやっていますけど、「京都殺人案内」も「剣客商売」も主水から変身した姿ですよね。時代劇役者としての原型は、主水ですね。